転職活動は周囲に波風を立てないようにしたいもの
在職中の転職活動には、現職への配慮と転職先への第一印象づくりを同時に進める難しさがある。採用担当者から見ると、働きながら書類選考・面接・内定後のやり取りを両立できる応募者は、それだけで「段取り力」「計画性」「責任感」を示せる立場にある。一方で、現職を軽視したり退職の切り出し方を誤ったりすると、入社前から評価を落としかねない。採用現場で重視される8つのマナーと、転職者がやりがちなNG行動との対比を整理し、周囲に波風を立てずに転職を成功させるコツを解説する。
結論から述べると、在職中の転職活動で評価されるのは「強い信念」だけでなく、現職への配慮・公的ルールに沿った段取り・採用担当者の判断基準を踏まえた行動である。以下のセルフチェックリストで、自分の準備状況を先に確認しながら読み進めてほしい。
転職活動のマナーが重要視される理由とは
新卒の就職活動に対して、中途採用では「社会人としての常識が身についている前提」で評価が行われる。採用現場では、スキルや実績が同程度の候補者が並んだとき、最終的に採否を分けるのは配慮・段取り・誠実さといったマナー面であることが多い。
厚生労働省「令和2年転職者実態調査」によると、転職活動を始めてから離職までの期間は「1か月以上3か月未満」が28.8%で最多、「1か月未満」が18.3%、「転職活動期間なし(内定後すぐ離職)」が23.6%を占める。働きながら転職活動をする人は、平均より短期間で内定を得る傾向がうかがえる。採用担当者から見ると、在職中でも効率的に活動できる応募者は「時間管理能力と責任感が高い」と映り、書類段階でプラスに働く場面は少なくない。
一方で、採用担当者への調査では、現職の備品で転職活動を行っていた・退職交渉が長引き入社日を何度も後ろ倒しにした・面接直前のキャンセルが多い、といった行動は入社前の評価を大きく下げる要因として共通して挙げられる。在職中だからこそ、どう動くかが評価の対象になると意識したい。
1.現職を辞める覚悟を固めてから転職活動を始める
在職中の転職活動で最初に問われるのは「本気度」である。「良さそうな会社があれば転職してもいい」という軽い気持ちで動くと、現職の業務が疎かになるだけでなく、内定獲得後に「やはり辞めない」と辞退する結果になりかねない。内定辞退は転職先企業に大きな迷惑をかけ、同業界内であれば将来的な人脈にも悪影響を及ぼす。

社会人として責任ある行動をとるためにも、「転職先が決まったら現職を辞める」と覚悟を固めてから活動を始めるのが原則となる。現在の職場にも転職先の職場にも失礼のないよう、自分の転職の軸と判断基準を言語化しておきたい。
採用現場では、面接での受け答えから「まだ迷っている候補者」は見抜かれる。志望動機が抽象的であったり、現職を続ける可能性を匂わせたりすると、面接官の立場では辞退リスクが高いと判断され、同点なら他候補者を優先する流れになりやすい。
NG行動と正しいアプローチ:「情報収集だけのつもりで応募してみる」「複数内定を取ってから現職と比較する」はNG。正しくは「転職の軸を決めて候補企業を絞り、内定が出たら迷わず決断する」である。
2.在職中の転職活動は3〜6か月前から計画的に進める
転職活動の一般的な期間は、準備・応募・面接・内定承諾・退職交渉・入社までを含めて3〜6か月が目安である。現在進行中のプロジェクトや有給休暇の残日数を踏まえ、無理のないスケジュールで転職先への入社日を設定するとよい。
離職後に活動する場合も、空白期間が3か月を超えると「何か事情があるのでは」と書類選考で疑問を持たれやすくなる。特別な理由がないならば、退職後3か月以内に入社できるよう動くのが望ましい。
採用担当者から見ると、応募時点で「入社可能時期」を具体的に答えられる候補者は計画性があると評価される。逆に「いつでも大丈夫です」と曖昧に答える人は、現職の引き継ぎ見通しが立っていないのではと懸念される。内定から入社までは1〜3か月以内が一般的とされ、4か月以上先になると内定取り消しの懸念も生じる。
NG行動と正しいアプローチ:「期限を決めずに長期的に応募し続ける」「応募先ごとに入社日が異なる回答をする」はNG。正しくは「入社希望日から逆算し、事前準備・応募・面接・退職交渉の期間を割り振る」である。
3.会社のPC・メール・スマホで転職活動はしない
在職中の転職活動で最もトラブルにつながりやすいのが、現職の備品を使った転職活動である。会社のPC・メール・Wi-Fi・スケジューラーは監査対象になっていることが多く、転職サイトの閲覧履歴や応募メールが発覚すれば、社内での立場が一気に悪化する。業務時間中に転職活動を行うこと自体、職務専念義務違反に該当しうる。
採用現場では、応募者から現職の社用メールで連絡が来るケースは稀にあるが、そのほとんどは面接官の間で「情報管理意識が低い候補者」として共有される。入社後に自社の情報を外部に持ち出すリスクとも重ね合わせて見られるため、実務能力とは別の減点対象になる。
採用担当者が実際に見ているポイント:応募書類の送信元アドレス、面接中のスマートフォン操作、SNSでの転職活動の示唆など。情報管理は中途採用で強く評価される要素である。
NG行動と正しいアプローチ:「昼休みに社用PCで求人を検索する」「会社のカレンダーに非公開予定として面接を入れる」はNG。正しくは「私物のPC・スマートフォン・メールアドレスを使い、会議室ではなく社外で面接を受ける」である。
4.履歴書・職務経歴書は職務経験が伝わるよう丁寧に作成する
新卒の就職活動に対して、中途採用の履歴書・職務経歴書で問われるのは「何を経験し、何ができるか」である。職歴の長さや企業名よりも、関与したプロジェクトの規模・担当領域・成果・身につけたスキルを時系列と業務領域で整理できているかが評価を左右する。

時期や業務ごとに項目を区切り、見出しと箇条書きで整理した職務経歴書は、それ自体が事務処理能力・要約力の見本になる。志望企業ごとに強調するスキルを並び替えるなど、応募理由と職歴の一貫性をつけるのがコツである。
採用担当者から見ると、1枚あたり読む時間は平均1〜2分。冒頭の職務要約3〜5行で「何ができる人か」が伝わらない書類は、続きを読まれないまま書類選考で落ちる典型パターンとなる。
NG行動と正しいアプローチ:「入社年月と役職だけ羅列する」「全応募先に同じ職務経歴書を出す」はNG。正しくは「冒頭に職務要約+強みを3点記載し、応募先に合わせて重点領域を調整する」である。
5.面接は誠意と社会人マナーをもって臨む

転職の面接でも、新卒の面接と同じく応募者は「判断される側」である。社会人経験があるからといって横柄な態度で臨むと、それだけで不採用になることも少なくない。学生時代には得られなかった経験を積んだことで、社会人としての常識とマナーを十分に備えたことを面接官に示すためにも、誠意ある態度と丁寧な言葉遣いで臨むべきである。
面接の受付・入退室の基本マナー
- 約束時間の10分前に到着し、5分前に受付を済ませる
- 入室時はドアを3回ノック、「失礼いたします」と一礼して入る
- 着席は面接官に促されてから。「失礼します」と断って座る
- 退室前に「本日はお時間をいただきありがとうございました」と改めてお辞儀をする
- 会社を出るまで油断せず、スマートフォン操作や飲食はしない
近年はオンライン面接の比重が増え、通信環境・背景・マイク音量・カメラ目線までが評価対象になる。採用現場では、面接開始直後の音声トラブルや、背景に生活感がありすぎる環境は「準備不足」と受け取られやすい。事前に5分以上前からログインし、接続確認をしておきたい。
面接や受付の担当者が自分より若かったり高圧的であったりしても、低姿勢で接することが重要である。受付担当の報告が面接官に共有されるケースは珍しくない。
NG行動と正しいアプローチ:「社会人経験が長いから敬語が多少崩れてもいい」「面接官の前職や年齢を気にしない」はNG。正しくは「一次面接から最終面接まで、すべての関係者に対して同じ丁寧さで接する」である。
6.退職理由は前向きな応募理由・志望動機に言い換えて伝える
現職を辞めて転職を希望する以上、転職先の面接で前職を辞める・辞めた理由(転職理由)は必ず尋ねられる。「人間関係が辛かった」「希望する仕事をさせてもらえなかった」「忙しすぎた」と否定的に答えると、採用担当者から見ると「同じ状況になればまた辞めるのではないか」と定着懸念を持たれてしまう。

ネガティブ理由のポジティブ変換の具体例
- 「人間関係が辛かった」→「多様な価値観のメンバーと協働できる環境で成長したい」
- 「忙しすぎた」→「より成果の質を高められる環境で専門性を深めたい」
- 「希望する仕事をさせてもらえなかった」→「これまで培った〇〇の経験を、御社の△△領域で活かしたい」
- 「給与が低かった」→「成果に応じた評価制度のもとでキャリアを築きたい」
現在の職場や以前の職場を決して悪く言わず、「自分の見識を広げたい」「この分野を極めたい」という前向きな表現で転職先の魅力を述べるよう心がけたい。事実そのものを曲げる必要はなく、同じ事実を「次のキャリアに何を求めるか」という未来志向で語り直すのがコツである。
面接官の立場では、嘘や過度な美化よりも「事実を前向きに再定義できる力」そのものが評価対象になる。ネガティブな経験を経て何を学び、次にどう活かすかまで語れる応募者は、入社後も自走できる人材と判断されやすい。
7.在職中はスケジュール管理と有給活用で両立する

新卒の就職活動や離職後の転職活動と比べると、在職中の転職活動は時間的制約が大きい。中途採用のために土日や平日夜間に面接を設定する企業もあるが、平日日中にしか対応しない企業も多い。有給休暇・半休・時間休を計画的に使い、現職に迷惑をかけずに転職先の都合に合わせる工夫が求められる。
採用現場では、面接日程の調整を何度も変更する応募者は「入社後も時間管理が甘い」と判断されやすい。面接調整メールへの返信が遅い、直前のリスケが続くといった行動は、採用担当者への調査でも「実績が良くても採用を見送る一因」として共通して挙げられる。
近年はオンライン面接で柔軟に対応する企業も増えており、昼休みや始業前を活用できるケースもある。応募時に「在職中のため平日夜間かオンラインでの面接を希望」と一言添えるだけで、日程調整がスムーズになることは多い。
スケジュール管理能力そのものが選考で問われるのが、在職中の転職活動である。面接日程の決定連絡には24時間以内に返信するのを目安にしたい。
NG行動と正しいアプローチ:「現職の予定が読めないから面接日の確定を先延ばしにする」「有給取得を渋って面接を平日夜間に集中させる」はNG。正しくは「直近2か月の業務繁閑を先に把握し、有給・半休・オンライン面接を組み合わせて面接可能枠を複数提示する」である。
8.転職先が決まったら内定承諾後すぐに退職を伝える
「まだ先のことだから」「居心地が悪くなりそうだから」と、上司への退職の申し出を引き延ばす人は少なくない。民法上は、雇用期間の定めがない場合、退職希望日の2週間前までに伝えれば退職が成立する。しかし実務のマナーとしては、就業規則に定められた退職予告期間(一般的に1〜3か月前)を守るのが円満退職の前提となる。

退職を伝える正しい順序
- 転職先からの内定を正式に承諾する(内定承諾書の提出または承諾の意思表示)
- 直属の上司にアポイントを取り、口頭で退職の意思を伝える
- 退職日を上司と相談して決定する
- 退職願・退職届を提出する
- 引き継ぎ計画を作成し、後任への引き継ぎを進める
- 取引先や関係部署へのあいさつを行う
内定承諾前に退職を切り出すと、内定取り消しや条件不一致による辞退が起きた場合に職を失うリスクがある。採用担当者の本音としても、「転職先が確定する前に現職に退職を伝えた応募者」は、焦りからミスマッチな判断をしやすいと見られがちである。
引き継ぎをスムーズに行い、現在関わっているプロジェクトに支障を来さないためにも、内定承諾後は速やかに上司へ伝え、退職日までのロードマップを共有するとよい。同僚や取引先への伝え方・時期は必ず上司と相談してから決めるのがマナーである。
NG行動と正しいアプローチ:「内定が出る前に現職へ退職を匂わせる」「先に同僚に相談し、上司より先に情報が広まる」「退職日まで2週間を切ってから伝える」はNG。正しくは「内定承諾直後にアポを取り、直属の上司に真っ先に伝える」である。
9.引き継ぎと退職手続きで円満退職を目指す
在職中の転職活動でマナーが問われる最後の山場が、引き継ぎと退職後の公的手続きである。後任者への引き継ぎが雑だと、現職の評判が同業界に伝わり、将来的なキャリアにまで影響する。採用担当者への調査では「前職の同業他社から候補者の退職時の対応を耳にする機会がある」と答える企業は少なくなく、円満退職は遠回しに転職先での評価にもつながる。
引き継ぎで押さえたいポイント
- 担当業務・進行中案件・関係者リストを文書化する
- 手順書・マニュアルを更新し、後任者が単独で再現できる状態にする
- 取引先には上司と相談のうえ、適切な時期に後任者と合わせてあいさつする
- 繁忙期や大型プロジェクト進行中の退職は、可能な限り時期をずらす
退職後に必要な公的手続き
- 健康保険(任意継続・国民健康保険・転職先の健康保険のいずれか)
- 年金(厚生年金から国民年金への切り替え、または転職先での継続)
- 住民税(退職時期によって一括徴収・普通徴収が分かれる)
- 雇用保険の離職票受領(失業給付を受ける場合)
転職先にスムーズに入社するためには、現職の退職日と転職先の入社日の間隔を短く設計することが理想である。空白が1日でも生じると健康保険の切り替え手続きが必要になるため、入社初日の書類提出を円滑に進めるためにも、事前に転職先の人事担当に必要書類を確認しておきたい。
転職活動でやりがちなNG行動と正しいアプローチ
ここまでの内容を、転職者がやりがちなNG行動と正しいアプローチとして一覧で整理する。採用担当者から見ると、それぞれの場面でどこを見ているかも添える。
| 場面 | やりがちなNG行動 | 正しいアプローチ |
|---|---|---|
| 活動開始 | 情報収集のつもりで軽く応募する | 転職の軸を決めてから候補企業を絞る |
| 活動期間 | 期限を決めずにダラダラ続ける | 入社希望日から逆算し3〜6か月で終える |
| 情報管理 | 会社のPC・メールで応募する | 私物デバイスと個人メールで完結させる |
| 書類作成 | 全応募先に同じ職務経歴書を出す | 応募先ごとに強みの順序を調整する |
| 面接マナー | 社会人経験を理由に敬語が崩れる | 受付から退室まで一貫して丁寧に対応する |
| 退職理由 | 人間関係や労働時間を否定的に伝える | 前向きな応募理由に再定義して語る |
| 日程調整 | 何度も面接日を変更する | 有給と半休で可能枠を複数提示する |
| 退職報告 | 同僚に先に話す・2週間前に突然伝える | 内定承諾後に直属の上司へ最初に伝える |
| 引き継ぎ | 口頭のみで済ませて退職日を迎える | 手順書を作成し後任が再現できる状態にする |
在職中の転職活動に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 在職中と離職後、どちらで転職活動を進めるのが有利か
採用担当者から見ると、在職中のほうが「責任感」「時間管理能力」が見えやすく、書類段階で印象が良くなる傾向がある。また、離職中は経済面の不安から条件交渉を急ぎがちになる一方、在職中は腰を据えて比較検討できる。ただし業務との両立で活動が長期化しやすいデメリットもあるため、3〜6か月で終える計画を最初に立てるのがおすすめである。
Q2. 在職中の転職活動が会社に発覚したらどうなるか
在職中の転職活動そのものは違法ではなく、職業選択の自由の範囲内である。ただし、就業時間中の活動や会社備品の使用は懲戒の対象になりうる。発覚して最も問題になるのは法的リスクではなく、社内での立場や同僚との関係が悪化し、退職までの期間が気まずくなる点である。
Q3. 退職はいつ・誰に最初に伝えるべきか
原則として内定承諾後、直属の上司に口頭で最初に伝えるのがマナーである。時期は就業規則に従い、定めがない場合でも退職希望日の1〜3か月前が目安となる。繁忙期や大型プロジェクトの最中を避け、上司が比較的落ち着いているタイミングでアポを取りたい。
Q4. 面接を平日に設定された場合はどう対応するか
まずは有給休暇や半休を活用し、可能な枠を2〜3候補提示するのが基本である。難しい場合はオンライン面接・平日夜間・土曜面接に対応できるか応募時に確認しておくとよい。採用現場では、日程調整の柔軟さと返信スピードそのものが評価対象になる。
Q5. 転職支援サービスは使うべきか
在職中は応募書類の添削・面接調整・企業情報の収集を並行するため、転職支援サービスの活用は時間短縮に有効である。非公開求人の紹介や年収交渉の代行を受けられる場合もある。複数社に登録する場合でも、担当者との連絡を丁寧に行うことが、結果的に応募企業へのマナーにもつながる。
転職活動は、周囲にも気を配って行うのがマナー
在職中でも離職後でも、転職活動を行うためには体力と精神力が必要となる。特に在職中に進めるならば、周囲から快く思われない場面や、退職届がすぐに受理されない場面も起こりうる。それでも、採用担当者から見て評価される応募者になるには、強い意志だけではなく、現職への配慮・公的ルールに沿った段取り・NG行動を避ける冷静な判断がそろっている必要がある。
本記事で整理した8つのマナー(覚悟を固める/3〜6か月で計画する/会社備品を使わない/書類を丁寧に作る/面接で誠意を示す/退職理由を前向きに伝える/スケジュール管理と有給活用/内定承諾後に退職を伝える)と、円満退職のための引き継ぎ・公的手続きを押さえておけば、現職と転職先の両方に波風を立てずに次のキャリアへ進める。採用現場では、同じ実力の候補者が並んだときに最後の決め手になるのはマナーと配慮である。冒頭のセルフチェックリストを再度確認し、抜けている準備を埋めてから次のステップへ進んでほしい。


















