パンダのシャンシャンを時事問題で問われたらどう答えますか?

シャンシャンは時事問題としても非常に多くの観点から議論できるため、重要なテーマと言えるかもしれません。上野動物園のジャイアントパンダがどうしてここまで注目されるのか、その理由について対話形式で紹介します。

パンダのシャンシャンを時事問題で問われたらどう答えますか?

上野動物園のシャンシャンはどうしてすごいの?

2017年に生まれたジャイアントパンダの赤ちゃんシャンシャンが、大ブームとなっています。上野動物園では、シャンシャン見たさに行列ができ、シャンシャンにちなんだお土産品なども多数登場。CGでのシャンシャンや郵便局での切手販売など様々な形で動物園の枠を超え、東京都のマスコットとなっています。

普段動物にあまり関心のない大学生の酒井君は、このブームに対してちょっと乗り遅れを感じています。経営コンサルタントのK・エーイさんに、このシャンシャンブームについて聞いてみることにしました。

上野動物園にいるシャンシャンはまさに「客寄せパンダ」

招き猫とパンダのイラスト

―エーイさん、おはようございます。ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど、いいですか?

はい。大丈夫ですよ。今日はどうしたんですか?

―あの、上野動物園の「シャンシャン(香香)」ってパンダいるじゃないですか?あのパンダ、かわいいとは思うんですが、何がそんなにすごいんですか?整理券が出たり、1時間2時間も待って行列作るほどのものなんですか?

圧倒的にかわいいじゃないですか。私も三回くらい見てきましたよ。酒井君は見に行ってないんじゃないですか?ハマりますよ。

―エーイさんってそんなに動物好きだったんですか?僕、動物あまり得意じゃないんでそこまで入れ込む気持ちがわからないんですけど。

いやあ、シャンシャンって本当にかわいいんですよ。そして成長している最中だから、見に行くたびに大きくなってて、なんというか、親心になっちゃうんですよね。ははは。

―ははは、じゃなくてですね。あの~、どうしてそこまで人気があるのか、注目されているのか、ブームになっちゃってるのか、どうも納得いかないんですよ。就活課のスタッフの方が、就活ではシャンシャンは要チェックだぞって言ってたんですけど、どうしてなのかよくわかりません。

あ、そういうことでしたか。そういうことであればちゃんと教えてあげないといけないですね。すみません。

―教えてあげるってことは、ただかわいいとかそういうことじゃないんですね。

はい。違います。シャンシャンって、本当に「客寄せパンダ」なんです。この客寄せパンダという表現があること自体が、その性質を物語っているんですが、パンダというのは動物園にとってはアイドルでもありますし、そしてシャンシャンのようなジャイアントパンダというのは希少種で、世界にも数千頭程度しか存在しないと言われています。

パンダとパンダを見て喜ぶ女性のイラスト

―パンダってどこの動物園にもいると思ってたんですが、そういうものでもないんですね。

はい。種類を問わなければ割といると思いますが、ジャイアントパンダは動物保護のためのワシントン条約によって1984年から国際取引が禁止されている種に指定されています。日本にジャイアントパンダが来たのはシャンシャンの親であるリーリーとシンシンが2011年にやってくる前だと、1972年にまで遡るんです。

―そうなんですね。じゃあ、その希少性から大ブームになっているんですね。

まだまだそれだけではありません。実はこのジャイアントパンダにまつわる件は、様々なエピソードがあるために話題が尽きないのです。

シャンシャンの親であるリーリーとシンシンは1億円のレンタルパンダ

実は、シャンシャンの親であるリーリーとシンシンが2011年に日本にやってくることになったのは、2008年に行われた日中首脳会談によるものなんです。

―え?外交の結果なんですか?

はい。昔から中国は「パンダ外交」と言って、友好のしるしにパンダを贈るということがあったんですね。しかし、ワシントン条約によってそのパンダ外交が難しくなってしまいました。

―日本にはどうしてパンダが入ってこれるんですか?

それは、2008年にジャイアントパンダのリンリンが死去してから、ジャイアントパンダがいなくなってしまったという事情があったことがあります。ワシントン条約には繁殖や研究を目的にしている場合はレンタルは許可するという条項があるので、それを利用してレンタルしたんです。

―レンタルってことは、やっぱりそのうち帰ってしまうんですか?

はい。そういうことになります。日本で生まれた子供、つまりシャンシャンも中国に戻っていくことになります。ちなみに、シャンシャンの親が中国からレンタルされた際のレンタル料は、1億円もするんです。

リーリーとシンシンのイメージイラスト

―ええっ!1億円?これって税金から出るんじゃないんですか?

はい。そうなります。シャンシャンの両親は、商品っぽく言えば10年契約で1億円のレンタルパンダということになりますね。

―1億円って、もう芸能人どころじゃないじゃないですか。しかも、食費とかも全部負担するんでしょ?

はい。基本的にレンタル料は保護のための環境整備や研究費用としてあてられるそうですけどね。しかし、実際にそれだけの価値がこのパンダたちにあるということでもあります。「客寄せパンダ」という言葉ができるのは伊達ではありません。このパンダたちによる経済効果は、1年に200億円以上だと言われており、今はシャンシャンブームで一層大きくなっていると言われています。

―そうなんですね。僕、完全にシャンシャンを、いやパンダを侮っていました。

でしょう?しかも、シャンシャンは日本で自然交配によって誕生し、順調に成長している唯一のジャイアントパンダです。注目されるしかありません。とはいえ、ワシントン条約の取り決めによって保護のため数年以内には中国に帰ることになります。今のうちに見ておかないとですよ。

シャンシャンブームは過熱している

―いろんな話を聞いているうちに、シャンシャンはちゃんと見ておかなきゃという気持ちになってきました。

そうでしょう?1億円のアイコンなんてそうそうありません。デパートなんかで1億円の宝石置いてたらそれだけで見物客が来るのと同じです。

―それであれだけたくさんの人が動物園に詰め掛けているんですね。

動物園では年間パスポートなどの売れ行きも上がり、毎日のように動物園に通ってシャンシャンの写真や動画を撮影してブログにアップしているような人までいます。写真集が出たり、おみやげが出たり、CGでシャンシャンの様子を再現したり、いろんな形でシャンシャンは人々に楽しさを提供していますし、モデルにもなっています。

パンダだらけ

―シャンシャンはかわいいですし、話題性もあって格好の素材ですね。

そうなんです。2012年に実はシャンシャンの両親からジャイアントパンダの赤ちゃんは生まれていたのですが、長くは生きられずに亡くなってしまいました。そのこともシャンシャンへの期待度を大きくしています。シャンシャンという名前も、公募から選ばれていますが応募総数32万点を超える中から選ばれていることが、その注目度を表していると言って良いでしょう。

―このシャンシャンブームはしばらく続きそうですね。

はい、そうですね。テレビのようなメディアも、ネタに困ったらシャンシャンを映しておけば間違いないという感じですし、世界的にも珍しいのがジャイアントパンダですから、多くの訪日客も訪れると思います。しばらくは安泰ではないでしょうか。

シャンシャンで考えたい希少種の動物保護

―時事問題としてシャンシャンを考える時には、どういった視点があると良いと思いますか?

うーん、私としてはそんな固い視点ではなく、シャンシャンのかわいさをもっと語りたいのですが(笑)。時事問題として考えるなら、ジャイアントパンダのような希少種についてどう考えるかというのはひとつ大事にしたいところですね。

―いろんな動物が絶滅の危機に瀕しているっていいますよね。

はい。種の保護という観点で考えると、日本にジャイアントパンダを贈ることはあまり有益ではないのかもしれません。日本だから研究できることもあるでしょうし、多くの人に希少種の存在を知ってもらうことにはなると思いますが、純粋に繁殖を考えるならデメリットの方が多いと思います。

絶目危惧種のパンダ

―言われてみると、シャンシャンの経済効果はすごいですけど、パンダ側にはメリットがないですもんね。人間に利用されているというか。

動物保護というのはどうしても人間の観点からになってしまいがちです。人間が自然を壊した結果、動物が絶滅するかもしれない。だから人間が保護してあげよう。これらは全部人間がやってることなんですよね。

―そうですね。でも、自然のままが良いのかどうかもわからないですよね。だから動物の保護や研究をする人がいるんでしょうけど。

「生物の多様性が保たれているのが良い状態」と言われているのは、生物は相互に依存して生きているからです。生態系がもたらしている恩恵は世界中で3000兆円を超えるという試算もあるようです。まだ見ぬ生物や、生物資源の中にはもしかしたら難病の解決などにつながる可能性もあると言います。

―大事な自然や動物といったものをきちんと考えないといけませんね。シャンシャンが生まれてくるまでにも数頭が生まれては死んでしまったことを考えると、思っているほど生物は勝手に増えるわけではないんだなと感じます。

シャンシャンを通して「パンダ外交」に見る日中関係も考えてみたい

もうひとつ考えるなら、パンダを通して外交を考えてみても面白いでしょうね。

―そういえば、パンダ外交って言ってましたね。

実は、中国は日中国交正常化が行われた1972年に最初にジャイアントパンダを日本に贈っています。以後、10年、20年と節目の年や記念日にパンダを贈るということを続けているのです。

―へえ~。だからパンダは常に日本にいると誤解しちゃうんですね。

はい。日本でパンダの人気が高いことも一因だと思いますが、それだけ仲良くしようという態度を取っているということです。昔から贈り物をして外交するという文化がありますが、パンダはそのシンボルとも言えるのです。

日中記者会見に臨むサングラスパンダのイラストに

―確かに、パンダと言えば中国って感じがありますね。パンダが送られてきているということは、日中関係は今はいいということでしょうか。

そうですね。色々な見方はありますが、悪くはないと思いますし、関係をよくしようと外交レベルでは努力しているということになりますね。ただ、贈り物をどんどんするという風習自体が今は減ってきていますから、必ずしもそれで判断するのはよくありません。

―じゃあ、外交がうまく進んでいるというのはどうやって考えたら良いのでしょうか?

ひとつは、良好な関係を示唆する発言が互いに出ていること。そして、今は贈り物をするのではなく、相手国の品物や商品を購入するという取り決めをすることが多くなっていますね。共存共栄のために相手国に必要なものを提供する、ということでしょうか。

―今、保護主義とか何とかで貿易関係は緊張している雰囲気がありますね。

そうですね。外交というのは単純に国と国が付き合うだけでなく、政治や経済、軍事などの様々な問題が絡んできます。パンダを贈るから友好的とは決して言えませんし、貿易の取引量が大きいから友好ということでもありませんが、外交の方向性や状況を知る手がかりにはなるでしょうね。

時事問題って何だろう

―シャンシャンからこういう話になるなんて思いもしませんでした。だから就活課の方もチェックしておくように言っていたんですね。

まあ、シャンシャンはこの手の話題の中では特例中の特例だとは思いますけどね。こんなに色々なものを背負って生まれてくる動物はなかなかいないと思いますよ。

―それにしても、「時事問題」って何なんでしょうね。何でいろんな所で問われるんだろう。

「時事問題」というのは、近年世間を騒がせたような事象を問題にしたものですよ。それを通して、社会に興味を持ってもらったり、社会への関心がどれだけあるかを見るためのものです。不要論もありますが、今はネット社会ですからこういう機会がないと情報が偏る人も多いでしょうし、いいんじゃないかと個人的には思います。

シャンシャンについて問う男性

―なるほど、そういう意図なんですね。でも、人並みにメディアなどは見ているつもりですが、シャンシャンについてそんなに深く知らなかったですよ。

見ていても見ていないことは多いんですよ。関心があれば記憶に残るものも、関心が無ければすぐに忘れてしまいます。時事問題は、表面ばかりを見て覚えようとするのではなく、その背景や展望なども気にする必要がありますので、ヘッドラインばかりを覚えずに中身をしっかり見ることですね。

―そうですね。僕もシャンシャンが人気のパンダってくらいしか知らなかったので、ちゃんと関心を持って見ていれば良かったと思いました。こういうのが情報処理の能力なんでしょうね。エーイさんありがとうございました。これから、早速シャンシャン見に行ってきます!

時事問題を考えるならシャンシャンにまつわるエピソードを理解しよう

シャンシャンは上野動物園で生まれたジャイアントパンダであり、時事問題として取り上げられる場合、単にパンダに対する考えや感想を問われているわけではありません。シャンシャンにまつわるさまざまなエピソードを正しく理解し、質問や議論のテーマに対して自分の意見を述べる準備をすることが重要です。