「はれのひ」事件の再発を防ぐために考えるべき問題点とは

はれのひ株式会社による事件は、年始から大きくメディアを賑わせました。事件の背景や経緯、そして再発を防ぐために必要なことなど、幅広い角度から考えてみましょう。就活の時事問題でも問われる可能性のあるテーマとして掘り下げておきたい話題です。

「はれのひ」事件の再発を防ぐために考えるべき問題点とは

「はれのひ」事件について時事問題として知っておくべきこと

女性たちの成人式の定番であり、憧れと言えばやはり振り袖の着物です。その着物の販売やレンタルを行っていた「はれのひ株式会社」が、成人式の日に突然閉店し、着物が提供されなかった事件は、その後の対応も含めて多くの人々を傷つけたものとして大きな話題となりました。

怒りの女性

大学生の酒井君も、この事件の影響を受けた知人が周囲にいるため許せないと感じています。話す機会の多い経営コンサルタントのK・エーイ氏は、「許せない」だけではいけないと酒井君をたしなめるのでした。エーイ氏と酒井君の対話から、はれのひ事件で知っておくべき問題点について考えてみましょう。

「はれのひ」事件の問題点とは

K・エーイ氏

酒井君、はれのひの事件に対して「許せない」のはみんな同じだと思いますが、それでは何も変わりませんよ。物事のあり方を変えるためには、問題点を明確にして、「許せない」事件の再発を防ぐことです。

大学生の酒井君

―そうは言っても、やっぱりあの事件を思い出すと腹が立つんですよ。後輩にも被害者がいて、本当にかわいそうでした。後で事情を聞いてサークルでプチ成人式をしたんですが、やっぱりこの件について話すと泣いちゃうんですよね。

K・エーイ氏

そうだったんですね。女性たちにとっては、成人式での晴れ着というのは一大事ですからね。人によっては結婚式の衣装並みに大事だと言うくらいですから。

大学生の酒井君

―そんな大事な着物が、届かなかったなんてとんでもないですよ。しかも、何十万円も支払ってるんですよ。苦情を言う先も無く、本当にかわいそうです。

K・エーイ氏

酒井君、気持ちは察しますが、大事なのは、はれのひ事件を繰り返さないことです。この事件を繰り返さないためにも、きちんと問題点を考えましょう。きっと就活サークルで議論したり共有するときにも役立つと思いますよ。

大学生の酒井君

―はれのひ事件の問題点って、モラルじゃないんですか?他にないでしょう。

K・エーイ氏

落ち着いてください。確かに、はれのひ事件は経営者のモラルの問題が一番大きな問題だとは思います。しかし、個人のモラルは制御できませんから、他の面で制御する必要があります。私が考えるに、はれのひ事件の大事な問題点は「企業統治の問題」「業界風習の問題」「債権者保護の問題」です。

「はれのひ」事件の経緯

怒っている女性

大学生の酒井君

―いきなり難しい言葉を並べられてもわかりません。はれのひ事件の問題点を順を追って説明してください。

K・エーイ氏

そうですね。それでは、確認をかねてこの事件の経緯から説明しましょうか。

大学生の酒井君

―はい、お願いします。

K・エーイ氏

この事件は着物の販売・レンタルを行う「はれのひ株式会社」が、2018年の1月8日(成人の日)に突然休業し、翌日に全店舗を閉鎖したという事件です。

大学生の酒井君

―その結果、予約していたのに着物が届かなかったりして成人式に行けなかった人が大勢出ましたね。店舗のある地域では大パニックだったと聞いています。

K・エーイ氏

はい、はれのひ事件の被害者の数は1000人どころか2000人を超えるとされています。本当に悲しい事件です。そして、被害者の被害総額が3億4500万円と大きな金額であったことも問題なのですが、加えて借入金や買掛金、未払金などを含めた負債額が約10億8500万円にも上り、しかも債権者に配当する資産がほとんどないという状況がさらに大きな波紋を呼びました。

大学生の酒井君

―経営者がしばらく海外に逃亡していたんですよね?

K・エーイ氏

逃亡が正しい表現かはわかりませんが、行方をくらませていたのは事実ですね。破産手続きが開始されたところで公に姿を現したことなども含め、その対応のまずさというか不誠実さも大きな話題となりました。

大学生の酒井君

―結局、はれのひ事件の最後はどうなったんですかね?

K・エーイ氏

はれのひの会社自体は清算手続きを終え、経営者は刑事責任を問われている状況です。経営者は粉飾決算などで前科があるようなので、厳しい処罰は免れられないでしょうね。もっとも、処罰をしたからと言って被害者の傷や損失が無くなるわけではないのがまた辛いところですね。

「はれのひ」事件で考えたい企業統治の問題

K・エーイ氏

はれのひ事件でまず考えないといけないのは企業統治の問題ですね。コーポレート・ガバナンスと言ったりもします。

大学生の酒井君

―何ですか?企業統治って。

K・エーイ氏

企業統治というのは、簡単に言えば企業の不正行為を防止し、収益力を向上させるための経営の仕組みです。様々な利害関係者によって、企業が健全な経営活動をするために統制していくべきという考え方です。

大学生の酒井君

―今回のはれのひ事件では、まったくその様子が見られませんでしたね。

K・エーイ氏

はい、だからこそそれが問題なんですね。この事件の前にも、はれのひは融資を受けるために粉飾決算をしていたということがわかっていますが、そういうことをさせないために監査などが必要なわけです。また、企業の中でも取引先への支払いや給与支払いが遅れることが起こっていたと言います。

大学生の酒井君

―何でそんなひどいことに?

K・エーイ氏

はれのひが経営的にどうしてそうなったのかはわかりません。しかし、会社設立の条件などから考えると、会社役員や監査役など、経営者が自分の都合の良いように選任して事実上のワンマン体制を築いていた可能性が高いと思います。これでは企業統治が正しく行われません。

大学生の酒井君

―なるほど。そうですね。

K・エーイ氏

加えて、こうした事業であれば顧客にサービスや商品を提供するはずの日に突然閉店の指示が出て、しかもそれが実際に行われてしまうというのは、すでに企業内部でもモラルが崩壊していると見られます。従業員が店舗を開けて最後まで対応や謝罪をした店舗もありましたが、残念ながら指示系統の混乱を露呈したような気がします。

大学生の酒井君

―企業統治の仕組みをしっかり作っておけばこんなことにはならなかった可能性はありますね。でも、はれのひは、どうやったらそうなっていたんでしょうか?

K・エーイ氏

詳しい経営や組織の実情を知らないので言いにくい部分はありますが、きちんと経営実体について監査が入っていれば問題なかったのだと思います。今の会社法では会社設立を促すために監査役の設置は必須ではなくなっているため、それが災いしている可能性がありますね。

はれのひ事件は着物レンタル業界に続いている風習に問題がある

晴れ着を背景に厳しい顔の男性

大学生の酒井君

―はれのひ事件を考えた時、業界風習の問題もあるとエーイさんはおっしゃっていましたが、それはどういう点でしょうか?

K・エーイ氏

はい、通常、商取引というのは商品・サービスの提供と代価の支払いがその場で行われるのが原則になっています。しかし、今回の事件では先払いになっているんですよね。

大学生の酒井君

―そういえば、以前旅行会社のてるみくらぶの事件でも同様の問題がありましたね。

K・エーイ氏

そうですね。企業が資金繰りに困ってきたときの典型的な対応として、キャッシュを手元に置くためにとにかく現金が早く入るような支払い方法を採用してしまいます。しかし、支払う側からすると「商品も提供されていないのに何で?」となりますから、あの手この手で理由をつけるわけです。

大学生の酒井君

―「事前申込ならいくら割引」とか、そういうやつですか?

K・エーイ氏

はい、特典をつけたりとか、「大人気につき在庫僅少」とか言っておいて、とにかく支払いを急がせる方向で商談をまとめ、売上を計上していくわけです。そうすると本来見込んでいた利益が出せず、企業としてはどんどん収益が先細っていきます。

大学生の酒井君

―もう何か良くない雰囲気が漂ってきてますね。

K・エーイ氏

まあまあ、それで企業は支払いが必要な分を支払うのですが、今度は商品の仕入れやサービス提供のための資金、また企業の運転資金が不足してきてまた現金確保のために先払いを要求するという形で自転車操業になっていくんですね。いつかは破綻してしまいます。

大学生の酒井君

―今回のはれのひ事件も経緯を聞いているとそういう感じがありましたね。

そうですね。ここで問題なのが、成人式の着物レンタルや着物の注文はこうした商品やサービスの提供と支払いが別々であり、またそれの期間も半年前から1年前、場合によっては2年前など非常に長期になっているということです。

大学生の酒井君

―え?2年前から着物準備してるんですか?

K・エーイ氏

そうです。しかも、場合によっては成人式用の写真の前撮りや成人式当日まで現品が手元に届くことはありません。

大学生の酒井君

―それだと、企業の風評や経営状態などもわかりませんね。

K・エーイ氏

はい、そうなんです。そこが業界の問題なんですね。こうした企業ばかりではもちろんないのですが、業界の慣習として前払いが当たり前で、かつ競争があるために特典なども使って顧客を囲いこまないといけない事情があります。

大学生の酒井君

―着物レンタル業って、業者としては厳しい経営環境なんですね。

K・エーイ氏

そうですね。しかし、業界としてこの状態をどう考え、どう対処していくのかをしっかり考えていかないと、競争ばかりが激しくなって第二、第三の「はれのひ」が出てしまうのではないかという危惧があります。最低限の業界ルールの作成と周知徹底は必要なのではないでしょうか。

「はれのひ」事件の債権者の保護はどうあるべきか

大学生の酒井君

―今回、はれのひ事件がまた問題を大きくしたのが被害者に対するフォローがほぼなかったことですよね。

K・エーイ氏

そうですね、一生に一度の機会、女性にとっては成人式に晴れ姿を見せる機会が失われたことは大きなショックだったと思いますし、金銭的な保障も何もありませんでした。企業や個人が破産した場合に、そこに貸しがある人を債権者と言いますが、その債権者保護の問題も重要な視点です。

大学生の酒井君

―エーイさんの言う「債権者保護の問題」というのはどういうことを指していますか?

K・エーイ氏

今回は企業の破産手続きによって、法人や経営者の残り資産から債権者に対して弁済をしていく形になるのですが、その資産がほとんどないために債権者にはほぼ弁済が行われていません。そのため、計画的に倒産、破産させたのではという疑惑が持たれています。

大学生の酒井君

―経営者が公に出てくるまでは海外にいたという話もあるくらいですから、その可能性は高いんじゃないでしょうか。

K・エーイ氏

もともと破産などによる任意整理というのは、債務者の社会復帰を助けるという目的で定められているものです。ただ、それが今回のように債権者に対する支払いから免れるために利用されるケースにおいて、債権者の保護はどうするのかという問題が残っています。

大学生の酒井君

―今回のケースでは、債権者は保護はされないんですか?

K・エーイ氏

法人の清算としてはそうなるでしょうね。ただし、経営者についてはどうなるかまだわかりません。今後の裁判の結果や、刑罰によってはそこから債権者への支払い義務が出るのかもしれません。ただ、それだとしても機会を損失したことなどに対して十分な補償が出るのか、またその能力があるのかがわかりません。また、クレジットカード払いの場合は、カード会社が補償してくれる可能性もあるようです。

大学生の酒井君

―はれのひ事件は負債総額もかなり大きいですし、個人が普通に働いて返せる額ではないですよね。

K・エーイ氏

そうですね。配当順という点でも、おそらく個人の消費者は後ろでしょうから期待はできませんね。債権者集会でも配当の見込みがないことは伝えられていますが、何とも後味が悪い結果で、まさに社会的損失と言ってもいいかもしれません。

大学生の酒井君

―震災などと同じように考えて、国が多少補償してあげることはできないんですかね?

K・エーイ氏

そこに税金を使うということについてはきっと不公平という意見が出るでしょうし、新たなモラルハザードの温床になる可能性もありますから、きっと難しいでしょうね。自然災害ならまだしも人災ですから、責任は人に帰属するのが自然じゃないでしょうか。

「はれのひ」事件に伸びた支援の手は明るい材料

後光とともに舞い上がる振り袖姿四体と福音を受ける歓喜の女性

大学生の酒井君

―はれのひ事件は、話せば話すほど何だか悲しいというか、力の抜ける事件ですね。

K・エーイ氏

その点に関しては同感です。個人の無責任さと、社会システムの未成熟なところ、そして成人式の晴れ着のニーズなどを考えると、いつかは起こるべくして起こった事件なのかもしれません。それこそ、旅行会社のえるみくらぶ事件と同じように思えます。

大学生の酒井君

―こうした悲しい事件が起こらないようにしてほしいですね。

K・エーイ氏

でも、こんな事件があったからこそ見えた支援の手は、明るい話題だったのではと思います。ボランティアで行われた成人式のやり直しや、管財人たちの取り組みなどが見えたのは素直に良かったなと思います。

大学生の酒井君

―SNSなどもあって、多くの人の共感を集めることができるようになった今だからこそですね。

K・エーイ氏

はい、本当にそうですね。今回のはれのひ事件は人の良いところと悪いところを両方垣間見ることになったと思いますし、社会のための様々なシステムも、悪用すると害になることを見せましたね。

大学生の酒井君

―結局、いろんなことは使う人次第ってことなんですかね。憤りはなくなりませんが、それでも話す前よりは具体的にこの事件について考えられるようになった気がします。エーイさん、ありがとうございました。

「はれのひ」事件の問題は様々な角度で考えよう

社会に大きな衝撃を与えた「はれのひ」事件でしたが、事件をただ「許せない」「あってはならない」と言うだけではなく、様々な観点から再発防止について考えてみることが大切です。法や制度の届かない部分や、悪用に対する対策など、様々な検討が必要です。時事問題は、感情的に共感をするだけではなく、仕組みや原因、影響など様々な角度で考える癖をつけておくと議論にも強くなります。