起業とは何か メリットとデメリット、向いている人の特徴を解説

起業を考えている人向けに、個人事業主・合同会社・株式会社の違い、経費や社会保険のリアル、向いている人・向いていない人の特徴を具体的に解説。起業適性を確認できる簡易チェックも掲載。

起業とは何か メリットとデメリット、向いている人の特徴を解説

起業とはどういうことか

「起業」とは大きく分けると「個人事業主になる」か「会社(法人)を作る」かを指します。個人事業主には、税務署に開業届を提出するだけで費用なしにスタートできる手軽さがあります。法人には株式会社・合同会社などがあり、社会的信用や節税面での優位性がある一方、設立費用(合同会社で約10万円、株式会社で約20〜25万円)と手続きの手間がかかります。

起業のスタイルは一人でこなすフリーランスから、従業員を抱える事業主、共同経営まで様々です。「事業に責任をもって取り組む立場に立つ」ということが起業の本質であり、その責任範囲や規模は事業の形態によって異なります。

中小企業庁「小規模企業白書(2025年版)」によると、2023年度の開業率は3.9%、廃業率も3.9%と横ばいで推移しています。また開業費用の中央値は550万円(2023年度、日本政策金融公庫調査)と2013年度以降で最低水準となっており、以前よりも起業のハードルは下がっています。それでも年間の開業者に対して廃業者が相応数存在することは、準備の重要性を示しています。

起業をすることによるメリットは4つ

起業のメリットを正確に把握しておくことは、会社員を続けるか・起業するかの重要な判断材料になります。

頑張った分だけ収入が伸び、仕事にやりがいを感じやすくなる

会社員は成果に関わらず給与がほぼ固定されていますが、起業すれば事業の成果が直接収入に反映されます。「なぜこの仕事をしなければならないのか」という疑問が生まれにくくなり、自分が選んだ事業に取り組む充実感が得られます。ただし、収入の上振れと同様に下振れのリスクも自分で引き受けることになる点は認識しておく必要があります。

スケジュールの自由度が上がる

事業の性質にもよりますが、取引先との信頼を損なわない範囲で、自分の都合に合わせて休日や勤務時間を調整しやすくなります。特に個人事業主・フリーランスとして仕事を請け負う形態であれば、この自由度はさらに高まります。一方で、顧客対応や緊急対応が必要な業種では、会社員時代よりも拘束時間が長くなるケースも少なくありません。

事業に関連する費用を経費として計上できる

通信費・交通費・接待費など、事業活動に関連する支出の多くを経費として計上し、課税所得を減らすことができます。個人事業主より合同会社・株式会社のほうが経費として認められる範囲が広く、法人化することで節税効果が高まる傾向があります。ただし公私混同は税務調査の対象になるため、事業用途であることを明確にしておくことが前提です。

定年がなく、健康が続く限り現役を続けられる

雇用契約に基づく定年退職の概念がないため、事業と健康を維持できる限り引退時期を自分で決められます。ただし会社員の厚生年金とは異なり、個人事業主は国民年金のみとなるため、老後の資産形成を自分で計画する必要があります(法人化すれば厚生年金への加入が可能です)。

起業することはデメリットもある

起業のデメリットを理解することは、リスクを事前に把握して対策を立てるために欠かせません。

失敗も成功もすべて自己責任になる

事業で成果を出せれば豊かな生活につながりますが、失敗すれば借金を背負うリスクもあります。個人事業主の場合、事業の負債は個人資産(住宅・預金など)にも及ぶ無限責任となります。これに対し、合同会社・株式会社の出資者は出資額の範囲内でのみ責任を負う「有限責任」が適用されるため、事業規模が大きくなるほど法人化によるリスク限定が重要になってきます。

有給休暇・労災補償などの会社員向け保障がなくなる

会社員には、年次有給休暇・健康保険の傷病手当金・労働災害補償・退職金などの制度が労働契約に組み込まれています。起業するとこれらを提供する側になり、特に事業が小規模なうちは自分自身への保障がほとんどない状態で働くことも多くなります。就業不能保険・所得補償保険などの民間保険で対策するか、法人化して社会保険に加入する方法が現実的な選択肢です。

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起業直後は会社としての社会的信用がほぼゼロからのスタートになる

個人として評価されていても、法人としての実績・信用は創業時点ではほぼありません。その影響は、取引先開拓の難しさ、金融機関からの融資審査の厳しさ、個人向けローンやクレジットカードの審査不利など、複数の場面に出てきます。個人事業主より合同会社・株式会社のほうが社会的信用は高く、法人登記の公開情報が信頼の担保になります。取引先が「法人のみ」という条件を設けているケースもあるため、ターゲットとする取引先が個人事業主との契約を認めているかを事前に確認することが重要です。

起業に向いている人・向いていない人

起業の向き・不向きに絶対的な法則はありませんが、成功している起業家には共通する傾向があります。自分の状況と照らし合わせる参考にしてください。

専門的な技術・知識・資格を持っている人は起業で有利

中小企業庁「2023年版中小企業白書」によると、創業時に持っていた強みとして「業界に関する知識・経験」を挙げる経営者が最多でした。IT・医療・会計・建設・飲食など、専門性が高い分野の知識や資格保有者は、差別化が図りやすく安定した収益を見込みやすい傾向があります。逆に特別なスキルがない状態での起業は、ある程度の売上は得られても長期的な競争優位を維持するのが難しくなりがちです。

自分で考え、判断することに苦痛を感じない人

起業すると、取引条件・採用・投資判断など、あらゆることを自分で決める必要があります。「判断をすること自体がストレス」という人には向いていません。一方、自分で考えて動くことにやりがいを感じられる人は、起業の環境が合いやすいです。

コツコツと継続できる人

起業に華々しいイメージを持つ人は多いですが、実態は地道な努力の積み重ねです。顧客獲得・品質管理・経理・マーケティングと、毎日多岐にわたる業務を継続してこなす必要があります。継続力のない人は、一時的に成果が出ても事業が伸び止まるリスクがあります。

前向きに考え、行動できる人

事業をしていれば必ず壁にぶつかります。失敗をどう受け止め、次にどう動くかが事業の継続性を左右します。特に従業員を抱える場合、経営者の姿勢が組織全体のモチベーションに直結します。

心身が健康であること

事業の立ち上げ期は特に心身への負荷が大きくなります。「会社勤めが辛いから起業する」という動機自体は否定されるものではありませんが、心身が不安定な状態での起業は判断力の低下や体調悪化のリスクを高めます。よほどの専門スキルがある場合を除き、起業の前に健康状態を整えることが現実的です。

自分が起業に向いているかどうか、簡単なチェックで確認できます。

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起業は若いうちにするべきは本当か

「若いうちに起業すべき」という意見には、体力面と失敗後の立て直しのしやすさという面で一定の合理性があります。実際、中小企業庁のデータでは29歳以下の起業者数が増加傾向にあり、インターネットを活用した低コスト起業が普及したことで若年層の起業環境は整備されています。

一方で、事業は「ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)」のもとで行われるべきものです。取引先・従業員・顧客への責任を考えると、「うまくいかなければすぐやめられる」という感覚での気軽な起業は問題があります。若いうちに起業する場合、経験・資金・人脈・信用の不足をどのように補うかを具体的に考えたうえで計画することが、事業の継続性を高めます。

開業費用の少額化が進んでいる今(2023年度の中央値は550万円)、まずは副業・業務委託・フリーランスからスタートして実績を積み、リスクを段階的に取っていくアプローチも有効です。年齢にかかわらず、準備が整った状態で起業することが長続きする事業の土台になります。

起業をするなら家族の了解を得ること

起業において、家族の理解と協力を得ることは実務的な理由からも重要です。

事業用物件を借りる際の連帯保証人、資金調達で必要になる保証、万一の事業失敗時の生活負担など、家族は無関係でいられない場面が多く出てきます。また、精神的な面でも、家族が「頑張れ」と応援してくれる環境と「やめたら」とプレッシャーをかけてくる環境では、経営者のパフォーマンスに大きな差が出ます。

起業の準備段階から家族に事業の概要・リスク・見通しを正直に共有し、理解を得ておくことが、事業の継続性とリスク管理の両面で有効です。「自分のことは自分で決める」という考えは独立志向として理解できますが、起業は周囲を巻き込む意思決定であることを認識しておきましょう。

起業は憧れだけでは成功しない。メリット・デメリットをよく理解して準備しよう

起業は制度的にも環境的にも整備が進み、以前より取り組みやすくなっています。インターネットを活用した小規模なビジネスなら開業費用を大幅に抑えることができますし、創業支援を行う自治体・金融機関・専門家のサポートも充実してきています。

ただし、開業率と廃業率がほぼ同じ水準(2023年度ともに3.9%)であることが示すとおり、起業した事業の多くが長続きしない現実もあります。特に小規模事業者では、赤字状態での廃業も増加傾向にあります(中小企業庁、2024年度データ)。

メリット・デメリットと自分の現状を冷静に照らし合わせ、不足している部分を計画的に補ってから起業することが、事業を長く続けるための基本姿勢です。