志望動機の締め方が選考に与える影響
志望動機を書き終えた後、最後の一文をどう締めるかで迷う就活生・転職者は多くいます。採用担当者の立場で多数の志望動機を読んでいると、書き出しより締めに課題のある文章が目立ちます。エピソードは丁寧に書けているのに、最後の一文が「よろしくお願いします」だけで終わっていたり、エピソードと関係のない内容で締められていたりするケースは珍しくありません。
心理学でいう「親近効果」の観点でも、最後に受けた印象は記憶に残りやすいとされています。書類選考で何十通もの志望動機を読む採用担当者にとって、締めの一文が弱いと全体の印象が薄まります。エピソードの質を締めの文章で活かしきれているかが、書類通過率を左右する要因の一つです。
志望動機の締め方で押さえるべきポイント
志望動機の締め方で採用担当者が確認しているのは、主に2点です。エピソードとの一貫性があるか、そして入社後の具体的なイメージが伝わるかどうかです。以下にポイントを整理します。
エピソードと一貫した内容で締める

志望動機の基本構成は「結論→エピソード→締め」です。この流れが崩れると、採用担当者は「結局何を伝えたいのか」と感じます。特に、エピソードで述べた内容と締めのアピールがかみ合っていないケースは、書類選考で減点対象になりやすいです。
たとえば化学メーカーの自社開発力に触れたエピソードを展開しておきながら、締めで「バイタリティあふれる職場環境で能力を発揮したい」と結んでしまうと、エピソードと締めが別々の志望動機に聞こえます。エピソードで語った内容を受けて、「だからこそ入社後はこうしたい」という流れで締めるのが自然です。
エピソードと締め方が合っていないNG例
「私が貴社を志望したのは将来性を感じたからです。(中略)貴社は最新の化学技術に基づいた健康・美容商品を自社開発しているという特徴があります。(中略)貴社のような、バイタリティあふれる仕事環境で自分の能力を発揮していきたいです。よろしくお願いします」
エピソードと締め方が一致している良い例
「私が貴社を志望したのは将来性を感じたからです。(中略)貴社は最新の化学技術に基づいた健康・美容商品を自社開発しているという特徴があります。(中略)貴社の強みである開発力を顧客に上手く伝えていく営業担当として貢献していきたいです。よろしくお願いします」
採用担当者から見ると、後者は「この企業でどんな仕事がしたいか」が明確であり、配属先や育成プランも検討しやすくなります。締めで職種や業務への言及がある志望動機は、通過後の面接でも話を広げやすいという実務的なメリットもあります。
志望動機と無関係な内容で締めない

志望動機の締めで突然、本題から外れた内容を挟むのは逆効果です。採用担当者が実際に困るのは、エピソードの展開とまったく関係のないアピールが最後に登場するケースです。「大学時代のミスコンで準グランプリでした」「御社の商品に致命的な欠陥があると考えます」など、志望動機の文脈から外れた記述は、全体の印象を損ないます。
「就職のためにこの企業を志望している」という目的を終始一貫して伝えることが、志望動機の大前提です。締めも同じ目的の延長線上に置きましょう。
締めは「言い切り型」にする

志望動機の締めは、婉曲的な表現より言い切りのほうが意志の強さが伝わります。採用担当者は同じ内容でも「〜かもしれません」「〜したいと思います」と書かれた文章より、「〜します」「〜を目指します」のほうが自信と覚悟を感じやすいと言います。
以下に言い切り型と曖昧表現の比較を示します。
×「私の英語力が活かせるかもしれません」
○「私の英語力を活かします」
×「私の特徴は友人たちが言うには誰に対してもハッキリと考えを言えることのようです」
○「私の特徴は、誰に対してもハッキリと考えを言えることです。友人たちからもそう評されています」
△「貴社に入社するまで、毎日英語のリスニングを訓練したいと思います」
○「貴社に入社するまで、毎日英語のリスニングを訓練します」
×「きっとIoTの分野で貴社のセンサー技術は高く評価されると思います」
○「きっとIoTの分野で貴社のセンサー技術は高く評価されるはずです」
「〜と思います」はゼロではありませんが、言い切れる箇所はできるだけ言い切ったほうが、文章全体の印象が締まります。言い切り型と婉曲表現を並べて読み比べ、自信が感じられるほうを選ぶと判断しやすいでしょう。
「よろしくお願いします」「がんばります」は必要か

「よろしくお願いします」を締めに入れるかどうかで悩む就活生は多くいますが、採用担当者の評価が変わることはほぼありません。入れても入れなくても選考への影響はないため、文字数や文章のリズムを考えて判断するのが実際的です。
「がんばります」も同様で、これ自体が評価を上げる表現ではありません。むしろ、「がんばります」で使う文字数があるなら、その企業でどう貢献したいかを一言加えるほうが、採用担当者には響きます。たとえば「貴社の営業チームでチームビルディングの経験を活かし、数字で結果を出したいと考えています」のように、具体性のある一文に置き換えるほうが効果的です。
志望動機の締め方の例文と採用担当者目線のコメント
実際の例文を見ながら、締め方の良し悪しを確認しましょう。
志望動機の締め方の例文1(地方レンタカー会社志望)
志望動機の締め方の例文1
私はガソリンスタンドでのアルバイトで接客の楽しさを知り、接客業を志望しました。
地方観光においてレンタカーの需要は高まっており、地元にUターン就職するにあたりレンタカーを入口として観光業に携わりたいと考えました。貴社は車種ラインナップに制限がなく、拠点の利便性も高い。実際に利用した際の接客レベルも高く、同業他社と比べて従業員教育に優れていると感じたため志望しました。
初対面の方にも物怖じせず接客できることは自分の強みです。貴社を通じて地域の観光発展に貢献できればと考えています。
この例文は、締め自体はエピソードの流れと大きく外れていません。ただ、採用担当者の目線では、書き出しの「なぜ接客業か」と「なぜレンタカー業か」、「なぜこの企業か」の3点がそれぞれ薄く、志望動機の軸が一本に絞れていません。締めが弱く感じるのは、その前の構成が整理されていないことが主因です。締め方の問題だけを直すより、「地域観光の発展に貢献したい→その入口として貴社の教育水準の高い接客に関わりたい」という一本の軸で全体を組み直すと、締めも自然に強くなります。
志望動機の締め方の例文2(IT系営業職志望)
志望動機の締め方の例文2
私が貴社を志望したのは、部活動で培ったチームビルディングの能力を活かせると考えたからです。
小学生からサッカーを続け、高校では全国大会に2回出場しました。3年次にはキャプテンとして70人の部員をまとめた経験があります。貴社では複数人の営業チームで活動し、顧客の都合に合わせてフレックスで動くスタイルだとOB訪問で伺いました。IT系の営業でそこまで顧客に合わせている企業は多くなく、高いサービス精神を感じたことも志望の理由です。
サッカーで学んだのは、目標のためにメンバーを先輩後輩関係なく動かすことの難しさと面白さです。貴社でも同じ姿勢で営業チームをけん引し、数字でも結果を出したいと考えています。
採用担当者から見ると、この例文2は構成の一貫性が取れており、締めが「チームビルディングの能力を活かす」というテーマと整合しています。さらに改善するなら、「数字でも結果を出す」という表現に、どの程度の目標感(例:入社2年以内にチームの受注数を前年比120%にする、など)があるとより具体的になります。ただし、現時点でも「また会ってみたい」と感じさせる水準の締め方です。
採用担当者に「もっと話を聞きたい」と思わせる締め方のパターン
書類選考を通過して面接につながる志望動機には、共通して「もっと話を聞きたい」と思わせる要素があります。採用担当者が実際に関心を持つ3つのパターンを紹介します。
入社に向けて既に行動しているパターン

「入社したい」という言葉より、すでに動き始めている事実のほうが入社意欲の高さを証明します。採用担当者は「この人は口だけではないか」を常に確認しています。行動が伴っていると、志望の本気度が伝わります。
「貴社がハードワークな環境と伺い、半年前からジムに通い体力を維持しています」
「業務理解を深めるため、ITパスポートの学習を開始し、来月受験予定です」
企業との接点から将来のビジョンを語るパターン
自社の事業や製品に対して具体的なビジョンを持っている応募者は、採用担当者にとって面白い存在です。自社の従業員よりも深く事業を考えているケースもあり、そういう人材は「もう少し話を聞いてみたい」と面接官に感じさせます。
「貴社のセンサー技術を活用し、福祉介護の現場に新たなソリューションを提案する仕事がしたいと考えています」
「日本一の保険マンを目指しており、権限委譲と教育機会の豊富な貴社で成長していきたいと考えています」
ただし、企業の事業と関係のないビジョンは逆効果になるため、自分の描くビジョンが志望企業の事業領域と結びついているか確認してから書きましょう。
他では得られない経験・能力をさりげなく示すパターン

資格や学歴でなくても、他の応募者にない経験や能力は採用担当者の記憶に残ります。ただし、志望動機の締めで突然関係のない特技を持ち出すのは逆効果です。エピソードとの文脈が保たれていれば、こうした要素は締めの説得力を高めます。
「大学から継続しているSNS運用でフォロワーが5,000人ほどおり、情報発信の仕事でも活用できると考えています」
「幼少期に5年間韓国で生活した経験があり、国際感覚は業務の中で強みになると思っています」
志望動機の締め方は、本文の質を活かす最後の一手
志望動機の締め方は、エピソードの質を採用担当者に届けるための最後の工程です。どれだけ丁寧に書いたエピソードも、締めで方向性がブレれば印象が薄れます。
締めに必要なのは3点です。エピソードと整合がとれていること、入社後の具体的なビジョンがあること、言い切りの表現で自信が伝わること。この3点を確認してから提出することで、書類通過の可能性が高まります。


















