「買う」の敬語でありがちな間違いと正しい表現方法

「買う」の敬語表現はビジネスやお店などでは使用頻度の高い日本語ですが、パッと正しい言葉が出てこないという方も多いもの。「買う」の正しい敬語表現や英語表現、例外的な使い方や間違いなどを文例を参考にチェックしていきましょう。

「買う」の敬語でありがちな間違いと正しい表現方法

「買う」の敬語は「お買いになる」だけじゃない!

ビジネスは物やサービスの売買によって成り立ちますが、「買う」という言葉の敬語は意外と知らない人が多く、いざ必要な場面になってから困る人も少なくありません。

「お買いになる」「買わせていただく」という言い方をする人もいますが、文法上は間違いではないものの、使い方によっては不自然さが残ってスッキリしません。どういった表現が正しい自然な表現なのでしょうか。「買う」の敬語は他の言葉に比べて例外も多いため、しっかりした理解が必要です。

「買う」の敬語表現の基本

スーパーのレジで品物を買う女性

「買う」に限らず、敬語には基本的に3つの種類があります。そのうちのひとつが尊敬語です。尊敬語は相手や相手の動作に対して敬意をはらう言葉遣いのことを言います。謙譲語は自分や自分の動作をへりくだって言う言葉遣いです。最後の3つ目が丁寧な言葉遣いの丁寧語です。

この三つの敬語表現からシーンに合わせて使っていくことが必要となりますが、「買う」についてこの種類別に表現すると、以下のように分けられます。

「買う」の敬語表現

  • 尊敬語:お買い上げになる、お買いになる、お買い求めになる、ご利用になる、お求めになる
  • 謙譲語:なし
  • 丁寧語:買います

文法上、厳密には「買う」の謙譲語は「買わせていただく」ですが、使用する機会がほとんどないため事実上はないものと考えて問題ありません。

注意したいのは尊敬語での表現が多岐にわたることです。日本語ではお金に関する表現は「お金」を意識させない表現にすることが多いため、「お買いになる」はあまり使われません。
また、「買う」の状態や内容によって言葉が付加され、表現のニュアンスが微妙に変わります。

シーン別「買う」の文例

「買う」の敬語表現が必要となるシーンと文例についてチェックしていきましょう。

お店などでの宣伝・確認・お礼の場合

お店などで「買う」の敬語が必要になるのは、主に宣伝や確認、お礼を伝えるときです。

  • 「こちらがお安くなっております。ぜひお求めください」
  • 「こちらをお買い求めになりますか?」
  • 「お買い上げありがとうございます」
  • 「ご利用まことにありがとうございます」

これらはお客様の購入に関することなので、尊敬語を利用します。

基本的に商品が物品である場合は「お買い上げ」、サービスである場合には「ご利用」を使います。「またのご利用をよろしくお願いします」の場合の「ご利用」は店舗やサービスについてのことですので、「また買ってくださいね」の意になる「またのお買い上げをよろしくお願いします」とは使いません。

メールなどでの文章の場合

メールなど文章で使用する「買う」の敬語を解説

メールなどでの文章では、上記のような表現もしますが、以下の表現が多く使われます。

  • 「ご購入の商品につきましては~」
  • 「お買い上げ時のレシートが返品の際には必要となります」
  • 「お求めの商品ですが、生憎在庫を切らしておりまして」
  • 「先日、購入させていただいた商品についての質問があるのですが」

接頭語の「ご」「お」を付けることで敬語表現とすることができ、「ご購入」は丁寧な意味をもった言葉として使いやすい表現です。ただし、口語で使うと固い印象を与えるので注意しましょう。
この場合、すでに「買う」が完了していれば「ご購入」「買い上げる」が利用され、まだ「買う」が完了していない購入希望の段階では「お買い求め」を使用します。

「買う」は現在進行形で「買っている」と表現されることはほとんどなく、それに対応する尊敬語も使われません。
また「購入させていただく」という謙譲語も割と自然に使われています。この場合は「ご購入」としないように注意してください。

目上の人が何かを買った場合

新しいスマートフォンとパソコンを買った部長

目上の人が買う行為をする場合、目上の人が「買う」行為をしたことを表現する場合は敬語で表現します。以下の例文のように「購入なさる」「お買いになった」を使うのが基本です。

  • 「部長が新しいゴルフクラブを購入なさったそうだ」
  • 「美食家で名高いA社長がお買いになったパンが部署で流行しているらしい」

二つ目の文例での「お買いになる」は、社長が「買った」ことが大事なので「お買い上げになった」ではなく「お買いになった」が適切です。なお、「お買いになられる」は二重敬語となります。

目上の人に何かを買ってあげる場合

特殊なケースですが、目上の方やお土産やプレゼントを買ってあげる場合には「買う」を謙譲語で表現する必要があります。
「営業先にもお土産を買ってあげた」という表現では、事実であっても自分がとても偉そうに聞こえてしまいます。相手に対して敬意を示すためには、以下のような使い方が適切です。

  • 「営業先にもお土産を買って(購入して)さしあげた」

「買う」そのものを敬語にするのではなく「~してあげる」の部分を敬語や丁寧語にすることで敬意を示します。

慣用句表現の「買う」は敬語変換しない

「青田買い」「買って出る」「高く買う」「一役買う」など、「買う」には様々な慣用句表現があります。

  • 「選手の青田買いをさせていただいた」
    (青田買い:「高くなる前に安くたくさん買う」の意)
  • 「プロジェクトリーダーの責務を買って出られた先輩は本当にすごいと思った」
    (買って出る:「自発的に引き受ける」の意)
  • 「部長が大変高く買っていらっしゃる新人が彼です」
    (高く買う:「高く評価する」の意)
  • 「事業の再建に一役買わせていただいた」
    (一役買う:「あるパートで貢献する」の意)

慣用句表現においては「買う」の他の部分を敬語表現にします。「買う」そのものを敬語表現にすると意味が通じなくなるので注意が必要です。また、通常は使われることの少ない「買わせていただく」が使われることもあります。

「買う」の英語表現は「buy」ではない?

「買う」を英語で表現しなければならない場合、ついつい「buy」を使いたくなりますが、フォーマルな場面では「buy」はほとんど使いません。では何を使うのかというと、回答としては「purchase」を使うのが正解です。

  • “This item can be purchased at this shop.”
    (これらの商品はこのお店で購入できます)

英語の場合、基本的に尊敬語表現はありませんがフォーマルな表現はあります。「purchase」は「買う」におけるフォーマル表現にあたり、「buy」はカジュアルな印象を与える言葉ですので、ビジネスの場ではあまり使わないよう注意が必要です。

なお、お店などで何かを選んで買う際には「buy」よりも「take」を使うことが多いです。「buy」を使うと「買う」という行為そのものがやや強調されます。

  • "I’ll take this."
    (これを買います)(これが欲しいです)

日本語の敬語表現を無理に英訳して敬語表現にすると、違和感のある英語になります。英語は英語としての表現を覚えるようにしましょう。

その他「買う」の敬語で注意したいポイント

その他、「買う」の敬語で押さえておきたい使い方について解説します。

「買われる」は使わない方が良い

お客様に洋服の購入を勧めるブティックの店員

「買う」は文法上、助動詞の「れる」を付けることによって敬語表現となりますが、「買う」を「買われる」と表現するのはあまりよくありません。これは「飼われる」「代われる」などの同音異義語が多く、内容によっては混同を招くこともあるためです。

「こちらを買われますか?」では、相手が意味を解釈しにくい可能性があります。もしも他の表現がとっさに浮かばない場合には、せめて「購入」に意識が向くように「こちらの商品を買われますか?」などと表現することをおすすめします。

「ごゆっくりお買い物ください」は本当は間違い

「正しい表現」が書かれたメッセージボードを正面に見せるスーパーの店員達

スーパーやデパートなどの放送では、「ごゆっくりお買い物ください」というアナウンスが流れることがありますが、この「お(ご)~ください」の表現は、本当は間違った敬語の使い方です。
正しくは「ごゆっくりお買い求めください」「ごゆっくりお買い物なさってください」が正しい使い方なのですが、こうした略式の敬語表現も慣例化して受け入れられています。

似たような例として「ご利用ください」「ご購入ください」もありますが、これらも本来は「ご利用なさってください」「ご購入なさってください」が正しい表現となります。

とはいえ、日本語も時代が変われば表現が少しずつ変わっていきます。あまりにも厳格に文法を意識して敬語を考えて不自然な言い回しになるのは避けたいところです。

「買う」の敬語では基本の使い方を覚えよう

「買う」の敬語表現は「買い求める」「買い上げる」「ご利用になる」「お求めになる」など、買うという行為そのものを敬語表現にせず、言い換えたり他の言葉を足したりします。
また、謙譲語が使われる機会が極端に少ない、慣用句表現が多いなど、イレギュラーが多いことが特徴です。

「買う」の敬語はそれだけに使い方が難しい表現となりますが、普段耳にしている表現も多いため、正しい言葉を覚えるのはそれほど難しくはありません。基本的な使い方や文例を覚えて分別力を身に着けていけば、自信を持って使うことができるようになるでしょう。

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