みなし残業のメリットとデメリット

皆さんは「みなし残業」という言葉をご存知ですか?お給料に残業代があらかじめ組み込まれている形の賃金体系のことです。「みなし残業」を採用する企業が最近増えています。この制度のメリットとデメリットについて詳しく学んでおきましょう。

みなし残業のメリットとデメリット

「みなし残業」とは残業代があらかじめ組み込まれているみなし労働時間制のうちの一つの賃金体系のこと

「みなし残業」とは、固定残業制度とも呼ばれ、提示された月給の中にあらかじめ一定時間分の残業代が組み込まれている形の賃金体系のことをいいます。法律にはみなし残業という言葉はなく、「みなし労働時間制」というのが正式な呼称です。

「みなし労働時間制」を採用する企業が増えている

現在の日本では、賃金は労働の対価=労働時間の対価と言っても過言ではないほどに労働は時間で考えられています。何故かというと、日本は一昔前までブルーカラー(技能工や生産工程作業、建築・土木作業、採鉱・採石作業、農林・漁業作業などの職種)の労働者がほとんどでした。

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しかし文明の発展と機械技術の進歩によりIT産業が普及するようになり、現在ではホワイトカラー(経営企画・管理・営業・事務職や、技術・専門職)の労働者の割合が増加傾向にあります。それに伴い、労働時間で見る賃金設定に少しずつ無理が生じ始めました。

ホワイトカラーのようなデスクワークを中心とする職種には、労働時間の長さでなく、出来高のような“成果”をもって報酬が決まるシステムのほうが理に適っているというのです。そういった経緯で、現在少しずつ「みなし労働時間制」を採用する企業が増えています。

「みなし労働時間制」は事業所外労働と裁量労働の2ケースある

「みなし労働時間制」は事業所外労働と裁量労働の2つに分けられます。事業所外労働とは営業職のような一日中外で顧客回りをする働き方で、労働時間を何時から何時までと正確にすることができません。

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このため、みなし労働時間制が採用されます。一方、裁量労働はエンジニアやデザイナーなど専門職に用いられ、業務を行う時間配分を個人に委ねるものです。こちらも労働時間を把握することができないので、みなし労働時間制が採用されるわけです。

みなし残業のメリットとデメリット

近年みなし残業を取り入れる企業が多くなっています。ここからは「みなし残業」のメリットとデメリットについて説明しますので、求職中の人は会社選びの際に役立つ情報の一つとして頭に入れておきましょう。

みない残業は企業側にも労働者側にもメリットがある

「みなし労働時間制(みなし残業)」を採用している企業は月給に一定時間分の残業代が組み込まれているため、時間外労働に対する割増賃金や深夜割増賃金、休日出勤に対する割増賃金を支給しないのが一般的です。

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みなし残業として決められた一定時間を超えた残業にのみ手当がつきます。たとえば月給の中に月20時間分の残業代が組み込まれているとする場合、月の残業時間が20時間以内なら残業手当は支払われず、20時間を超えた場合にのみ、その超えた時間分の手当てがつきます。21時間なら1時間分、25時間なら5時間分、30時間なら10時間分です。

「みなし労働時間制(みなし残業)」を採用する企業側のメリット

「みなし残業」として決められた時間内で労働者の残業が済めば残業代の算出をする必要がない

労働者側のメリット

残業時間が少なくても一定の残業代がもらえる。ノルマを時間内にこなせた方より、こなせなかった方の給料が多くなる不公平さを解消。

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みなし残業のデメリットはブラック企業のイメージがあるかどうか

ブラック企業=みなし残業というイメージを持たれやすいことが、みなし残業のデメリットと言えるでしょう。みなし残業を採用している会社はブラック企業だと言われたりしますが、必ずしもそうではありません。労働基準法は労働者の労働環境を守る最低限の法律です。労働基準法で定められた内容を満たしているのであれば会社が独自に就業規則で決めることは可能です。

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みなし残業であっても必ずしも違法ということではありません。定額の残業代が、労働基準法で決められた割増賃金以上の額であれば問題ないという裁判の判例もあります。また、違法か違法でないかは以下のことについて確認すると見分けることが出来ます。

みなし残業時間を超えた分の残業手当の支給があるか

「残業代を一定額に固定してそれ以上は一切払わない」という企業であれば、それは違法です。企業には労働者が決められた一定時間を超えて残業を行った場合、追加で残業手当を支払う義務があります。その義務を果たしていない場合、ブラック企業の可能性が高いです。

労働基準法の最低賃金を下回っていないか

たとえばある県の最低賃金が888円だったとして、みなし労働時間制を採用し、20時間のみなし残業と設定したとします。労働基準法で決められている一か月の所定労働日数は23日、一日の所定労働時間は8時間ですから…

  1. 基本給は888円×8時間×23日=163,392円
  2. みなし残業代は888円×1.25×20時間=22,200円
  3. 1と2の合計で最低賃金を算出します。163,392円+22,200円=185,592円

つまり、ある県の会社が20時間のみなし残業制を導入した場合、185,592円を下回ると労働基準法違反に触れてしまう可能性が非常に高いのです。企業側はこの点は十分に注意する必要があります。

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「みなし残業」はメリットとデメリット両方について理解を深めておく必要がある

「みなし残業」は上手に制度を活用すれば、企業側にとっても「労働時間の管理がしやすい」「残業代の計算が楽になり、残業代を抑えることが出来る」というメリットがあり、労働者側にとっても「残業時間が少なくても安定して一定の額受け取れる」というメリットがあります。

しかし、一方でブラック企業の温床となることもあり、実際の労働時間とあまりにもかけ離れたみなし労働時間を設定することは労働者が不満を募らせる原因となるので十分に注意が必要です。双方がメリット、デメリット両方について理解を深めておくことが重要です。