教員の志望動機は自分が学校や生徒に何を提供できるのかを書こう

教員採用試験で問われる志望動機では、自分が好きなことややりたいことを述べるだけでは不十分になりがちです。学校や生徒に対して自分がどんな価値を提供できるのかを志望動機でしっかりアピールしましょう。教員の志望動機のポイントについてまとめ紹介しています。

教員の志望動機は自分が学校や生徒に何を提供できるのかを書こう

教員採用試験を突破できる志望動機の書き方ポイントを知ろう

今も昔も、就活生の中で高い人気を誇るのが教員です。教員資格に必要な科目の単位を取得し、教育実習を経て教員免許を取ることが必要となりますが、最終的に就職をするためには教員採用試験に合格しなければなりません。

今と昔では学校に望まれるものも違い、また少子化の影響で教員の採用枠も減少傾向です。教員採用試験を突破するためにも、しっかりした志望動機を作成することが大事になります。志望動機作成のポイントについて一緒に考えてみましょう。

教員採用試験では「子供が好き」「教えるのが好き」なだけの志望動機は通らない

教員になる動機、また就職の志望動機として「子供が好き」であることを上げる人は多いのですが、「子供が好き」なだけの志望動機は通らないことがほとんどです。その理由は単純明快で「子供が好き」な人ばかりが集まっているというのが教員への就職活動の場なのです。

「子供」と「教えること」の、どこがどのように好きなのかが大切と熱弁をふるう先生

もちろん、子供が好きではない人よりは子供が好きな人の方がずっと良いのは間違いありません。ただし、「子供が好き」という気持ちも対象は様々です。自分の思うように言うことを聞いてくれないときが多くても好きでいられるのか、また小学生と中学生、高校生は一緒にして考えることは当然できません。子供が好きをアピールするなら、どんな年代か、どのような点が好きなのかを明確にしておく必要があります。

また、同様に「教えることが好き」という志望動機もよく見受けられます。これもまた志望者の中には同じような人が多く埋もれやすくなります。また、教えるだけなら塾講師でも家庭教師でも良いはずです。その中であえて教員を選ぶ理由まで考えを深くする必要があります。

教員採用試験に通るための志望動機では、「子供が好き」という自分のアピールだけでなく、自分が学校や生徒に対してどのような価値を提供できるかという点も大事になります。子供が好きであることをアピールするだけでなく、相手に提供できるものを考えるアプローチも必要です。

教員の志望動機で考えるべき特殊なポイント

教員の志望動機では、考えるべき内容がいくつもあるのが特徴です。「学年」「科目」「地域」の3つの視点で考えるべきポイントを挙げてみます。

教員の志望動機の三つポイントを語る教師

学年

教員になる場合、小学校、中学校、高校と免許にも違いがありますし、また当然生徒の雰囲気もまるで違います。小学校ならまずは生活習慣など基本的な生活面の指導の機会も多くなりますし、中学生なら思春期という多感な時期ですので人間関係についての相談が多くなります。高校生にもなれば将来や進路についても考え出すなど、学年によって教える内容は学問の他も多岐にわたります。

科目

小学校教諭の場合は複数科目を担当するのが一般的ですが、中学高校となれば科目ごとに専門をもつことになります。その科目を選んだ理由や、その科目の授業を通して伝えたいことなどがあれば、立派な志望動機になります。

地域

公立校の教員採用試験は自治体ごとに行われますので、どうしてその自治体なのかという点についてはきちんと考えなくてはなりません。地元でない場合や転居を伴うような自治体の場合は必須と言っても良いくらいです。地域ごとに傾向も違いますので、教育事情などをよく調べて志望動機づくりに活かしましょう。

教員の志望動機の例文

教員の志望動機について、例文を見ながら細かいポイントについて確認しましょう。履歴書を書いたり、面接を受けたりする際の志望動機の書き方の参考にしてください。

教員の志望動機の例文1:公立校の場合(NG例)

私が教員を志望するのは、生徒に良い影響を与えたいからです。

私の中学校の頃の恩師は非常に生徒の気持ちを汲んでくださって、進路や思春期の様々な相談に乗ってくれました。その先生は持ち上がりで3年間私たちの学年を見て下さいましたが、どのクラスでも活気があって先生は人気者で、生徒たちも先生を喜ばせようと勉強や運動会も頑張って良い成績を出していました。

私は恩師のように、生徒に良い影響を与える教師になりたいです。生まれ育った地域ですので、教育事情や環境はよく知っています。一度地元を出て経験してきた多くの知見で、生徒たちに必要なアドバイスができる教師になりたいと思います。よろしくお願いします。

志望動機にNGを出す先生

この例文は実際によくありがちなNG例です。

NGな点として注意したいのがエピソードに具体性がないということです。話の中から良い先生、指導力のある先生だったのだろうということはわかりますが、具体的にどのような影響があるのかがわかりにくく、目指す教師像が採用側からはわかりにくいのです。

子供たちにとって教師は最も身近な大人であり、憧れの対象になりやすいのですが、それだけに自分の中で「伝わっているだろう」と思ってしまいがちです。客観的な視点で見た時に伝えたい情報がしっかり入っているのか、また具体性があるのかを考えることが大切です。

コツとしては「生徒の気持ちを汲んでくださって、進路や思春期の様々な相談に乗ってくれました」とまとめてしまっている内容をエピソードにすることです。具体的なエピソードが具体的な先生像を描かせて「生徒の気持ちを組む、様々な相談に乗れる先生になりたい」と言外に語ってくれるのです。

教員の志望動機の例文2:公立校の場合(NG例の修正)

私が教員を志望するのは、生徒に良い影響を与える教師になりたいからです。

私の中学校の頃の恩師は、生徒たちとたくさん会話をしてくれる先生でした。恋に悩む子にラブレターの添削をしてくれたり、運動会では業務の隙を縫って最前列で応援団になってくれたり、ぶ厚い進路の本を一緒に遅くまで見てくれたりと、生徒と常に近くし、様々な気持ちや悩みを共有して相談に乗ってくれました。その先生は持ち上がりで3年間私たちの学年を見て下さいましたが、常にクラスは活気があり、生徒たちも先生を喜ばせようと試験や運動会でもよい成績を出していました。

私は恩師のように、生徒に良い影響を与える教師になりたいです。生まれ育った地域ですので、教育事情や環境はよく知っています。一度地元を出て経験してきた多くの知見で、生徒たちに必要なアドバイスができる教師になりたいと思います。よろしくお願いします。

NGの志望動機を修正してGOODを出す先生

こちらは、先ほどのNG例の志望動機を修正した例文です。修正点としては、恩師の生徒への関わり方に具体的な内容を挿入したくらいです。いわゆる学校業務の内外で、多くの時間を生徒と共にする先生の生徒への関わり方が、生徒たちを刺激し、勉強やその他の活動に良い影響を与えたのだろうと考えることができます。

その接し方の是非を問うわけではありませんので、どのような教師像を持って教員になりたいと考えているのかが伝われば十分です。

最後に「自分にできること」として、「地元を離れたからこそ伝えられる知見がある」というアピールは評価しやすいポイントです。特に最終学年であったり、進学校などの場合は地元にこだわることで視野が狭くなることも多く、経験をもって伝えることができる材料を持っていることが指導上の強みになります。

教員の志望動機の例文3:私立校の場合

私が貴校を志望するのは、中高一貫しての「科学を楽しむ生徒の育成」という教育方針に強く共感できたからです。

私は高校の時に物理部に所属していましたが、車のエンジンや自家発電の仕組みを研究しました。学んでみると身の周りにあるものは科学の結晶で面白いものばかりだと発見と驚きの連続になりました。それが高じて大学では機械工学を学ぶに至りました。学校は私にとってはまさに愛する科学との出会いの場でした。

科学は知識がなくとも扱えるようになると便利になり、私たちの生活を豊かにしてくれていますが、人類の叡智である科学を知り、見つけ、楽しむことは、先人たちへの敬意を育て、また社会への関心を高めることに繋がると考えます。物理教諭として科学をより楽しめる生徒の育成は、真に社会性のある生徒を育てるためにも必要だと考えており、そのために貢献してきたいと思います。よろしくお願いします。

ここがGOODと伝える先生

私立校の場合は学校の理念や教育方針といった特徴がハッキリありますので、比較的志望動機は作成しやすいという特徴があります。

この例文では「科学を楽しむ生徒の育成」という教育方針への共感が志望動機であることを伝えていますが、「愛する科学」などの表現からも「科学が好きで大事に考えている」様子が伝わります。

最後には自分の教育に関する考え方を語っており、科学を楽しむことについて「先人たちへの敬意」「社会への関心」を育て「真に社会性のある生徒を育てるために必要」としています。熱意があり、教員として何を生徒たちに提供してくれるかイメージしやすいため評価されるでしょう。

なお、就職活動では学校側を指す言葉として、エントリーシートや履歴書などの書類上では「貴校」、面接など対面して話す場では「御校」を使います。

教員の志望動機作成で気をつけないといけないこと

教員の志望動機は学校や生徒に対して自分がどんな価値を提供できるのかを語ることが大切です。教員の志望動機を作る際に、気をつけないといけない点を紹介します。

志望動機で言ってはいけない三つのポイントを述べる女教師

志望動機ではネガティブなことは言わない

教員の志望動機は様々にあると思いますが、志望動機の中で「部活動の顧問は好きではないですが」や「PTAづきあいなどは苦手ですが」など、ネガティブな要素があったとしてもそれをあえて言う必要はありません。就活ではそれらは謙遜ではなく、自分の価値を落とす発言なので避けましょう。

待遇面を強調する志望動機にしない

公立学校の教員は公務員になりますので、その待遇の安定感は志望者の多くにとって魅力なのは間違いありません。しかし、採用側が聞きたいのは「教員という職に感じている魅力や展望」であり、待遇の話ではありません。「割に合わないなら辞める」という姿勢の人が教職に就くと、最終的に迷惑を被るのは生徒たちだからです。

志望動機では教育論ではなく自分の教育理念を語る

志望動機の中で、教育に関する様々な問題に触れて自分の意見を述べる人がいます。それが志望動機として適切な場合もありますが、現状を批判して「教育とはこうあるべき」というような教育論を専門的に現場で務めてきた人の前で展開するのは失礼になります。自分は「このような教育をしたい」という教育理念をもって語り、学校や地域の教育方針とマッチすることを示すのがベターです。

教員の志望動機では教育に関する経験を入れた方が良い?

教員の志望動機では、「自分が教育に携わった経験などを入れると良い」という話もありますが、必ずしもこだわる必要はありません。

教育に携わった経験を入れるのが良いと言われるのは、それが教員として働く姿をイメージさせやすいからではありますが、志望動機にそぐわないのであれば無理に入れると全体の辻褄が合わなくなってしまいます。志望動機でなく自己PRなど自由な内容ではエピソードとしてアピールしやすくなりますので入れてみても良いでしょう。

志望動機の作成は、まず自分の志望動機が最優先で、経験から志望動機に合うエピソードを展開するのが無難です。エピソードが先で志望動機をそこからひねり出すような本末転倒な作り方にならないように注意してください。

教員の志望動機作成のポイント

教員の志望動機を作成する際のポイントには以下のようなものがあります。志望動機を書き終えたら、意図することがちゃんと伝わる志望動機になっているか確認してみてください。

志望動機では結論を先にする

「起承転結」の形で志望動機を語るのではなく、最初に「結」にあたる志望動機の結論を伝えるようにします。その後に続く内容によって、冒頭の結論に説得力が出てくるようにフォローしていきましょう。

どうしてその学校を選んだのかを書く

一般的な就活では企業を選んだ理由が志望動機になりますが、教員を目指す場合もどうしてその学校を選んだのかという理由が必要です。公立学校なら自治体の教育委員会のホームページに、また私立校なら学校のホームページなどに学校の特色や教育方針などが示されている場合が多いですので参考にすると良いでしょう。

教員という仕事を通して何をしたいのかを書く

教員という仕事を通し、「生徒たちを教育したい」というだけでは不十分です。具体的に教育を通して何をしていきたいのか、また教員として学校や地域の中でどのような役割を果たしていきたいのかを明確に示すと良いアピールになります。この時も、「自分がやりたい」ことだけでなく「相手に提供できる価値」を考えてのアピールが大切です。

志望動機作成で重要な三つのポイントを説明する男性教師

教員の志望動機はアピールするポイントを整理して書こう

教員の志望動機は、自分が学校や生徒に何を提供できるのかが非常に重要です。教育現場では、生徒たちに対して知識や技術を教えるだけでなく、個性や能力、人間性や社会性を育成することが求められます。教員志望者は、自分自身の経験や能力を活かし、生徒たちの成長と学びに貢献するための具体的なアイデアや方法を持ち合わせていることが望ましいです。例えば、生徒たちが自己肯定感を持ち、自分の長所や強みを見つける手助けをする、授業内容を工夫して生徒たちの興味を引き出す、学習に必要な環境やツールを整えるなど、様々なアプローチが考えられます。また、教員は生徒たちにとってのロールモデルでもあります。教員自身が持つ人間性や価値観が生徒たちに影響を与えることもあります。したがって、教員志望者は自分自身を成長させ、生徒たちに良い影響を与えることが求められます。