面接でお茶が出てきたときに慌てる人は多い
就職活動や転職活動の面接に行くとお茶を出してくれる場合があります。「飲んでいいのか」「飲まないと失礼か」「合否に関係するのでは」と戸惑う応募者は少なくありません。
結論から言えば、お茶を飲むか飲まないかは選考の合否に直接影響しません。多くの採用担当者が「お茶は選考とは無関係」と口をそろえます。ただし、お茶の対応の仕方によっては人間性や社会人としての常識が垣間見えることがあるのも事実です。
この記事では、面接でお茶を出される理由から、場面ごとの正しいマナー、よくある「お茶を飲んだら落ちる」という都市伝説の真偽まで、採用担当者の視点も交えて解説します。
「面接のお茶を飲んだら落ちる」は本当か
ネットや就活情報サイトでは「面接中にお茶を飲んだら落とされた」という話が散見されます。しかし採用担当者の立場から見ると、お茶を飲んだこと自体を理由に不採用にすることはありません。
この都市伝説が広まっている背景には、タイミングの問題があります。面接官が話している最中に飲む、大きな音を立てる、一気に飲み干すといったマナーの悪い飲み方が「印象を損ねた」という経験談が、いつの間にか「お茶を飲んだら落ちる」という誤情報に変化したと考えられます。
飲むこと自体は問題ありません。問題になるのは、飲み方です。
面接中にお茶を出す理由は
面接の場でお茶が出されるのには、いくつかの理由があります。出されるかどうかは企業によって異なりますし、同じ企業でも担当者や日によって違うこともあります。合否の前兆でも、マナーテストでもありません。
リラックスして面接を進めてもらうための配慮
最も多い理由が、応募者に緊張をほぐしてもらいたいという配慮です。面接という場は応募者にとって緊張の連続ですが、採用担当者も本来の人物像を見たいと思っています。かたくなった状態よりも自然体で話してもらった方が、双方にとって実りある時間になるためです。
こうした場合、面接官側にもお茶が用意されていることが多く、「お互い飲みながら話しましょう」という雰囲気づくりの一環です。
面接が長時間になる場合の配慮
役員面接など30分以上になる選考では、話す機会が多い応募者が喉を渇かせてしまうことへの配慮として提供されます。移動時間や待ち時間を含めると、応募者は1時間以上何も飲まない状態で複数の質問に答え続けることになります。お茶が出るのは、より良い面接の場を作るための実用的な理由でもあります。
また、役員や上席者が同席する面接では、人事担当者がそれらの人々へお茶を出す際、応募者に出さないのはビジネスマナーとして不自然なため、全員へのお茶提供につながるケースもあります。
企業の親切心やブランディング目的
夏場の暑い時期など、純粋に「喉が渇いているだろう」という担当者の親切心からお茶を出すケースもあります。また、飲料メーカーが自社製品をPRするために出す場合や、「対応が丁寧な会社」という印象を与えることを意識した企業ブランディングとして提供しているケースもあります。お茶が出るかどうかに企業規模や選考の合否は関係していません。
面接でお茶が出された場合の正しい対応
場面に応じた対応のポイントを確認してください。難しいことは一つもなく、基本はお礼・タイミング・所作の3点です。
受け取る時は感謝を声に出す
お茶を持ってきてくれた方へは、はっきり聞こえる声で「ありがとうございます」とお礼を言いましょう。相手が事務スタッフであっても面接官であっても関係ありません。声が小さすぎてお礼が届いていないと、社会人としての常識を疑われることがあります。
ただし、面接の最中に話が進んでいるタイミングでお茶を持ってこられた場合は、発言が途切れてしまうため言葉でのお礼は難しいことがあります。その場合は軽く会釈するだけで問題ありません。タイミングを見て一言添えられる余裕ができたら伝えましょう。
採用担当者の立場から見ると、お礼も言わずに当然のようにお茶を手元に置く応募者は、それだけでマナーへの意識が低い人物と映ることがあります。逆に、質問の回答中に運ばれてきても自然に会釈できる応募者は、状況に応じた対応ができる人物として好印象を残します。
飲むタイミングは「話の切れ目」を基本とする
面接中にいつ飲んでもよいわけではありません。採用担当者から見て自然で失礼にならないタイミングは次の場面です。
| 場面 | 対応のポイント |
|---|---|
| 面接官に「どうぞ」と勧められたとき | 最も自然なタイミング。「いただきます」と一言添えて飲む |
| 面接官もお茶を飲んだとき | 同じタイミングで自然に飲める |
| 話がひと段落したとき・質問の合間 | 会話が途切れた隙に静かに飲む |
| 面接の終盤・終了後 | 「せっかくですのでいただきます」と一言添えて飲んでもよい |
面接官が話している最中に飲むのは避けてください。相手の言葉が耳に入っていない印象を与えます。また、お茶が出た直後に間髪入れずに飲むのも、のどの渇きをアピールしているようで場の雰囲気に合わないことがあります。
飲み終わった後は「ごちそうさまでした」と伝えるとより丁寧な印象を残せます。
飲む際の所作:湯呑みは両手で、音を立てずに
お茶を飲む際の基本的な所作は以下のとおりです。
湯呑みは両手で持ちます。片手で側面を支え、もう片手で底を軽く支えるようにして持ちます。飲む時は音を立てないように注意してください。音を立てて飲むのはビジネスの場では非常に悪い印象を与えます。一気に飲み干すのも、急いでいるような印象を与えるため避けましょう。コーヒーカップの場合は、持ち手を片手で持つのが正しい所作です。湯呑みと同様に両手で持つと、かえって不自然に見えることがあります。
湯呑みに蓋が付いている場合の作法
蓋付きの湯呑みが出された場合、左手で湯呑みの側面を支えながら右手で蓋を取ります。取った蓋は湯呑みの右側に、蓋を上向きにして静かに置きましょう。音を立てないよう注意してください。
飲み終わったら湯呑みに蓋を戻します。奥から手前に傾けるように閉めるのが正しい作法です。
待合室・面接前にお茶が出された場合
面接室に入る前の待合室や控え室でお茶が出されることがあります。この場合も受け取り方の基本は同じですが、お茶を出してくれた方が退室してからいただくのがマナーです。
「誰も見ていないから」と気を緩めないでください。ドア越しに音が聞こえることもありますし、廊下からの視線が届く場合もあります。控え室での振る舞いも含め、入社後の日常業務での姿を面接官が想像することがあります。
なお、面接官が来る前に控え室でお茶が提供された場合、そこで全部飲み干してしまうのではなく、一口程度にとどめておくと、このあとの面接中にも活用できます。
ペットボトルで出された場合の対応
説明会やグループ面接など複数人が集まる場面、または企業のスタイルとして、湯呑みではなくペットボトルのお茶や水が提供されることがあります。この場合の所作の基本は湯呑みのときと同じです。
ペットボトル特有の注意点は「退室時の扱い」です。基本的にはその場に置いて帰るのが無難です。勝手に持ち帰ったり、「持ち帰っていいですか」と尋ねるのも避けてください。面接官から「よろしければお持ち帰りください」と言われた場合のみ、お礼を言ってカバンにしまって帰りましょう(手に持ったまま歩かない)。
お茶をこぼしてしまった場合
面接中の緊張から、お茶をこぼしてしまうことがあります。こうしたアクシデントへの対応こそ、その人の本来の姿が出やすい場面です。
まずはっきりとした声で「申し訳ございません」と素直に謝り、すぐにハンカチやティッシュで対処します。慌てすぎて余計に広げてしまわないよう、落ち着いて行動することが大切です。採用担当者から見ると、アクシデント後に冷静に動ける応募者は、仕事上のトラブルにも適切に対処できる人物として好印象を持たれることがあります。
女性は口紅の跡を退室前に確認する
口紅をつけている場合、湯呑みやカップの縁に跡が残ることがあります。退室前に必ず確認し、ついていた場合はハンカチまたはティッシュでふき取ってから席を立ちましょう。指でふき取るのはマナーとして適切ではありません。取り出しやすい場所にハンカチかティッシュを携帯しておくことをお勧めします。
退室の際にお礼を伝える
お茶を出してもらった場合、退室前か別れ際に「お茶をいただきありがとうございました」と一言添えると好印象です。タイミングを逃してしまいがちですが、最後の挨拶の流れの中で自然に伝えられます。
万が一伝えそびれた場合は、その日のうちに面接へのお礼メールと合わせて一文添えるという方法もあります。ただし、印象は当日現場でつくものですから、できる限りその場で伝えることを意識してください。
採用担当者が「お茶の対応」でマイナス評価するのはどんな場面か
「お茶は合否と関係ない」という前提のもと、採用現場でよく見られる印象を下げてしまうパターンを確認しておきましょう。これらはいずれも、お茶を飲んだことが問題なのではなく、飲み方や振る舞いの問題です。
面接官が話している最中に飲む
相手の言葉が聞こえていない・大切にしていないという印象を与えます。ビジネスの場では、相手が話しているときは聞くことに集中するのが基本です。話の途中でお茶を飲む行為は、たとえ無意識でも「話を聞いていない人」と映りやすいです。
大きな音を立てて飲む
日常の家庭では許容されることも、ビジネスシーンでは極めて悪い印象になります。特にお茶をすするような音は、営業職や接客業で客先に出向く職種での採用を検討している面接官には強くマイナスに映ります。業種・職種に関係なく、静かに飲む所作は最低限のビジネスマナーです。
出された瞬間に一気に飲み干す
「待ってました」と飲み干す行為は、相手に飲み物が切れたことへの気遣いを生じさせます。せっかく出してくれた側に「おかわりが必要か」と余計な気を遣わせてしまうため、特に面接の序盤・中盤では少量にとどめ、終盤で残りをいただくのがスマートな対応です。
お礼をまったく言わない
採用担当者から見ると、お茶を当然のように受け取ってお礼を言わない応募者は、入社後もちょっとした親切や配慮に気づけない人物として映ることがあります。「ありがとうございます」の一言は採用判断に直接影響するものではありませんが、職場での人間関係を想像する材料になる場合があります。
よくある疑問:面接のお茶について
お茶を飲まなかったら失礼になりますか?
飲まないことで不採用になることはありません。ただし、出してくれた相手の好意に対してまったく手をつけないのは、場によっては少しぎこちない印象を与えることもあります。緊張しているときや飲みたくないときは、受け取る際に「ありがとうございます」とお礼だけしっかり伝え、最後に「ごちそうさまでした」と一言添えれば丁寧な対応として十分です。
お茶が出たかどうかで合否を判断するのはNG?
「今回はお茶が出た=通過しやすい」「出なかった=脈がない」という解釈はすべきではありません。お茶が出るかどうかは担当者の判断や企業のスタイルによって異なり、選考の評価と連動していません。同じ企業の同じ面接でも、日によって担当者によって違うことがあります。
コーヒーや水が出た場合も同じマナーですか?
基本的な所作の考え方は同じです。ただし、コーヒーカップは持ち手を片手で持つのが正しい持ち方です。湯呑みと同様に両手で持つのは逆に不自然に見えることがあるため注意してください。水のペットボトルはお茶のペットボトルと同様の対応で問題ありません。
オンライン面接ではお茶のマナーは気にする必要がありますか?
オンライン面接では基本的にお茶が出されることはないため、元の疑問は発生しません。ただし、自分で用意した飲み物を手元に置いている場合は、画面越しにも所作は見えています。カメラに映る位置での飲み方には注意し、話している最中や面接官が話している最中に飲むのは避けてください。
面接でお茶を出されてもマナー良く対応できれば大丈夫
面接でお茶が出ても、飲む飲まないは合否に直結しません。ただし、お礼を言う・タイミングを選ぶ・静かに飲む、この3点を守るだけで採用担当者に「常識のある人物」として映ります。
むしろ注意が必要なのは、お茶を選考の合否と結びつけて解釈し、過剰に気を遣いすぎて肝心の面接に集中できなくなることです。お茶が出るのは応募者への配慮の表れです。感謝して自然に対応し、あとは面接の内容に集中してください。



















