アニュアルレポートとは?就活を一歩リードする活用の仕方

アニュアルレポートという言葉をご存じでしょうか。一見、就活生には関係のないレポートのように思えますが、企業研究に利用できる重要な情報が詰まっています。アニュアルレポートの読み方と就活における活用方法を解説します。

アニュアルレポートとは?就活を一歩リードする活用の仕方

アニュアルレポートとは

「アニュアルレポート」という言葉は、就活生にとっては聞き慣れないかもしれませんが、知っておくことは大切です。まずは、アニュアルレポートとは何かについて解説します。

アニュアルレポートとは何か

アニュアルレポートとは、日本語における「年次報告書」を指します。株式上場している企業が発行するさまざまな資料のうちの一つです。事業年度の終了後に作成する報告書であり、財務諸表などが主に記載されています。

財務諸表とは、その企業がどれだけ儲かっており、どれだけ借金をしているのか、またどれだけの資金を抱えているのかといった財務状況を報告するために作成されたさまざまな計算表のことを指します。

財務諸表

アニュアルレポートは法律で開示が義務付けられているわけではありません。そのため、規定のフォーマットはなく、資料のまとめ方は企業によってさまざまです。PDFでテキストと表だけが載っているようなスタンダードなものもあれば、誰にでも読みやすいよう、動画や図を多用して創意工夫を凝らして作成されているものもあります。

企業がアニュアルレポートを発行する目的

株取引所

企業はアニュアルレポートを、世界中の株主や投資家、金融機関といった関係先に配布しています。さらに多くの企業が、コーポレートサイトにおいてアニュアルレポートを公開しています。近年は、タブレットなどで気軽にいつでもどこでも読めるようになっています。

法律で公開が義務付けられているわけではないのに、なぜアニュアルレポートを発行する企業が多いのでしょうか。企業がアニュアルレポートを発行する目的は、第一には株主や投資家に向けて投資判断のための材料を提供することです。

株主や投資家だけを読み手として据えているわけではなく、企業について一人でも多くの人々に理解を深めてもらうことを大きな目的としています。

就活生におすすめのアニュアルレポートの読み方

「企業が世の多くの人に向けて発行している報告書であれば、就活生が読んでも理解できるのでは?」と思った人もいるでしょう。実はその通りです。読む必要のない難しい情報もあれば、読めば希望する企業についての理解が深まる貴重な情報も含まれています。就活生が読むべきアニュアルレポートのポイントについて解説します。

社長メッセージ

アニュアルレポートでは、まず社長から株主に向けて、企業の現状や将来展望についてのメッセージを丁寧に発信しています。この社長メッセージ(トップメッセージ)を読めば、企業としてのこれからの方向性、つまり目標としているところを知ることができるのです。

社長メッセージをよく読みこむことで、企業としてより発展する未来のためにどのような人材を求めているのかについて気が付くことができるでしょう。

セグメント別情報

企業のセグメント情報

セグメント別情報とは、企業の事業分野を網羅的に解説した情報です。世間的にイメージされている事業内容とは全く異なる事業を持っている企業も多いです。そのため、「この会社はこんな事業にも取り組んでいたのか。知らなかった!」とうなってしまうような情報もあり、見逃せません。志望している企業の事業内容について、多面的に理解するのに役立つ情報が盛り込まれています。

決算状況

決算状況には、ここ数年来の売上や純利益といった、企業の財務状況の推移が示されています。わかりやすいようにグラフ化するなどして工夫して見せている企業も多いです。

細かな金額や数値を記憶しておく必要はありませんが、読みながらいろいろと自分の頭の中で考えて、志望先企業の決算状況についてある程度把握しておくとよいでしょう。

特集記事

社長と特集記事

アニュアルレポートの中にもしも何か特集記事があれば、それは企業が特別に発信したい最新情報であると考えられるため、必ず目を通しておくべきです。

自分が全く気にかけていなかった事業分野が、実は希望する企業にとって今後最も注力していきたいと考えているものとなっているようなことも十分あり得ます。そのような事実を、特集記事を読むことでいち早くつかむことができるでしょう。

アニュアルレポートの企業研究への活用方法

アニュアルレポートを読むことで、就活における企業研究にどのように活用することが可能なのでしょうか。他の就活生に差をつけるアニュアルレポートの活用方法について、具体的に確認していきましょう。

志望動機や共感のポイントにする

成長グラフと企業トップ

社長メッセージに掲げられた、企業の理念や企業としての今後の展望を読み解くことで、面接官に刺さりやすい志望動機を作成することが可能になります。社長メッセージと同じ方向を見据えて志望動機を作成すれば、企業のこれからの展望と自分の目線がずれることがないからです。

最終面接においても、社長メッセージから読み解いた情報は活躍します。社長メッセージで発せられたポイントからずれることなく、その企業の事業展望のどのようなところに共感し、入社後どのような役割を自分は果たしたいと思っているのかを具体的に説明できれば、最終面接で落ちることはまずないと言えるでしょう。

企業の財政状況を見極める

財務諸表

近年、日本を代表するような大企業の経営が傾くという事態も起こっています。「名の通った上場企業だから入社すれば一生安泰」とは決して言えない時代に突入していると言えます。

アニュアルレポートで利益が減っているのを見て、「この会社は傾いているのでは?」と短絡的に判断するのはよくありませんが、減っているのであれば何が影響しているのかといったことを考えてみることは重要です。

その企業が抱えるどの事業分野が利益の減収に拘っているのか、来年度はどのような推移をたどりそうかなどを読み解けば、企業研究は深まることでしょう。

入社後のキャリアパスをイメージする

アニュアルレポートには、企業の最新の事業内容などが紹介されています。アニュアルレポートに目を通すことで、「入社後はこの分野に関わってみたい」「この分野についても、自分の専門分野が生かせそうだ」といった、入社後のキャリアパスを具体的にイメージするようにしましょう。

キャリアパス制度とは?働く自分の数年後を考える意味

アニュアルレポートで就活生が読む必要のない記事

アニュアルレポートすべてに目を通そうとすると大変です。就活生には直接関係しないような記事や、読んだところで理解できないであろう記事もアニュアルレポートには含まれています。読まなくてもいい記事を頭に入れておくことで、貴重な就活の企業研究の時間を無駄にするのを予防しましょう。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスとは、日本語でそのまま言い換えれば「企業統治」です。企業が組織(グループ)として乱れることなくしっかりと機能できるように体制が整っているのかどうかといった情報が公開されています。

投資家にとっては、投資して大丈夫な企業であるのかを判断する重要な資料となります。就活生にとっても、もしかすると入社するかもしれない企業が組織として健全に機能しているのか、コンプライアンスはしっかりしているのかといったことは大変気になる重要な情報です。

しかしながら、就活生がアニュアルレポートのコーポレートガバナンス記事を読んだところで、判断できるほど簡単ではありません。コーポレートガバナンスから無理に読み解くのではなく、疑問に感じている点については、企業説明会や面接などで質問をして教えてもらうとよいでしょう。

CSR

CSR

CSRとは、“Corporate Social Responsibility”、つまり「企業の社会的責任」のことを指します。CSRの記事では、企業の環境に対する取り組みや、社会貢献活動などについて紹介されています。

もちろん、企業が社会に対して果たす責任としてとても大切なことではありますが、ビジネス自体に直接関係する情報ではありません。「こんな社会貢献活動をしている企業なのか」といったように、企業のカラーの参考情報として読んでおくのはよいですが、面接などでCSRについて話題にする必要は全くないでしょう。

CSRについての理解を深めている暇があれば、本題であるその企業の事業内容についてより深く調べたほうが、就活には有益と言えます。

アニュアルレポートを駆使して就活を一歩リードしよう

特に新卒の場合、企業のアニュアルレポートまで読み込んで企業研究をしている就活生はほとんどいないと言えるでしょう。そのようななかで、アニュアルレポートの押さえておくべきポイントをしっかりと読みこみ、自分の考えと組み合わせて消化する作業までできていれば、他の就活生とは一線を画す企業研究ができるはずです。

アニュアルレポートは、株主や投資家だけではなく、広く多くの人々に向けて企業が威信をかけて発信している貴重な情報です。就活生にとって、これを読まない手はありません。アニュアルレポートを読むことで企業に対する理解を深めて、面接官に刺さる受け答えができるように準備しましょう。