給料の手取りを計算してみよう!支給額と控除額の項目とは
毎月もらうのが楽しみな給料。しかし、実際に自分が手にする額面は、税金など様々なものが控除され、支給額より少なくなります。給料は自分が生活をするための大事な収入源ですから、就活をする時は、支給額よりも手にする額面を意識する必要があります。給料から控除されるのは、どのようなものなのでしょうか。気になる世の中の人たちの平均給与と手取りを見ていきます。
手取りとは給料の支給から控除を差し引いた額のこと
給与明細書は、大きく分けて、一般的に「支給」と「控除」の二つに分かれています。手取りとは、毎月支給される金額から税金などを控除し、実施に労働者に支払われる残りの金額をいいます。つまり、給与明細に書かれている「支給」から「控除」を引いたものが、単純計算で手取りとなります。
就活の際、希望企業の資料に目を通した時、収入の目安となるのは給料の欄です。しかし、ここに書かれているのは支給額。実際に手にする手取りとは異なりますので注意をしてください。給料の欄に書かれている金額が、すべて自分の手元に渡る金額ではないことを覚えておきましょう。
年収とは?どうやって計算したらいい?
年収は、どのように計算したらいいのでしょうか。年収は、実際に自分が手にした金額ではなく、会社が労働者に支払った金額をいいます。手取り金額から年収を計算するのは正しいやり方ではありません。年収は、「手取り金額×12か月=年収」なのではなく、毎月の給与明細に書かれている「支給額×12か月」が正解です。
正確に年収を知りたい人は、毎年年末に会社からもらう「給与所得の源泉徴収票」を確認してください。「支払金額」欄に書かれている金額が正確な年収です。「手取り×12か月」で年収を計算すると、年収が低くなってしまいます。注意しましょう。
給料から引かれるのは税金・社会保険料・年金
ここでは、どんな項目が給料から控除されるのか、給料から控除される項目を見ていきます。給料からあらかじめ控除される額は、支給額の約20%~25%と覚えておくといいでしょう。手取りは、残りの約75%~80%となります。就活の際には参考にしてください。
所得税
所得税は、自分が働いて得た給料に課税される国に納める税金です。その年の1月1日から12月31日まで得た収入に対して課税されます。課税率は、収入が高くなるにつれ税率も高くなる累進課税方式で計算されます。
住民税
住民税は、都道府県に収める都道府県民税と市町村に納める市町村民税のことをいいます。前年度の所得に対して課税される所得割と、定額で課税される均等割りの二つの方法で徴収されます。ただし、未成年や生活保護受給者には納税の義務がありません。住民税には、ゴミの処理、福祉、教育など、住んでいる地域から受けている行政サービスを負担する意味があります。
雇用保険
雇用保険は、会社と労働者が決められた税率に従って国に支払う税金です。労働者が失業した時や働くことができなくなった時、失業した人が教育訓練を受ける時などに、雇用保険から給付金が支払われます。労働者の生活と仕事確保の安定のために徴収されます。
労災保険
労災保険は、労働者が通勤途中に事故にあったり、仕事が理由で病気になった時などに必要な保険金が支払われる制度です。会社は、パート・アルバイト含め、一人でも労働者を雇用したら、労働者をこの制度に加入させなければなりません。
健康保険
自営業者や無職の人が加入する国民健康保険に対し、会社に雇用されている人が加入する保険が健康保険です。病気や怪我をした際、必要な治療や検査を2~3割の負担で医療を受けられます。
介護保険
介護保険は、65歳以上の高齢者の介護をみんなで支えるための制度です。40歳以上になると保険料の支払い義務が発生します。介護が必要と判断されると、自宅でヘルパーに家事を手伝ってもらったり、最寄りの施設にデイサービス通ったり、様々なサービスを受けることができます。
厚生年金
厚生年金は、基礎年金と呼ばれる国民年金に、国民年金にプラスして支払う2つの階層で成り立っています。収入が高くなるほど納める金額は増えますが、年金を受け取る時も、納めた金額が高い人ほど受け取る金額が増える仕組みです。保険料は、労働者と会社が半分ずつ負担しています。
支給される給料の内訳は?
ここでは、給料明細に書かれている支給額の内訳を見ていきます。
基本給
会社と契約した給与の基本となる金額の事で、一般的に毎月固定されていることが多いです。残業や役職などの諸手当、個人の売り上げによってもらえるインセンティブは含まれません。基本給は、入社時に会社と個別に話し合って決める場合もありますが、多くは能力や年齢などから会社独自の基準で決められます。こんなはずじゃなかった…ということがないように、入社時にしっかりと確認しておきましょう。
時間外労働手当
労働基準法で決められた時間以外に労働をした時に支払われる手当てを言います。国が定めた法定労働時間は、「1日8時間、週40時間」。時間外労働手当は、これを超えて労働をする場合に会社が労働者に対し払います。休日や深夜に労働した場合に割増して支払われる賃金も含まれます。最近は、時間外労働手当の未払いが問題となり、対応に重い腰をあげる企業も増えてきました。時間外労働をした場合は、必ず申告するようにしましょう。
資格手当
働いている会社にとって有益と思われる資格を取得した時、または資格を取得しようとしたときに払われる手当です。資格を取得した時に一時金として払われる場合と、継続して支払われる場合があります。しかし、すべての会社が導入しているわけではないことを知っておきましょう。
住宅関連手当
会社の福利厚生の一環として支払われます。会社が家賃の一部を負担、または住宅ローンを補助することで、労働者の住宅費用の負担が軽減されます。支給される金額や支払基準は会社によって異なり、全額を支給するケースは珍しいと言えます。
交通費
交通費は、会社への通勤、または会社の指示で交通手段を用いて場所を移動し労働をした場合に、会社が支払います。ただし、労働基準法では、交通費の支払いを義務としていないため、支給の有無はもちろん、支給基準の定めも会社が独自に行います。「交通費は必ずもらえるもの」ではありません。入社の際は、就業規則や契約書をよく確認するようにしてください。
出張手当
出張手当は、会社から出張を命ぜられた場合に支払われる手当です。通常業務以上の負担を考慮し、1日数千円程度の支給をする会社が多いです。交通費同様、この手当も労働基準法で支払義務が定められていません。出張がある会社に入社する時は、支払いの有無や基準を確認しておいた方がいいでしょう。
年収の平均から考える今後の給料の手取り額
支払われる給料と手取り額の違いを理解したところで、世の中の人たちの年収を見ていきましょう。国税庁が発表した、平成27年度調査による各年代の「年収の平均」(男性)は以下のとおりです。(注1)
年代 | 手取り金額(千円) |
---|---|
20~24 | 2,707 |
25~29 | 3,834 |
30~34 | 4,507 |
35~39 | 5,095 |
40~44 | 5,674 |
45~49 | 6,258 |
50~54 | 6,696 |
55~59 | 6,521 |
60~64 | 4,792 |
65~69 | 3,779 |
上記の平均年収から、一般的に給料の支給額から控除される(健康保険料、厚生年金、雇用保険料、所得税)20~25%の額面を引いた、各年代別年収の手取り金額の平均は以下の通りです。
年代 | 手取り金額(千円) |
---|---|
20歳代 | 2,452~2,616 |
30歳代 | 3,600~3,840 |
40歳代 | 4,474~4,772 |
50歳代 | 4,956~5,286 |
60歳代 | 3,213~3,428 |
そして、上記の各年代別年収の手取り金額の平均をさらに12ヶ月に均等割りし、月給の手取り金額の平均額を算出してみました。
年代 | 手取り金額(千円) |
---|---|
20歳代 | 204~218 |
30歳代 | 300~320 |
40歳代 | 372~397 |
50歳代 | 413~440 |
60歳代 | 267~285 |
上記は平均額なので、一部の高額所得者に引き上げられていることを踏まえると、現実にこれだけの手取りをもらっているとは考えにくいので、多くの人の手取りは、上記表よりさらに低いと言えるでしょう。
独身世帯よりも多くのお金がかかる子育て世代の30~50歳代では、一見収入が多く見えても、教育費、各種保険、住宅ローン、食費が重くのしかかります。生活に余裕があると言える家庭は決して多くはないでしょう。
今後の経済発展も先行き不透明です。物価の上昇や人手不足などのマイナス要因を考えると、手取りが劇的に増えるような状況がすぐにやってくることはないと考えるべきです。もらえる給料を増やすというよりは、できるだけ、手取りを減らさない工夫が必要です。
給料の手取りを減らさないための工夫
もらえる給料が増えない、手取りが増えないのなら、できるだけ減らさないように努力するしかありません。ここでは、手取りを減らさないための工夫を考えてみました。
電気代・水道代・ガス代を節約する
ちりも積もれば山となります。ひとつひとつ地味に節約を心がけましょう。電気をつけっぱなしにしない、見ないテレビは消す、エアコンの温度設定を1度下げる、トイレはできるだけ外ですます、洗濯はできるだけまとめて回数を減らす、料理は強火ではなく中火を心がける、お風呂の蓋を利用するなどでも、まとまればひと月数千円の節約も夢ではありません。できることから始めましょう。
ふるさと納税をする
ふるさと納税は、自分が好きな市区町村を応援する仕組みです。寄付をすると、ほとんどの自治体から、特産物などのお礼の品が送られてきます。特定の施設の入場料が割引されることもあります。寄付したお金が税金から控除されるので、興味のある人は調べてみるといいでしょう。
不用品を売る
着ない服や靴、使わない家電製品・ゲームソフトなど、部屋の片隅で眠っているものがあるなら思い切って売ってしまいましょう。地域のフリーマーケットやSNS、スマホアプリを利用するなど、売る手段はいくつもあります。「えっ、こんなものが売れるの?」と期待していなかったものに高値がつくことだって考えられます。思い出も大切ですが、生活費を減らさないことはもっと大事です。
転職をする
自分に自信がある人は、思い切って転職を考えてみるのも一つの方法です。手取りがなかなか増えないのは、会社が正当に評価をしてくれていない可能性があります。同業他社の給与をよく調べ、「自分はもっと評価されていいはず」と思えるなら、ぜひ転職を検討してみてください。
給料の手取りは減らさない工夫と知恵が必要
給料を増やすことが難しい現代では、手取りを減らさない工夫と知恵が必要です。収入を増やす方法として副業が許される環境なら、それを試してみるのも一つの方法です。株式投資なら、必要な運用の知識をちゃんと勉強してから始めてください。自分の給料と手取りをしっかり把握し、上手にお金を管理していきましょう。
参考文献
- 注1:国税庁「第10表 事業所規模別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額」