メディアリテラシーは情報を読み解いたり発信したりする能力

メディアリテラシーという言葉は耳にする機会も増えていますが、情報を読み取るという受け手としての能力だけではなく、情報を発信する送り手としての能力も含まれます。正しいメディアリテラシーの概念について確認しましょう。

メディアリテラシーは情報を読み解いたり発信したりする能力

これからの全ての人はメディアリテラシーを意識するべき

今はテレビや新聞などのメディアだけでなく、インターネットやSNSなど様々な情報が溢れかえる社会になっていますが、その情報を正しく扱うための能力が「メディアリテラシー」と呼ばれるものです。メディアリテラシーは海外では学校教育での課目となっている国もあるほどで、今後は全ての人が意識するべきものと考えられています。

大学生の酒井君も、様々な情報を見ては何が正しいの悩んでしまう人の一人。酒井君は経営コンサルタントのK・エーイ氏にメディアリテラシーを高めるためにはどうしたらよいか相談してみることにしました。

メディアリテラシーって?

―エーイさん、お仕事柄、たくさんの情報に触れるんじゃないかと思うんですが、「メディアリテラシー」って意識されることありますか?

あれ?酒井君、どうしたの?メディアリテラシーが気になるってことは、メディアを見てて何が正しいのかわからなくなってきたってことかな?

―はい。まさにその通りです。何が正しい情報なのかって調べてたら、「メディアリテラシー」って言葉に行き当たりまして。これが高くなれば大丈夫なのかなと。

そうですね。メディアリテラシーが高ければ、それなりに問題は解決するかもしれませんね。でも、酒井君はメディアリテラシーをどういうものだと思ってますか?

―メディアリテラシーは「メディアからのたくさんある情報の中から正しいものを選ぶ力」みたいなものだと思ってます。

スマホを操作する人の手

大体その認識でいいですね。でも、もう少し言えば、「情報の背景を知って情報を作ったり、拡散したり、選ぶための力」というのが正確ですね。

―メディアリテラシーって、情報を作ったり広げたりも含まれるんですか?

はい、実はそうなんです。メディアリテラシーは、日本だとここ10~20年くらいで特に注目されるようになっているんですが、カナダやヨーロッパなど、海外ではず~っと前からあり、学校教育課程で教えられたりしているんです。

―そうなんですか?じゃあ、日本は教育が遅れてるということなんでしょうか?

まあ、そうなっちゃうんですけど、ちゃんと言うと、遅れてるんじゃなくて、そこまで必要性は無かったんです。それがインターネットによる情報化によって急速に必要性が高まってきたんですね。

―日本では必要性が無く、海外では必要だったのはなぜなんですか?

簡単に言えば、日本は「単一民族国家」であり、メディアリテラシーの教育が進んでいる欧米の国々というのは「多民族国家」が当たり前だからなんです。

メディアリテラシーが必要とされるのはインターネットのせいではない

いろいろな人々

―単一民族?多民族国家?メディアリテラシーと民族がどういう意味を持つんですか?

はい、ここが一番大事なところです。多民族国家になれば、民族はもちろん、人種、宗教や歴史、文化などもまるで違うんです。だから、自分たちの常識で何かを言えば、それが知らず知らずに他の民族を傷つけて反感を買うこともあるんです。

―確かに、バラエティ番組での演出が事件になったりすることもありますよね。

また、情報の出し手というのは特定の利益が絡んでいることが多く、様々なプロパガンダ(扇動)が海外では選挙などでもよく行われています。だからこそ、どんなバックグラウンドの人や団体が発言しているのかを知ることは円滑に社会生活をするために大事だったんですね。

―なるほど。つまり、多民族国家になると、相手のことをよく考えて情報を発信したり受け取ったりしないと大変なことになるということなんですね。

はい。そういうことです。それがインターネット時代やグローバル化になって、より地理的な要因は取り除かれ、情報も爆発的に増えたために日本でも近年は気にするようになりましたが、根本的には「誰が情報を出しているか、受けているか、情報の向こう側をちゃんと考えられる能力」がメディアリテラシーです。

メディアリテラシーを身に着けるには「考えること」「比較すること」「選別すること」がおすすめ

椅子に座って勉強する人

―メディアリテラシーがどういうものかはわかりましたが、どうやって身に着けたらいいんでしょうか?情報の向こう側を知るっていうのは難しい気がするんですが。

難しいですよね。私も難しいと日々感じています。総務省なども教材を提供したりはしていますが、絶対の方法は無いと思います。個人的には「考えること」「比較すること」「選別すること」をおすすめします。

―これだけ聞くと良くわからないんですが。僕でもわかるように、もう少し具体的な説明をお願いします!

「考えること」というのは、今まで話した通り、情報の向こう側を考えることですね。たとえば、新聞やテレビのスポーツ欄はわかりやすくて、スポンサーになっているチームがメインの記事になっています。

―あ、それならわかります。露骨に紙面に出ますよね(笑)。

そのように、情報が出てくる背景を考えることがまずは重要です。SNSなら、その発言だけでなく、普段からどういう発言をしているのか見て、どういう人か考えることも大切なんです。

―言葉や情報の内容だけでなく、人や組織を気にするということなんですね。

そして、そのうえでぜひ「比較」をしてください。同じ情報が他ではどのように取り挙げられているのかを比較することで、考えが極端に偏るのを防ぐことができます。報道は中立だと考えている人もいますが、そんなことはありませんので、新聞やテレビのニュースも複数社を見るべきです。

―うわ~。なんだか時間がかかりそうで、面倒くさそうですね。

はい。本当に時間もかかるし、面倒なんですよ。しかし、最初だけですね。ある程度比較をしたら、情報源を「選別」してください。この時、自分にとって耳障りのいい情報ではなく、中立性が高い情報を提供してくれる情報源や、情報源の特性を自分がしっかり理解していて惑わされない情報源を選んでいくというのが大切です。

―なるほど。これを行っていけばメディアリテラシーも身についていくんですね。

そうですね。やっぱり教育と実践を繰り返さないと、なかなか能力としては身についていかないと思いますので、地道に鍛えていくことが大切ですね。

メディアリテラシーが問われるのはどんな時?

恐竜

―ところで、メディアリテラシーって特にどういう時に必要になるんでしょう?毎日使うものという意識はあるんですけど。

そうですね。これ、あるあるじゃないかと思うんですけど「知らなかった情報に触れた時」でしょうね。「えっ!そうなの?」って思った瞬間、その情報の虜になってしまうという…。

―あっ!わかります!テレビで納豆が紹介された翌日に納豆がスーパーで売り切れたって事件があった時、しばらく母が家の中で納豆の情報ばかり調べたり語ったりしてドヤ顔してました(笑)。

そうそう。誰でもそういうことがあるんですよ。特に自分の興味や関心のある範囲や、自分の好みの情報がマスコミで出たりした時にね。ちょっと興奮したような状態になったりして。

―イヤー、図星すぎて恥ずかしい思い出がいっぱいあるんですけど。これ、注意した方がいいってことですよね?

はい、注意した方が良いタイミングですね。こういう時って、びっくりして情報の向こう側を考えないんですよ。こういうものに限って煽ってくるような見出しや内容も多いですしね。特にマスコミは正しいと考える意識が日本人は強いので注意が必要です。

五感は意外と騙されるからこそメディアリテラシーが重要になってくる

スマホを見て驚く女の人

―こうやって考えてみると、煽ってくるような作りをするメディアって多いですよねぇ。

煽った方が好ましい反応が出ますし、メディアの性質上仕方ない部分はありますね。やはり営利や利害関係がどうしても絡んできますから。

―メディアが「煽る」って言ったりしますけど、対策としてはどういうことに気を付けたらいいんですか?

メディア、特にテレビやラジオなら「音」に注意した方がいいですね。テンポの良い、明るい音楽の中でキャスターが肯定的に話すと良いものに聞こえますし、逆に深刻なBGMで否定的なコメントが出ると悪い情報に聞こえます。

―なるほど~。内容だけでなく、いろんなところから印象ってできますもんね!

新聞や雑誌でも、文字の大きさやフォントの種類などもそうです。写真の選び方など、視覚に訴えてきますね。

―つまり、五感に訴えかけてくる?

はい。五感は自分の感覚だから信じたいけど、そこまで使って印象を操作されることもあるので、だからこそ理性的に情報を考えるメディアリテラシーが重要なんですね。

ネットでの炎上を防ぎたい人もメディアリテラシーを考えよう

ノートパソコンを操作する男性

―最後に、情報を発信する際のメディアリテラシーについても教えていただきたいのですが。

よくインターネット上で「炎上」と言われることがありますが、これもメディアリテラシーが低い人が起こしやすいです。リテラシーの高い人が狙って起こす炎上もありますが、低い人が起こしてしまう例が非常に多いです。

―確かに、炎上しているものって「これ大丈夫?」ってことが多いですものね。

注目されたい一心でリスクを冒すんでしょうけど、今は情報の拡散への認識が甘いんですね。そして、拡散された時に「誰からどう思われるか」に対しても。やっぱりここでも「情報の向こう側を考える」ことが大事です。

―炎上してる時って、批判の声がものすごい多いですよね。ああやって批判するのはどうなんですか?

批判することが悪いわけではないのですが、そこもメディアリテラシーが問われるところです。Aという問題の解決にBという方法を持ち出すけど、結局Bも間違っているということもあります。批判も正しくしないと問題を拡大しますし、間違った批判をすることで迷惑する人もたくさんいることを考える必要があります。特にSNSでの発言は慎重にした方がいいですね。

―ありがとうございます。最近は就活でも個人のSNSまで見られるとか言いますし、情報を見ることだけでなく、情報を発信することについてもメディアリテラシーを磨きたいと思います。エーイさん、ありがとうございました!

メディアリテラシーは情報の向こう側を意識して磨かれる

メディアリテラシーは「正しい情報を選び読み取る力」と理解されることが多いですが、正確にはどのように情報を発信するかも含まれています。情報の向こう側を意識することによって、メディアリテラシーは磨かれていきますので、情報の受け手になる場合も送り手になる場合も常に意識する習慣を身に着けていきましょう。