試用期間に辞める際に守るべき退職マナーや注意点とは?

試用期間に会社を辞めることを検討する人は少なからずいます。その場合には、社員の一人として社内の規則や公共のルールに則った退職手続きをする必要があります。基本的な流れや注意点について理解し、立つ鳥跡を濁さず円満退職できるような環境づくりをしましょう。

試用期間に辞める際に守るべき退職マナーや注意点とは?

試用期間で辞めたくなった場合はどうする?

入社が決まり、試用期間を過ごしている間に、何かの事情によってその会社が合わないと感じることは残念ながらあります。

どんなに企業研究をしっかりして、最良と思われる企業に就職しても、全ての情報を持っているわけではない以上、ミスマッチが発生するのは致し方ありません。

しかし、生活がかかっていることもあり、せっかく入社できたのだからと我慢してしまってそのために心身を辛くしてしまうケースも見られますが、当然良いことではありません。

試用期間中に辞めることについて、手続きや注意事項を知っておくと判断の助けになるでしょう。

試用期間とは仮採用の期間

図解:試用期間の期間

「試用期間」という言葉の意味については誤解も多く見られます。最も多い誤解は自分の実力や働きぶりが試されているために「ダメなら解雇される」というものです。

試用期間は労働者の社員としての適性を評価するために定められている期間であって、雇用を前提とした期間です。解雇ではなく採用を前提とした期間であり、仮採用だという認識が正しいものとなります(注1)。

そのため、雇用契約書などには試用期間についての定めを明記する必要がありますし、適性評価を目的としていますので最長でも1年となっており、条件面でも不当に不利な立場に置くことは問題となります。

仮でも採用ということになりますから労働者の心情的には辞めにくいでしょうが、この時期は採用された場合と同じように、しっかりと手続きを踏みさえすれば辞めることは可能です。試用期間中は基本的に自分が試用されている期間でもありますが、必ずしも採用が約束されているわけではない期間であることもあり、正式に採用された後よりは辞めやすい環境にあるという見方もできます。

試用期間で辞める場合の手続きと流れ

試用期間中に自分の側から辞めたいと感じた場合には、正式な手続きを踏んで退職する必要があります。

1 退職の連絡は予定日の2週間前までに

退職を検討している場合、労働基準法の定めに従えば、退職予定日の2週間前に申し出を行うことが必要です(注2)。しかし、社内規定などによっては1ヶ月前などに連絡するよう定められていることもあります。まずは規定を確認しましょう

退職の連絡は直属の上司か人事部の担当者に連絡するようにしてください。メールなどで一方的に通告するのではなく、しっかりと対面して話すのがマナーです。

急に抜けられると会社側も困りますので、退職については後任の人事や作業の引継ぎなどができるまで一定の期間が必要となります。

なお、退職予定日と最終出社日は必ずしも同じである必要はありません。転職活動などがすでに済んでいて、入社予定日が決まっているような場合は会社側とよく相談して最終出社日を調整しましょう。

退職願を書面で提出する

退職願を持つ女性社員

退職の意志表示をするのは口頭でも構わないのですが、後々トラブルになることもありますので、できればその日のうちに、遅くても翌日には退職願(退職届)を書面でも提出しておきましょう。提出をして受理された場合、コピーなどを持っておけば破かれたとしても失効することはありません。不安があるようなら、内容証明の郵便で送るなどすると良いでしょう。

退職に関して手続きなどを確認する

退職希望をすると慰留をされる場合もありますが、企業側が同意した場合には次のステップとして退職のための手続きが発生します。

制服などがあれば返却が必要だったり、また自分の机やロッカーを整理して片付けたり、社会保険の手続きや保険証の返却など、必要なことを担当者から連絡してもらいましょう。給与についても振り込み先の口座などが決まっていない場合には、この段階で受け取り方法を確認しましょう。

退職希望で同意がもらえなかった場合

退職の希望を出しても同意をもらえないこともありますが、法律上は退職希望の旨を伝えて2週間が経過したら、法的な雇用契約は終了となります。つまり、その後は音信不通になったとしても特に罪に問われることはありません。この期間についてトラブルにならないようにするためにも、書面でしっかりと退職願は提出しましょう。

試用期間で辞める場合に適切な理由

試用期間中に辞めるとしても、その理由はある程度説明が必要です。理由によっては相談することで解決が可能と思われる場合もあるからです。

退職理由は会社のせいにしない

退職願を差し出す男性

退職理由については明示する必要はありませんが、それなりの理由がなければ企業側も納得できません。経費をかけて採用し、そして教育もしており、試用期間とは言え給与も発生していますから、納得のいく理由を説明するのが筋でしょう。

書面上は「一身上の都合」で構わないのですが、口頭ではある程度しっかり理由を説明する必要があります。その際に注意したいのが、「退職する理由は会社や会社の人のせいにしない」ということです。

会社都合の理由にすると、会社側も気分が良くありませんし、また会社側が改善すると言えば退職理由がなくなり辞められなくなります。あくまで自分の問題として退職の希望を伝えましょう。

「採用の時と話が違う」「体力的に辛い仕事が多い」といった理由が本音だったとしても、それらを正直に伝えるのではなく、「自分のイメージに違いがありました」「体調管理がうまくできず、自分を見つめ直す時間が必要と感じたためです」など、自分に責任がある形で退職理由を作った方がベターです。

使える退職理由

試用期間で退職したい場合には、相手側が断れない形の退職理由を伝えましょう。「家族の介護」や「配偶者の転勤」などの家族の事情を理由にしたり、「家業の相続が必要となった」など断れない就業の発生、「自分の性格が企業風土に合わず、馴染めないと感じた」など、自分の問題に起因する働きにくさなどを挙げれば、ほとんどの場合は大丈夫です。

試用期間で辞める場合に知っておきたいポイント

試用期間で辞める場合には、いくつかの注意点があります。

1 試用期間中の退職は基本的に自己都合の退職

採用されることが前提の試用期間中は、基本的に自己都合の退職となります。よほど労働環境が悪かったという事を客観的に示すことのできる証拠がそろわない限り、労働基準監督署に訴えることもできませんし、会社都合の退職ということにはできません。雇用保険の加入期間が充分だとしても、保険の支給はある程度遅くなりますので注意しましょう。

2 無断の退職はできない

基本的には試用期間だとしても社員として登録されますので、退職の際には正式な手続きが必要です。手続きがなければ基本的に「無断欠勤」の扱いになり、社内規定に従ってペナルティが発生する恐れがあります。

もちろん、全く連絡を絶ち切って出社しないということはできなくはありませんが、社会保険などを会社が行っている以上、次の職場で保険に入ったり国保などに入ることもできなくなりますし、最悪の場合は訴訟などの対象になることもあります。

企業側で解雇扱いにして、保険証や資料を送ってくる場合もありますが、よほど良心的な担当者でない限り、非は自分にありますので期待しない方が良いでしょう。

3 給料はもらっておく

試用期間中に退職したとしても、働いた分の給与は発生します。労働の対価を支払わないのは違法ですので、出社した記録がある限り、いかなる場合だとしても労働基準監督署に相談しておけばまず支払ってもらえます(注3)。

給料だけでなく、源泉徴収に関する書類など、その後に必要になると考えられるものはもらっておくようにしましょう。

試用期間で辞める場合と解雇される場合の違い

図解:試用期間で辞める場合と解雇される場合の違い

試用期間で辞める場合は、手続きを踏んで退職する自主退職です。しかし、企業側に責任のある形での退職というのはいわゆる「解雇」となります。

試用期間に企業が解雇する場合もありますが、この時は正当な理由がない限り、簡単に解雇できないことになっています。正当な理由というのは、経歴を偽っていたり、勤務態度が悪い、無断欠勤が目立つなどの勤務状況がひどい場合などです。一般的に考えられる範囲でちゃんと出社して働いていれば、成果や能力の有無は解雇理由にはなりません。

企業側が解雇する場合には、企業が30日前に予告をするか、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払う必要があり、企業にはコストになります。

企業側はそういう立場があるために、試用期間中に退職したくなるように追い込んでくる場合もあります。その場合には労働基準監督署に不当な扱いを受けていることを、証拠をまとめて提出しましょう。認められれば退職しても会社都合の退職扱いにでき、雇用保険の支給をすぐに受けられます。

失業保険の会社都合と自己都合の受給期間・待期期間の違い

試用期間で辞めたら次の就職で不利になる?

試用期間で辞めてしまった場合には、次の就職で不利になることを危惧する人もいます。

これはどのような理由で退職したかにもよりますが、試用期間中のことについては履歴書に書いても書かなくても問題ありません。社会保険の履歴を見てわかる場合もありますが、よほど試用期間で退職した回数が多い場合を除いては、それで経歴を問われることはまずありません。

履歴書などの経歴はあくまでスキルや適性を判断するためのものであり、その判断に大きな影響を与えると考えられるもの以外は特に書く義務はありません。職歴が少し空いてしまっていることを面接官に突っ込まれた場合には、素直に答え、その理由が納得できるものであれば問題ないでしょう。

試用期間中に辞めるなら最後まで社会人らしく

試用期間中だとしても、自分の意志で退職の希望を出すことは労働者の権利です。ただし、社員として、社会人として、公共のルールやマナーに則って退職することが大切です。

「試用期間中だから適当で良い」と考えるのはアルバイト根性でしかなく、社員という意識が欠落しているとしか言えません。試用期間中だとしても最後まで社会人らしく振舞い、可能ならお世話になった方々にもきちんと挨拶して退職しましょう。