奨学金が返せない時の相談窓口と返済方法

奨学金が返せないで困っている人に参考にしてほしい自分がとるべき対応方法をご紹介します。奨学金が返せないと一人で悩み続けてはいけません。困っている人には力になってくれる相談窓口があります。社会人として完済するまで責任を持って対応していきましょう。

奨学金が返せない時の相談窓口と返済方法

奨学金が返せない時はどうしたらいい?

奨学金制度を利用して大学を卒業し、いよいよ借りた奨学金を返済する立場になっても、奨学金を返済できずに困っている人がいます。

奨学金を返せない時は、どのような行動をとるべきなのでしょうか。誰にも相談できずに悩んでいる人に、奨学金が返せない時の対応についてご紹介します。

正しく理解していただくために、奨学金を貸与している国の機関、JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)が公表している資料に基づいて説明します。

奨学金を返せない人の割合は年々減っている

奨学金の返還が滞っている割合は年々減ってきてる

奨学金が返還されず返済が滞っている額の割合は、2015年年度末でわずか1.4%です。額にすると880億円なので、ちまたで言われているように多くの人が奨学金を返していないように感じますが、実はそうではありません。

奨学金を返していない人がたくさんいるように感じるのは、奨学金を返還する立場になった人が増えて、それに伴い返還しなければならない額が増えたためです。下の表が示すように、返還しなければならない額に対する滞っている返還額の割合は年々減っているのです。

奨学金を借りる人の「奨学金は借りたら返す」という意識の高まりと、返還すべき奨学金の回収に努力を重ねているJASSOの頑張りが成果となって表れていると言えるでしょう。

奨学金の延滞額及びその割合の推移

  返還しなければならない額(億円) 返還が滞っている額(億円) 返還が滞っている割合(%)
2004年 22,568 507 2.2
2005年 25,275 562 2.2
2006年 28,503 614 2.2
2007年 32,354 660 2.0
2008年 36,145 723 2.0
2009年 40,139 797 2.0
2010年 44,179 852 1.9
2011年 48,204 876 1.8
2012年 52,547 925 1.8
2013年 56,878 957 1.7
2014年 61,018 898 1.5
2015年 64,803 880 1.4

奨学金が返せなくなってしまったきっかけは?

「奨学金は借りたら返す」という当たり前のことについて周知が進む一方で、奨学金を返還していない人がいるのは事実です。奨学金が返せなくなったきっかけは、誰の身にも起こり得るほんの些細な事でした。(注1)

  • 忙しくて返済を忘れていた
  • 自分の収入が減った
  • 返済を手伝ってくれる親の収入が減った
  • 支出が増えた
  • 家族が病気になった
  • 延滞した額が増えてきた

ひとたび返済の遅延が始まると、遅れのない状態を取り戻すのはそう簡単な事ではありません。2015年1月の調査によると、奨学金が返せない最大の理由は「自分の収入が低いから」で、「遅延額が増えてきた」「親の収入が減った」が次に続きます。

このことから、奨学金を借りた人の収入が、奨学金を楽に返済できるほど増えていかない現実が見えてきます。奨学金を返済しなければならないことが分かっていても、自分または親の収入が増えず自らが親を経済的に支える立場になるなど、奨学金の返済に充てる原資を確保できない人がいるのです。

奨学金が返せないとうなるのか

日本社会全体で協力イメージ

奨学金制度は、勉強をしたいという高い意欲があるにもかかわらず、経済的な理由で進学をあきらめる人がいないように設けられた国の支援策のひとつです。

奨学金は、借りた人が返すことによって、次に借りたい人に回っていきます。つまり、奨学金が返還されないと、次に借りたい人にお金を貸す原資がなくなってしまうのです。

奨学金の原資がなくなると、奨学金を借りたい人に貸せなくなるので、その結果、新たに原資を集めなければならない事態に陥ります。奨学金はみんなが納めた税金が原資ですから、奨学金を必要とする人のために、さらなる課税をしなければならなくなります。

もしかすると、貸与する奨学金の額が頭打ちになったり、貸与する人数が限られたり、志の高い人への支援が先細りしてしまうなど、制度の後退が起きるかも知れません。

国が発展するために一番必要なのは教育です。日本の次世代を担う優秀な人材を育てるには、勉強することに高い意欲を持った人を埋もれさせてはいけないのです。

奨学金を借りた人は、返還する立場になったら忘れずに返済してください。奨学金制度を利用した人は、学業を続けられたありがたさをよく分かっているはずです。次の世代へバトンを渡しましょう。

奨学金が返せない時はJASSOに相談する

奨学金を返さなければならないことが分かっていても、どうしても返済ができない場合があるかも知れません。そのときは、一人で悩まずにすぐにJASSOに相談してください。JASSOでは、奨学金を返せない人のための対応を準備しています。ここでは、その準備について見ていきます。

返済期限猶予制度で返済期限を延ばす

返済期限猶予制度とは、返済期限を引き延ばしてくれる制度です。病気で働けない、職を失った、生活保護を受けた、産休や育児休暇中など、返済が難しい場合にこの制度を利用することができます。

返済を延ばせる期間は通算10年が限度です。特例もありますので、悩んでいる人はJASSOに相談してみるといいでしょう。2015年の承認件数は、298,000件。活用しないのはもったいないです。

奨学金の猶予申請に必要な書類や審査に通る理由の例文

減額返還制度で支払金額を減らす

減額返還制度とは、月々の割賦金を半分にする制度です。「16,000円は無理だけど、半分の8,000円なら払える」といったケースで利用が可能です。

月々の返済金額を減らすことで完済に至るまでの期間が延びてしまいますが、何よりも返済することが大事です。返済しないよりは少しでも返済した方がいいので、「返済は無理…」と諦めてしまわずに相談してみましょう。

奨学金が返せない事を放っておくと法的処置が施される場合がある

裁判所

奨学金の返済が滞っているにも拘らず、JASSOに何の相談もしない、度重なる催促があっても応じないなど誠実な対応をしない場合は、法的処置が行われます。

法的処置とは、裁判所に支払申し立ての訴訟を起こすことを言います。2015年に訴訟に発展したのは、5,432件です。多くは分割払いで和解となりますが、ここまで追い詰められることを望む人はいないでしょう。

もしも「奨学金なんて返済しなくてもなんとかなるさ」とたかをくくっているのであれば、それは良くない事です。長い人生の中で、自分の信用を自分の手で失墜させることに何の意味があるのでしょうか。返済が滞っても、社会人として完済に至るまで真摯な態度で対応してください。

奨学金を返済する必要がない給付型奨学金制度の導入が検討されている

経済的な理由で進学をあきらめざるを得ない状況にあっても、勉学への高い意欲と能力を持った優秀な人を支援する措置として、国は、奨学金を返済する必要がない「給付型奨学金制度」の導入を検討し始めました(注2)。一人でも多くの優秀な人たちを支援できるように、たくさんの人が利用しやすい制度の導入が望まれます。

対象となる学校

給付型奨学金制度の対象となる学校は、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校専門課程が考えられています。

対象となる世帯

対象となる世帯は、世帯をなす全員が住民税の納付を免除されている住民税非課税世帯、生活保護を受けている世帯など年収の低い世帯が対象です。

基準となる学力・資質

現在のJASSOが定める基準を目安に、各学校の学校長が推薦します。成績が良い人、学業の他にも優れた活動が認められる人、降りかかった課題を克服した経験がある人、進学に対する高い意欲や目的、未来の人生設計が描けているなどが該当します。

給付される額

国立大へ通う自宅生へは2万円、国立大へ自宅以外から通う学生および私立大へ通う自宅生は3万円、私立大へ自宅以外から通う学生には4万円の給付額が検討されています。

また、奨学金を借り過ぎて将来の返済に苦しむことがないような指導、無理のない返済計画を立てられるようなアドバイスも予定されています。

給付の方法

授業中の大学生

奨学金は毎月渡されますが、その際に、学業の成績と学生として不当な行いはなかったか、確認作業が行われます。

もしも、学業がふるわなかったり、学生にふさわしくない行動があったと判断された場合は、給付の停止と給付済み奨学金の返還を求められます。

制度の開始時期

給付型奨学金制度の本格的な実施は平成30年度です。しかし、一人でも多くの人の力になれるように、経済的に困窮している意欲ある学生に限り、平成29年度より先行して導入されました。

今後の課題

給付型奨学金制度は、その効果を検証しながら運用していきます。しかし、問題があれば状況に応じて見直しを図り、利用する人にとってより良い制度となるように努める必要があります。

また、給付型奨学金を利用した人が将来高い所得を得るようになったら、給付された奨学金を寄附という形で戻したり、次の世代へ還元する何かしらの仕組み作りが検討課題としてあげられています。

奨学金制度を受けている業績優秀者には返還免除制度がある

奨学金の貸与期間が終了してしまった人には関係のない話ですが、在学中に特に優れた業績が認められる学生に、奨学金の一部または全額を免除する制度があります。

2015年には、9,188名、122億円の免除が認められました。頑張って良い業績を残すと、将来奨学金を返還しなくても済むかも知れません。勉学への励みになる制度なので、現在奨学金制度を利用している勉強中の人だけでなく、これから奨学金制度を利用しようと考えている人は、知っておいてください。

JASSOの奨学金制度を利用した人から寄付金が届いている

2015年に奨学金制度を利用した人は132万人、学生の2.6人に1人です。奨学金制度が始まってから2015年までの73年間に奨学金を利用した人は、のべ1,203万人になりました。

そんな中、奨学金制度を利用して奨学金を返還し終わった人たちから、その制度のありがたさと次の世代へのエールとして、感謝の言葉とともに寄附金が届けられています。2015年度では、2億2千万円ものお金が集まりました。

この寄付金は、JASSO支援金という名目で、自然災害などで学業の継続が難しくなった学生を、もとの生活に戻して勉強を続けられる環境を整えるために、または、経済的に苦労したにも拘らず優秀な実績を残した学生を奨励し、その未来に投資する目的で優秀学生顕彰制度に使われています。

このことから、奨学金制度がいかに大切で、なくしてはいけない制度であることが容易に想像できます。勉強に意欲がある人たちには、お金の心配などしないで、いっぱい勉強して日本の豊かな国作りに貢献してほしいところです。

奨学金の返済は誠意を持って対応しよう

奨学金について相談してるスーツを着た女性社会人

貸与された奨学金が返せないで困っている人は、すぐにJASSOに相談してください。多くの先進国のように一日も早い教育の無償化が待たれますが、それはまだまだ先の話です。

JASSOが必ず相談にのってくれます。奨学金制度を利用した人は、社会人として、奨学金制度のありがたさを知る人として、完済に至るまで誠意を持って対応していきましょう。

参考文献