キャリアパス制度とは?働く自分の数年後を考える意味

キャリアパスは個人と企業それぞれの立場で意味するものが違います。就職に関するミスマッチを減らして理想的なキャリアアップの道筋を辿るには、キャリアパスについてしっかり考え将来設計していくことが大切です。キャリアパスとは何か、それらを制度化することによるメリット・デメリットとは?

キャリアパス制度とは?働く自分の数年後を考える意味

就職の際にはキャリアパスをしっかり考えよう

就職活動をしている人や、また会社に入ったばかりの人が耳にすることが多いキャリアパスですが、キャリアパスを考えることは自分の働き方を大きく左右します。

今はひとつの会社に定年まで残ることが難しい時代となっています。その中で自分がどのように働いていきたいのか、しっかり考え実践していくためにもキャリアパスが重要視されているのです。

キャリアパスの意味とは

キャリアパスとは、簡単に言えば「キャリアアップに関する道筋」を言います。
しかし、キャリアパスとして考えるべきものは、個人と企業とでは少し違った意味合いを持ちます。

個人が考えるキャリアパス

個人のキャリアパス

個人としてのキャリアパスは幅が広く、どのような企業(職場環境)でどのような立場で仕事をし、またどのようなノウハウを身に着けていくかの指針や計画のことです。

これは一人の職業人として、どのような姿になっていきたいかを考え、その道筋を考えていくものとなります。必ずしも職場で身に着けるものだけに限定されず、資格の学習や語学留学なども含めた広いものとなっています。

企業が考えるキャリアパス

企業の立場から見たキャリアパスは、従業員に対して会社から提供するものです。職場における職位や職務に就くために必要な業務経験や年数、順序やモデルとなるキャリアのステップを表したものがキャリアパスになります。

基本的に会社の外のことについては扱うことができないため、企業内に限定されたものとなります。

キャリアパスを常に意識しながら行動することが大切

キャリアパスは、個人にとっての将来の設計図とも言うべきものです。設計図の通りに作っていくことで、理想とする職業人生を送ることができるように描くものです。現実的であると共に、常に意識して実践していくものであるという意識が必要となります。

梯子を上って

キャリアや職業能力は偶然に身に着くものがゼロではありませんが、意識していることによって自分に回ってくるチャンスをつかむことができるようになります。30歳でマネージャー職を考えている人であれば、昇進や昇格のチャンスや、社内の関係する研修などがあれば迷わずに飛び込むことによって実現が近づくようになります。

キャリアアップへの道筋が曖昧だと、「次の機会にしよう」と思っているうちに数年経っていることもあります。

キャリアパスの中には、キャリアアップのために必要な目標が設定されているものです。目標とする職位を得るために不足しているものがあれば、事前に準備していくことが可能となります。

キャリアパス制度のメリットとデメリット

企業によってはキャリアパスを制度化し、企業の将来を担う人材の育成のために準備を考えているところもあります。

キャリアパス制度のメリット

幾つもの入り口の前でガッツポーズするビジネスマン

キャリアパス制度を企業が持つ一番のメリットは、キャリアパスを具体的に示すことによって、そこに惹かれて優秀な人材が集まりやすくなる点です。

人事評価や昇進・昇格のための制度がブラッシュアップされ、見える形で社内に共有されることを通して、モチベーションアップが期待できることや、具体的な職業能力の向上に必要なことがわかるので従業員の能力アップが期待できます。

キャリアパス制度のデメリット

キャリアパス制度のデメリットは、名前だけでキャリアパス通りに人材育成が進まない場合があることです。キャリアパス通りに昇進・昇格等が行われない場合、そこで従業員のモチベーションの低下の一因となる可能性があります。

また、理想的なキャリアパスを設定したものの、それが現実的に難しく実情と合わない場合もあり、キャリアパスの見直しが定期的に必要になるなど、運用面でのコストがかかります。

さらに、職種が多様な場合には職種間のキャリアパスの違いが妥当なものなのか精査する必要があるなど、公平で平等なものであるかに配慮する必要があります。

キャリアパスが重要視されている背景に働き方の多様化がある

ハードルを越えて走るビジネスマン

現在、キャリアパスが大事とされている背景としては、働き方の多様化があります。

今や終身雇用制度は崩れ、多くの企業で様々な経験を積みながら働く人が多くなっています。正社員であることはゴールではなく通過点となり、その上で職業人として自分に何ができ、どのような舞台でその力を発揮していきたいのかを考え、準備する必要が生じています。

また、ライフスタイルの多様化によって、年齢や状況によって描くキャリアパスの形も様々になってきており、従来のキャリアにおけるモデルケースは通用しにくくなってきています。それぞれが自分らしく、そして満足できる働き方を実現するためにキャリアパスが大事になってきているのです。

そして、個人と企業の間では雇用のミスマッチが多いことが問題となっていますが、企業側がキャリアパスを明示し、また個人も自分の目指すキャリアパスを明らかにすることによって、互いの求める働き方に相互理解を作ることができ、ミスマッチの減少につながると期待されます。

これからは中小企業ほどキャリアパスを示すことが大事になってくる

中小企業は大企業と比べて採用の現場では弱くなります。それだけに、キャリアパスを通して自社の魅力や人材への期待をアピールする必要があります。

中小企業は人を育てるための環境が大企業と比較して弱く、長期的にはそれが生産性の違いとして出てきます。求職者もそれをわかっており、できれば環境の良い大企業を志望する傾向にあります。だからこそ、人材育成に対してのビジョンや熱意をきちんと示すこと、その表れとしてのキャリアパスを整備することが大事なのです。

中小企業では様々なスキルやノウハウ、評価基準が整理されていないことも多いですが、キャリアパスの設計を通じて社内に蓄積されている問題を整理する機会となるでしょう。

個人がキャリアパスを設計するときのポイント

キャリアパスは個人でも考えることが大切です。個人のキャリアパスを考える上でのポイントを整理していきましょう。

1 得意なもの・今後得意としていきたいものを明確にする

十字路で自分の進路に迷うビジネスマン

個人のキャリアパスとして最も重要なのが、何を強みとして発揮しながら仕事をしていきたいかです。

プログラミングスキルを重視しているのであれば、あえてマネージャー職にはつかずに第一線で技術者として活躍を続けるという道もありますし、それができる環境を選ぶという選択肢も出てきます。

現在できることはもちろん、将来にわたって何を得意として仕事をしていくのかも考え、足りない部分は努力して補っていくと良いでしょう。

2 自分が働きたい職場環境について考える

同じく「部長」という管理職だとしても、大企業の部長職と中小企業の部長職とでは1~2つほど実際の職位に違いがあると感じる人も多いもの。どのような環境で自分の考えるキャリアを実現していきたいのかを考えることも大切なことです。

「先進的な企業で働きたい」「グローバル展開をしている企業で働きたい」といった環境面についても考え、必要に応じて転職を考えたり、そのために身に着けていくべきスキルなどを精査しましょう。

4 キャリアパスを実現する時期や年齢を考える

キャリアを考える上で年齢はとても重要な問題です。結婚し家族ができるようになれば、それまでと同じようにキャリアアップのための勉強や遅くまでの残業はしにくくなりますし、転勤や転職なども難しくなります。

また、入社してすぐにマネージャーになるというのも現実的ではありません。時期や年齢を考え、現実的に可能と思われるようにキャリアパスを設計していくことが大切です。

5 キャリアパスは定期的に更新する

書き加えられたキャリアパスの階段を上るビジネスマン

キャリアパスは一度決めたら終わりではありません。キャリアパス通りに自分が進んでいるのかを定期的に確認し、気づいたことや新たな目標ができればキャリアパスも変更して構いません。

しかし、キャリアパスは考えることに意味があるのではなく、実践してキャリアを実現することに意味があります。変更を繰り返しているうちに、妥協ばかりのキャリアパスができることがあるので注意しましょう。

これからは誰もがキャリアパスをしっかり考えるべき時代になる

昔と今とでは、働くための環境が大きく変わってきていますが、その中だからこそしっかりとしたキャリアパスを描いていく必要があります。できれば就職する前の学生の時期からしっかり考えておくべきですし、また社会人として働き出してからも、定期的に考える機会を持ちましょう。

働き方もライフスタイルも多様化している中だからこそ、キャリアパスの違いによって自分の生活や職業能力、立場など様々なものが変わっていきます。自分の将来は流れに任せるだけでなく、自ら考えて行えるようにしていきましょう。

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