「知っている」の敬語表現とビジネスシーンで使える例文

「知っている」の敬語はビジネスシーンにおいて使う機会が多い言葉であるだけに、正しく使えないと悪印象が積み重なります。上司や先輩社員、お客様などの目上の方に対し失礼にならないよう、「知っている」の敬語の表現や使い方、文例などを確認して正確な使い方をマスターしましょう。

「知っている」の敬語表現とビジネスシーンで使える例文

「知っている」の敬語表現をマスターしよう

ビジネスは一人ではできませんから、周囲と良好な関係を築き、円滑なコミュニケーションをはかっていく必要があります。そのために潤滑油となるのが敬語です。互いの立場を重んじながら、相手を立てる表現をすることで互いに気持ちよく仕事をすることができます。

ビジネスの場でもよく使われる言葉のひとつが「知っている」という言葉ですが、ビジネスにおいては「何かを知っている」、すなわち情報優位があることによってビジネスチャンスが生まれます。それゆえにビジネスシーンには欠かせない言葉なのですが、この「知っている」を正しい敬語に直すことができないと、失礼な印象を与えてしまうことになりかねません。

ビジネスパーソンとして正しい言葉選びができるよう「知っている」の敬語をしっかり身に付けましょう。

「知っている」の敬語表現はいろいろある

「知っている」の意味について解説

「知っている」とは「すでに知識や情報がある」状態であり、知識や情報を現在進行形で身に着けているところではありません。つまり、「知る」とは区別して考える必要があります。

「知っている」の意味を持つ敬語表現

  • 尊敬語:「ご存知(である)」
  • 謙譲語:「存じる」「存じあげる」「承知している」「心得ている」
  • 丁寧語:「知っています」

こうした敬語はビジネスシーンでは常識として使われています。就職活動や転職活動の際にこうした表現が正しく使えないと、面接官やエージェントにマイナスの評価をされることもあります。特に就活中の学生は表現にブレが出る人も多いので早めに直しましょう。

「知っている」の尊敬語

尊敬語での表現では「知っている」は「ご存知」となります。主語が上司や取引先などの場合は「ご存知でしょうか?」などの形で使用します。相談や報告などでも「~の件についてご存知であれば良いのですが、念のためお時間をいただいて報告させていただいてよろしいでしょうか?」などと使います。

「知っている」の謙譲語

クライアントと打ち合わせをしているビジネスマン

「知っている」の謙譲語での表現は「存じる」「存じあげる」「承知している」が基本です。へりくだった言い方をするときに使いますが、主語が自分や自分の属する組織になります。「あの商品は私も存じております」「弊社でも御社の事情はよく存じてあげておりますが」などのように使います。同様の意味を持つ言葉として「承知している」「心得る」などがあります。

「知っている」の丁寧語

丁寧語で「知っている」は「知っています」となります。これは最低限度の敬語になり、ビジネスシーンでは誰にでも使える表現ですが、しっかり目上の方を立てるという意味でも尊敬語や謙譲語を使えるようにしましょう。

「知っている」の間違った敬語表現に注意

「知っている」の敬語表現はわかってしまうと難しくはないのですが、ついつい間違った使い方や身についた表現で使われてしまうこともあります。

「お知りになる」は間違い?

「知っている」の敬語として「お知りになる(なられる)」という表現をする人がいます。これは文法上正しい使い方ですし「どこでそれをお知りになられたのですか?」という形で使えないこともないのですが、「お知り」が「お尻」と同じ音であるために、表現としては避けられることもあります。

また、アルバイトの若者などで「れる」「られる」を使った簡易な敬語が使われていることが多い印象がありますが、それが定着してしまわないように気を付けてください。こうした表現は冗長になったり過剰な尊敬表現になりやすく、円滑なコミュニケーションを妨げる場合もあることに注意するべきです。

「存じ上げる」の疑問形は使い方に注意

「存じ上げる」は疑問文で使う際にはややこしくなりがちです。これは「誰と話しているか」によって敬語の使い方が変わってくるからです。

例えば、「社長はこの内容について存じ上げていますか?」という表現は、社長本人と話している場合や社内で同僚と話しているシチュエーションであれば、社長は敬意を示す対象になります。そのため、尊敬語表現である「ご存知」を使った「社長はこの内容についてご存知でしょうか?」が正解になります。

取引先の相手にタブレットPCの画面を見せているビジネスマン

しかし、取引先や顧客と話している中で社長の話題が出ているのであれば、社長も自分と同じようにへりくだる立場の人になります。謙譲語の表現で表すため問題のない表現です。この場合は「知っていますか?」でも失礼になることはありません。紛らわしさを避けるために丁寧語を使う人も多いです。

メールや会話で使える「知っている」の敬語文例

「知っている」の敬語について、メールや会話の中で良く使われる文例をいくつか見てみましょう。

「知っている」状態を確認する場合

  • 「当社が春から行っているキャンペーンについてご存知でしょうか?」
  • 「部長ならご存知ですよね?」

相手が「知っている」ことを確認するケースです。最も「知っている」が使われることの多い場面ですので、スラスラ出てくるように練習しておきましょう。自然に敬語を使うためには、声を出す機会を作ることが大切です。

自分や組織が「知っている」場合

  • 「かねてからお噂を聞き、Aさんのことは存じ上げており、大変光栄です」
  • 「〇〇の件については、当方では存じ上げませんでした」
  • 「このシステムの緊急時の対応については心得ております」

知っているかを相手から問われれば、当然知っていることを示す必要が生じます。その際にも「存じ上げる」が自然に出てくると良いでしょう。内容については「聞き及んでおります」「承知しております」などの表現も使えます。

ノートパソコンを使い、取引先の相手にメールを送信している会社員

「心得る」は「知っている」の意味ではありますが、「習得(修得)している」というような意味が強く、「何かの技術や専門性のある知識や考え方を知っている」というニュアンスとなります。「Aさんのお名前は心得ております」とは使いませんので注意してください。

「知っている」で謝罪する場合

  • 「お客様のご都合は重々承知しておりますが、生産ラインにおいて不測の事態が発生したため、ご希望通り対応することができかねる状況です。誠に申し訳ございません」

相手に謝罪するパターンで使う「知っている」です。「お客様の都合は承知しておりますが」という表現でも良いのですが、より真剣にその事情に向かい合ったことを示すために「重々承知」という表現を使っています。こうした使い方も覚えておくと活用シーンが広がります。

「知っている」の敬語は時代が変われば表現も変わる

「知っている」の敬語表現は使用するシーンが多いこともあり、使い始めてしまえばすぐに身につきます。できるだけ積極的に使っていくと良いでしょう。

注意すべきなのは、敬語というのは時代と共に変わっていくということです。敬語を作るための文法はありますが、敬語の本質は「相手に敬意を示すこと」であり、相手が敬意を感じられれば敬語ですし、敬意を感じられなければ表現は敬語でも敬語になりません。

部下と面談をしている上司の男性

昔と比べて、敬語表現を嫌う、面倒だと考える人やコミュニケーション上の障害になるので使いたくないという人は増えています。丁寧語が使えれば十分という人もいれば、尊敬語をしっかり使ってほしいと考える人まで様々です。大事なのは、相手に合わせて敬語を使うことです。

「女性の皆さんならご存知かと存じますが」というような表現も、最近は男女に違いを意識させる表現として敬遠されるようになってきています。最近のビジネスシーンでは相手の属性にも注意を払う必要が生じてきています。

「知っている」を敬語に言い換えても失礼にあたるケースもある

「知っている」の敬語が相手に向けられる場合には、相手が本当に「知っている」なら良いのですが、相手が知らない場合には失礼にあたる場合もあります。

「知っていると思いますが」という意味で、「Aさんもご存知のことと存じますが」「皆さんもご存知のように」という表現をすることもあるでしょう。これは敬語としては正解でも、相手が知らないことをさも常識であるかのように話すのは相手への配慮が足りない話し方であり、相手を不快にさせる可能性があります。
逆に「ご存知である」場合には相手としても知識や情報を持っていることを認められているために良い気分になるものです。しっかり相手の水準を見極めて使いましょう。

よくわからない場合は、「念のためにご紹介しますが」「確認をかねまして簡単にご説明させていただきますが」といった形の表現にするとベターです。

「知っている」の敬語でコミュニケーションをスムーズに

「知っている」の敬語を上手に使うことができると、ビジネスシーンでも情報のやりとりがうまくできるようになります。「知っている」は頻繁に使いますので、表現を知らずに印象を悪くするとそれが積み重なって悪い印象を抱かせてしまうので注意しましょう。

「知っている」は表現を覚えることよりも、使うシーンを考えてどのように表現をするかが難しい敬語です。自分が何を口にするか、文にするかというよりも、相手のことをよく考えて使うことが正しく使うポイントになります。

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