齟齬の意味を正しく使うために知っておくべき2つのこと

齟齬という言葉の意味やニュアンスは、わからないままビジネスシーンで使ってしまうと印象を悪くしてしまうことがあるため、注意が必要です。例文を参考にしながら齟齬の正しい意味やニュアンス、そして使い方を学び、齟齬を使いこなせるようになりましょう。

齟齬の意味を正しく使うために知っておくべき2つのこと

「齟齬」は読めても書けない使えない

社会人になると普段は使わない難しい言葉を使うことが増えてきます。これは、日常の会話よりもより正確に情報伝達をする必要があるからであり、職場という生活の場とはまた違った場の雰囲気を作るという意味もあります。

普段は使わない「齟齬」という単語もビジネスシーンでは頻繁に使われますが、この字を読むことができても、書くことができないという人や、意味やニュアンスに自信がなくて使えないという人も多いものです。齟齬の意味や使い方を正しく知って、自分の語彙を増やしてみましょう。

齟齬の辞書的な意味

噛み合わないスーツ姿の男性3人

「齟齬」は「そご」と読みます。齟齬は辞書的な意味としては「かみ合わないさま」「食い違うこと」という意味があり、そこから進んで「(食い違いから)物事が進まない様子」を指しています。「齟」という漢字も「齬」という漢字も、共に「噛み合わない」「食い違う」という意味があり、それを重ねている強い表現です。

今は、あえて手書きの手紙で「齟齬がある」という指摘をすることはほとんどありませんから、漢字は必ずしも書くことができる必要はありません。ただ、読めないと恥ずかしい思いをしますので、読み方は覚えておきましょう。

使い方は単純には、物事が食い違っている、かみ合っていない様子について「齟齬がある」「齟齬が生じる」「齟齬をきたす」と使います。「齟齬ですね」というようには使わず、「齟齬がある」という使い方をするのが一般的です。

また、「齟齬がある」と指摘があった場合には、「いやー、齟齬がありましたね。アッハハハ」というような軽い受け答えになっては絶対にいけません。この言葉には「物事が進まない様子」というイライラ感が含まれているため、齟齬には誠実に対応する必要があるのです。ですから、「少し違いがあるようです」よりも「齟齬があるようです」は強い表現であることを覚えておく必要があります。

齟齬をビジネスシーンで使う際の2つの注意

意味や用法が間違っていなかったとしても、「齟齬」という言葉にはビジネスシーンで使う場合の暗黙の注意事項があることも覚えておくと良いでしょう。

1.目上の人への使用は避ける

部下に齟齬と言われムッとした表情の眼鏡をかけた年配の男性

「齟齬」は食い違いがあるという意味だけでなく、それによって物事が進まないというイライラした雰囲気が伝わってしまう言葉です。ビジネスシーンにおいて、年齢が大きく上の人や上司、役職者、また取引先の人などに対して「私の認識と齟齬があるようです」という表現をすると、上からモノを言っているように思われてしまいますので気を付けましょう。

2.「齟齬がある」は自分が正しいと思うときに使う

「齟齬がある」という表現は、単に食い違っている場合に使う言葉ではありません。「齟齬がある」を使うシーンというのは、正しい認識を持っている人が、間違った認識でいる人に対して指摘する言葉です。そのため、結果的に食い違いがあった時に使う言葉ではありません。

間違っていた側が「齟齬がありましたね」と使うのもあまりよくありません。基本的に、「齟齬がある」は自分が正しい、もしくは正しいと思われる時に相手を指摘する表現として使います。もしくは、第三者の視点で使うのが良いでしょう。

齟齬の類義語と対義語

齟齬の意味やニュアンスがわかってきたところで、一緒に類義語や対義語についても確認しておきましょう。

齟齬の類義語は「矛盾」「不一致」など様々

齟齬の類義語は、物事に食い違いがあるという意味を持つ「矛盾」などが適切です。ただし、「矛盾」と言った場合には「齟齬がある」と言う場合よりも違いについて鋭く指摘するニュアンスになりますので、使いどころに気を付ける必要があります。「矛盾」は少し強いですが、そこまで強くない表現なら「不一致」という言い方でも間違いありません。「ずれ」「相違」「食い違い」「行き違い」などの表現も問題はありませんので、適宜使い分けると良いでしょう。

齟齬の対義語は「一致」「符合」

「齟齬」が意見や意図の食い違いを表すものであれば、対義語はその逆です。つまり「一致する」という表現が対義語にあたります。わかりやすく「一致」でも良いですし、「複数の物事がぴったりと合致する」という意味を持つ「符合」も適切な表現になります。「符合」は図形などを示す「符号」と間違えやすいので注意してください。

齟齬を使った例文

それでは、実際に「齟齬」を使った例文を4つのシチュエーション別に見てみましょう。使う場面によって「齟齬」のニュアンスが違っているのが分かります。

会議の場で

どうやら開発部門が考えている新商品のコンセプトと、企画部が考えているコンセプトに齟齬が見られるようです。

企画と開発が全然かみ合わず泣きたい気分の社長

この場合は、第三者的な観点からの状況報告で「齟齬」が使用されています。商品のコンセプトが食い違っており、一部衝突が発生している様子を伺い知ることができます。

取引先とのやり取りで

本プロジェクトにおいて、貴社の作業担当者と弊社の担当者との間に、重大な認識の齟齬があることがわかりました。本件を進めるにあたり、全体の意識を統一するためのミーティングを提案したいのですがいかがでしょうか?

取引先とのやり取りにあたっては、「齟齬」は慎重に使うべき言葉です。この場合は、誰と誰との間に齟齬があるのかを客観的に指摘し、その齟齬によってプロジェクトが思うように進んでいないことを示しています。齟齬があることを指摘するだけでなく、建設的な解決策を提示することが取引先とのやり取りの中では大切です。

部下とのやり取りで

どうやら、私の認識とA君の認識とには齟齬があるようなんだが、どう考えているのか具体的に聞かせてもらえないか?

A君の認識が間違っていることを伝えたい上司

「齟齬がある」と言った場合には食い違いがあるということで強い指摘になりやすいのですが、「齟齬がある」場合、相手に必ず問題があるとは限りません。場合によっては、例文のように両者の間に齟齬があることを認めつつ、責任の所在ではなく違いを明確にしようという形で齟齬の解消にあたるのが良いでしょう。

ビジネスメールで

お世話になっております。先日いただきました発注書の発注数と納期につきまして、どうやら齟齬があったようですので、確認させていただきたく存じます。

ビジネスメールでは、変換も簡単にできますのでついつい「齟齬」を「思ったことと違う」という意味で使いたくなりますが、これはあまり良い使い方ではありません。先方に対して強く当たっているように受け取られてしまうことがあるからです。

この例なら、「発注書の発注数と納期につきまして、どうやら認識の違いがあるようですので、確認させていただきたく存じます」の方が柔らかい表現になります。同様の表現で「認識のずれ」がありますが、「認識のズレ」と書いてしまうと強い印象になりますのでこれも注意が必要です。

齟齬を印象よく使うなら、客観的な「報告」で使おう

バインダーを手に淡々を齟齬を報告する男性

齟齬は強い表現になりますので、基本的には「個人に向けて使わない」ことをおすすめします。互いの間で印象が悪くなってしまいかねないからです。

齟齬を使うのがふさわしく、また効果的なシチュエーションというのは、客観的な「報告」の場面において使うときです。ある物事についての報告で「齟齬」を使うことで、報告を受ける側の立場に寄り添っていることを示すことができるからです。

具体的には、現場でAさんとBさんの間に認識の違いが発生していることを、Xさんが発注者のYさんに報告する場面では「齟齬」という言葉で表現すると良いことです。これによって、XさんはYさんに「認識の食い違いからうまく進んでいない」という進捗報告だけでなく、「私もYさんと同じくやきもきしています」という意思表示になり、Yさんの気持ちに寄り添うことができるからです。加えて、その齟齬をきたしている原因や解決に向けての取り組みについて提案できるなら、Yさんからの心証がよくなることでしょう。

齟齬が生じている間で使うのはあまりよくないですが、客観的な報告で使えるようになると評価を高めることができますので、ぜひ覚えておいてください。

「齟齬」の意味は難しくないが、使い方には注意が必要

齟齬を正そうとする男性と後ろで「いいね!」している上司

「齟齬」という言葉は、意見や考えの不一致、食い違いを表す言葉ですので、それほど難しい意味はありません。難しいのはその受けるニュアンスで、適切な場面で適切に使うことができないと、印象を悪くしてしまいかねないので注意が必要です。

しかし、様々な局面で、適切な言葉を選ぶことができるのもひとつのビジネススキルでありセンスです。「齟齬」も扱いが難しい言葉ではありますが、上手に使うことができれば与える印象が大きく異なり、自分の評価を上げることになりますので、正しい使い方を研究しましょう。