モラハラを職場で受けたり起こしたりしないための対策

モラハラが職場における問題として認知されるようになってきています。しかしモラハラが問題と思っても、現場では自覚なく行われていることもあり注意が必要です。モラハラの事例や対応策を理解して、職場のモラハラ対策に活かしましょう。

モラハラを職場で受けたり起こしたりしないための対策

モラハラは職場にあるもの、どうしたら自分を守れるの?

女上司から嫌がらせを受ける女性社員

労働問題には様々な種類がありますが、特に近年話題になっているのが職場におけるモラルハラスメントの問題です。「モラハラ」と略して言われることも多いですが、職場において陰湿な嫌がらせが行われていることで心身を害してしまったという事例もあります。

大学生の酒井君はニュースでモラハラについて知り興味を持ちます。実際の職場ではどういったことが起こっているのか、知人の経営コンサルタントであるK・エーイ氏に尋ねてみることにしました。

増える職場のモラハラは企業にとって重要な課題になっている

酒井君

―エーイさん、おはようございます。昨日、ニュースでモラハラについての特集を見たんですが、モラハラってやっぱりあるんですか?

K・エーイ氏

酒井君おはようございます。ありますよ。奇遇にも、今ちょうどクライアントの依頼でモラハラ対策の案件をしているところです。やっぱり、職場のモラハラは多いですよ。

酒井君

―そうなんですね。でも、イメージとしては学校でいうイジメみたいなものかなと思うんですが、職場でもイジメがあるってことなんですか?

K・エーイ氏

う~ん、難しいところですね。イジメに近いとは思うんですけど、モラハラって言った場合にはイジメというほどイジメではないんですよね。悪い意味で大人の巧妙さがあって、イジメというよりは嫌がらせって感じですね。

どっさり仕事を渡されてビビる女性社員

酒井君

―イジメと嫌がらせって何が違うんですか?

K・エーイ氏

イジメって、いじめる側が一方的に対象を攻撃するみたいなところがあるじゃないですか。モラハラになると、自身が自分を責めるように仕向けるところがあるんですよね。

酒井君

―違いがわかるようなわからないような感じですけど、イジメほど直接的でないってことですか?

K・エーイ氏

そうですね。わかりやすく言えばモラハラは「圧力をかける」みたいなイメージです。

酒井君

―それは何か違った怖さがありますね。

K・エーイ氏

はい。でも、これって企業にとっては大きな問題なんですね。モラハラで心の病になってしまうこともありますし、また労基署などに訴えられて指導されたりしますから。加えて、加害者や被害者に自覚がないことも多いんです。

酒井君

―それは大変ですね。しかも、知らない間に大きな労働問題が起こっているってことなんですね。

K・エーイ氏

はい、それでモラハラについて正しく知ることや、モラハラを予防するための社内のルール作り、またモラハラが正しく通報されて悪化するのを防ぐための仕組み作りなどを講習するわけですね。会社によって事情が違うので、対策も結構悩ましいんですよ。

職場で生じるモラハラはどんなものがある?

ボッチの男性社員

酒井君

―先程エーイさんは「圧力をかける」みたいなイメージと仰いましたが、たとえば職場ではどんな形でモラハラが行われるんですか?

K・エーイ氏

たとえばですけどね、「大事な連絡が一人だけ回ってこない」ということがあります。

酒井君

―それって圧力も何も完全にイジメじゃないですか!

K・エーイ氏

まあまあ、聞いてください。どんなに優秀な人ばかりの企業でも、メールや口伝てでの連絡だと、どうしても漏れが出ることはあるんです。たまたまその被害者になっただけかもしれません。

酒井君

―確かに、そういう可能性はありますよね。じゃあモラハラではない?

K・エーイ氏

でも、モラハラの案件ではこういう時に上司や先輩から「どうして変だと思ったのに周囲の人に聞かないんだ!」と言われてしまうわけです。これは上下の関係で起こりやすい例で、一種のパワハラでもあります。

酒井君

―変なことがあれば、確かに周囲の人に聞けばいいですからもっともな感じがしますけど?

K・エーイ氏

実は、酒井君みたいに考えるマジメな人がモラハラの被害者になりやすいんですよ。自分は悪くないのに自分が悪いと思ってしまうわけですから。そして、「君はいつもそうだ」とか「また君か」とか、特定の人に責任の追求が集中するようなら間違いなくモラハラになりますね。

酒井君

―え~、そうなんですね。気をつけなくちゃ。他にも例はありますか?

K・エーイ氏

わかりやすいところでは「無視」ですね。挨拶しても返さないとか。

職場で無視をしない、されないためにできること

酒井君

―それは感じ悪いですね。

K・エーイ氏

でも、挨拶もタイミングが悪かったり聞こえにくかったりして、それでたまたま返ってこなかったのかもしれません。ただ、部下が上司や先輩に対してささやかな抵抗としてわざと挨拶をしないケースも多いんです。他の人には機嫌よく挨拶を返すのに。

無視し合う二人の男性

酒井君

―確かに、不機嫌な時なんか、ついやってしまいそうですね。気をつけなきゃ。

K・エーイ氏

こういうモラハラを受け続けているとこうした時に「自分が周囲に嫌われている」と思っちゃうんですね。意図的な無視かどうかに関わらず。それで仕事がしにくくなるんです。

酒井君

―じゃあ、実際に無視しているかは関係ないということですか?

K・エーイ氏

無視されることが続いた結果、自分に責任があると考えるようになっていくならモラハラを受けたと言っていいと思います。また、客観的に考えて自分だけが無視されているような状況が多いならそれもモラハラと言えるでしょう。

酒井君

―ちょっとわかってきたような気がします。

K・エーイ氏

他にも、同僚同士で話しているときに、ある人が話などに入ってくると急に盛り下がったり、嫌な視線を向けたりするなど、様々なモラハラがあります。また、職場で能力に合わない仕事ばかり回されたり、逆に能力や時間に比して難しい仕事ばかりを回されるのもモラハラと言えますね。

酒井君

―それって会社としても損失になるんじゃないですか?大丈夫なんですか?

K・エーイ氏

そうですね。意図的にしろ意図的でないにしろ、割を食うのは被害者と会社になりますから、できるだけこうしたモラハラが起こらないように気を配る必要があるわけです。いくつかの例から想像できるかと思いますが、モラハラっていうのは「道徳的に考えて相手に迷惑になることをする」っていうことなんですよね。ただ、自覚するのが難しい点が問題なんです。

モラハラが起こりやすい職場の傾向とは?

陰口を叩かれ滅入っている女性社員

酒井君

―モラハラの例を聞いていると、モラハラってどこの職場でも起こりそうな問題ですね。

K・エーイ氏

そうなんです。でも、特にモラハラが生じやすい職場の傾向ってあるんですよ。

酒井君

―そんなものがあるんですか?

K・エーイ氏

まあ、統計的な数字があるわけではないですけどね。でも、モラハラ的な事件が起こりやすい職場って、たとえば年齢構成が偏ってたりするんです。40代だけ突出して多いとか。

酒井君

―ええ?そうなんですか?

K・エーイ氏

はい。こういう職場では、一定の層が多数派になるので、そこで職場の空気が作られてしまいやすいんですね。そのため、たとえば新人にコピーをお願いした時に断られたとします。するとそのベテラン層で「最近の若い連中は下積みを嫌がる」という話がされます。すると他の業務でも似たようなことが生じるとそれが共通認識となり、小言が増えたり、他の世代にも伝播して仲間外れ状態になったりするんです。

職場で仲間はずれにされたときの上手な対処法8つ

酒井君

―うわ~、そんな職場イヤだなぁ。ビジネスって互いの主張や流儀をわかって、落としどころを探すものじゃないんですか?

K・エーイ氏

酒井君が言うことは正論なんですけど、取引先にはできても身内にはできないってことが多いんですよ。また、女性が被害に遭いやすいとも言いますね。女性は男女どちらからも、気に入らないと思われた場合にモラハラを受けやすいようです。

酒井君

―男女平等が泣いてますね。きっと。

K・エーイ氏

まったくです。まだまだ女性を下に見たがる男性も多いですし、女性同士だと気に入らない人は様々な形で嫌がらせされることも多いみたいなんですよね。

酒井君

―じゃあ、こうした職場環境があればモラハラには注意しておいた方が良さそうですね。

K・エーイ氏

そうですね。モラハラにはいろんな形がありますが、一定の層が発言権を持ちやすい場合や、強力な影響力を持つ発信者がいる職場も注意しておいた方が良いです。「給湯室や喫煙室には注意した方がいい」と言われることもありますが、特定の層が集まる所での何気ない会話からモラハラが始まることもあるので注意してほしいですね。

職場でモラハラに遭ったらどうしたらいいの?

疲れている男性

酒井君

―エーイさん、もしも僕が社会人になって、職場でモラハラに遭ったらどうしたらいいですか?

K・エーイ氏

酒井君、本気で心配してますね(笑)。

酒井君

―心配しますよ!名指しでモラハラされそうって言われたんですから!

K・エーイ氏

それは申し訳ありませんでした。でも、傾向としては本当にそうなんですよ。だから、ぜひ正しい対応を知っておくべきです。

酒井君

―職場でモラハラを受けてると思ったら、どうしたらいいですか?

K・エーイ氏

まずはどういった嫌がらせを受けているか記録することです。記憶じゃなくて記録ですね。

酒井君

―「こんな嫌がらせをされました」って言うだけではダメなんですか?

K・エーイ氏

そうですね、やはりいつ、どこで、誰が、どのように嫌がらせをしたのか、また不快にさせるような言動があったのかという客観性のある証拠が必要です。また、脚色したりされたりしないようにするためにも、きちんと記録として残しておくべきです。可能なら録音したり、メールは保存しておくなどできるといいですね。

酒井君

―モラハラを記録しておいたとして、それをどう使ったらいいんですか?

K・エーイ氏

当然、加害者当人に持っていってもこじれるだけですから、問題を収める権限のありそうな第三者にもっていきます。身近なところなら上司や人事、社外に頼るなら都道府県の労働局や弁護士などに相談すると良いでしょう。

酒井君

―でも、モラハラを大事にはしたくないなぁって思ってしまいます。

K・エーイ氏

それも良くない考え方です。自分が毅然とした対応ができないことで、会社がより大きな問題を抱えるリスクがあることを自覚するべきです。また、「大事にしたくない」と言いますが、そんなに酒井君の価値は低くありません。自己評価を低くもってしまうと、モラハラの格好の的になります。

酒井君

―そうなんですね。危うい考え方をしてしまっていました。

K・エーイ氏

モラハラが続くと、個人の尊厳が傷ついてしまい、職場において互いに大事に思う心が失われて殺伐とした職場になってしまいかねません。自分に対しても周囲に対しても、一人ひとりを大切に思う気持ちを持つことが一番大事な対応です。

職場でモラハラやハラスメントが生じるのは性格の問題と言い切れない

Mee Tooと訴える男性社員と後ろで荒ぶる男性

酒井君

―そういえば、セクハラでもパワハラでもそうですし、モラハラでも、加害者の性格的な問題があったりはしないんですか?危険な人なら極力避けるとかできると思うんですけど。

K・エーイ氏

性格の問題は無いとは言えないんでしょうけど、それでハラスメントが生じるかと言われるとそれも言い切れませんね。特にモラハラに至っては無自覚的に行っていたりしますから。避けることもまた逆にモラハラになりかねませんのでオススメはできません。

酒井君

―ハラスメントって、定義や境界線がハッキリしないんでしたっけ?

K・エーイ氏

定義としては「こういうもの」というのはありますが、「ここからはハラスメントになります」という境界線は加害者と被害者の関係にもよりますしケースバイケースです。モラハラについても、被害者がモラハラだと思った時点からがモラハラになります。

酒井君

―じゃあ、客観的に見てモラハラだとしてもモラハラではないこともあるんですか?

K・エーイ氏

そうです。ここが難しいところです。でも、モラハラについての認知が進んできたことによって、主観的にもモラハラを察知しやすくなってきているんじゃないでしょうか。だからこそ話題に上がることも増えたんでしょうし。

酒井君

―なるほど。でも、それって逆に言えば自覚が無くともモラハラで訴えられることもあるってことですよね?

K・エーイ氏

そういうことになりますね。だから、人の性格の問題もあるかもしれませんが、互いにモラハラに対してしっかり神経を遣って接することが大切なんじゃないかと思います。少なくともモラハラと疑われるような言動がないように注意することはビジネスマナーや社会人としてのモラル上も間違ったことは何もないはずです。

職場のモラハラを無くしていく対策は「個人は事例を知る」「組織は通報の仕組みを作る」こと

握手

酒井君

―最後に、職場のモラハラを無くしていくためにはどういったことをしたらいいんですか?

K・エーイ氏

まさに指導している内容になるんですが、ひとつは事例を知ることです。自分たちが日常的に行っていることの中にも、モラハラの種があることを自覚することです。

酒井君

―なるほど。確かに自覚なくやっていることが多いと言いますものね。

K・エーイ氏

次に、モラハラが生じた場合のリスクをしっかり考えさせることです。モラハラが発覚した場合、その加害者になっていた人がどうなるのか、また労基署などから指導があった時にはどうなるのか。具体的な決まりがない会社なら、罰則を明確に作って示すのは効果的です。

酒井君

―そうか、モラハラによるリスクが大きいと思ったら行えなくなると思うので納得です。でも、モラハラはバレないようにやればいいというずるい人もいるんじゃないですか?

K・エーイ氏

そこで、通報の仕組みを作ることを推奨します。問題の相談窓口を社内で作ったり、また疑わしい情報を通報した人に何かしらのインセンティブがあると良いでしょう。結局こうした仕組みがあることで企業はモラハラのリスクを回避できるのですから大事なことだと思います。

酒井君

―職場のモラハラは、組織として正すというか監視する体制が必要なんですね。

K・エーイ氏

はい。組織だからこそできることがあります。そして、個人ができることがあります。個人間では、年次や性別、役職などに関わらず、互いに一人の社員としてその価値を認め、互いに尊重し合う心をもって欲しいですね。自分の気分で悪く言ったり嫌がらせをするなどもっての他です。

「相手を立てる」ことこそビジネスマナーの極意

酒井君

―モラハラ対策は、個人の知識や意識、そして組織での対応などが大事ということですね。勉強になります。僕もモラハラを受けないよう、しないように注意しながら頑張りたいと思います。ありがとうございました。

モラハラが職場で起こらないようにするには個人と組織の努力が必要

職場におけるモラハラは目立たずとも存在していることが多いと言います。被害者も加害者も、自覚がない場合もありますので、発見が難しいという特徴があります。

モラハラの問題を正しく意識し改善に結びつけるためには、実際の事例について学んだり個人が意識を高く持つことが大事です。加えて、モラハラを抑止したり、早期発見を促すための仕組み作りが組織にも求められます。正しい理解と対応で、職場のモラハラによる様々な害を防ぎましょう。