「ご無沙汰」は敬語表現?正しい意味と使い方のポイント

「ご無沙汰」はビジネス上のやり取りでよく見られる敬語表現ですが、どのような意図で使われるのでしょうか。正しい意味や使い方、失敗例、英語における表現などを紹介し、マナーの根本についても考えていきます。

「ご無沙汰」は敬語表現?正しい意味と使い方のポイント

「ご無沙汰しております」は敬語の基礎が見える

「ご無沙汰しております」という挨拶をしたことがあるという学生はそれほど多くありません。頻繁に関係者に会いますし、またそのようなかしこまる関係でもないためです。
しかし、社会人となり、ビジネスの場となれば別です。そこには相手を敬うためのマナーがあり、カジュアルな話し言葉ではなく敬語を正しく用いる必要があります。

よく使われる言葉だからこそ、その使い方によってマナーや常識が問われます。「ご無沙汰しております」という敬語の正しい使い方や英語表現についてまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

ご無沙汰は敬語?それとも普通の話し言葉?

お久しぶりですと、先輩に挨拶する女性

「ご無沙汰しております」のように使うこの「ご無沙汰」ですが、これは敬語の謙譲語です。普通の話し言葉なら「お久しぶりです」が該当します。

「お久しぶりです」は丁寧語にあたり、「久しぶり!」を丁寧にした言い方です。若干カジュアルな側面があるものの、目上の方から身近な先輩、同級生、様々な場面で使うことができます。ただし、ビジネス上の関係においては、よほど親しくなければ使うべきではありません。

「ご無沙汰」とは、「沙汰が無い」に「ご(御)」を付けることで敬語として使われる表現です。基本的に目上の方に対して用います。「ご無沙汰をする」のは「自分」であり、自分を低める謙譲語にあたる表現です。

「沙汰」というのは、本来は「地獄の沙汰も金次第」という言葉に表れるように「裁判」や「処理すること」が原義で、そこから転じてその結果としての「便り・音信」という意味を持ちます。「沙汰がない」とは「音信・連絡がない」という意味の敬語となります。

ご無沙汰の正しい使い方は?

ご無沙汰が敬語だということがわかったら、次は正しい使い方を知る必要があります。

まず、誰に対して用いるべき言葉かと言えば、基本的に社会人として接する相手には全て用いた方が良いと言えるでしょう。社内外関係ありません。ただし、フランクな「お久しぶりです」がすっきりする相手というのもいますから、その場合は例外です。基本を「ご無沙汰」と考えて、「お久しぶり」は例外的に用います。

体の前で手を組んで挨拶する女性

また、期間についても少し気にする必要があります。「ご無沙汰」というのは「お久しぶり」とは少々違っています。「お久しぶり」はしばらく会っていなかった場合に用いるものですが、「ご無沙汰」については頼り・音信が無かった場合に使われる表現です。ですから、多少距離感に違いがあることに留意する必要があるでしょう。

週に一度はやりとりする機会があった相手に一ヶ月連絡をしていなかったなら、それは「ご無沙汰」で間違いありません。しかし、連絡の頻度が隔週になったくらいであれば「ご無沙汰」とは言いません。

また、気を付けたいのが、対面して挨拶を交わす場面です。相手が親密さを出すために「お久しぶりです」と挨拶してきた場面では、「ご無沙汰しております」が過剰に見えることもあります。この場合は状況を踏まえてどちらの挨拶をするべきか考えるべきです。

メールや手紙においての「ご無沙汰」は注意!

メールや手紙などでは、様々なご無沙汰の表現があります。

  • 「大変ご無沙汰しております。」
  • 「しばらくご無沙汰しておりましたが、お変わりありませんでしょうか。」
  • 「ご無沙汰となっており、大変申し訳ありません。」

などなどが正しい使い方となりますが、以下はよくある間違いです。

× 「ご無沙汰ですが、いかがお過ごしでしょうか?」
× 「大変なご無沙汰の中、ご連絡いただきありがとうございます」
× 「ご無沙汰のため、申し訳なく存じます」

これらの間違いに見られるのは「ご無沙汰」をひとつの形容動詞と考えていることです。「ご無沙汰だ」という状態を示す言葉ではありません。

手紙を書く女性

「ご無沙汰する」というのは、「自分が連絡すべきなのに連絡できていなかった」という自分の行動を示す動詞です。「ご無沙汰だ」という状況に示すように使うと「あなたも連絡が無かったですよね」と相手にも責任を押し付けることになり、失礼となりますので注意してください。

また、「ご無沙汰してましたね」というような使い方もありません。ご無沙汰するのは自分であり、相手を主体として使う表現ではありません。「ご無沙汰しております」は自分を下げて相手を高める謙譲表現です。

面と向かって話す際にはそこまで気にならないことも多いですが、いざ文章として出てくると気持ち悪く感じたり、形として残ってしまいます。特に、学生や新入社員の頃はこういった言葉の使い方のミスから恥ずかしい思いをすることが多いので注意が必要です。

「ご無沙汰」には言外に「謝罪」が含まれる

土下座して謝罪する会社員

基本的に「ご無沙汰」している場合には、申し訳ないという気持ちが伴う必要があります。マンガで見られるような「よっ!ご無沙汰!」という挨拶のような使い方は間違いです。「ご無沙汰しており申し訳ございません」というような謝罪が続く(省かれてもその意がある)のが普通です。

ビジネスの世界では互いに連絡を取り合いながら協力関係を築いていくものです。その相手に対してしっかり連絡できていなかったことに対して、申し訳なく思うからこその「ご無沙汰しております」なのです。

ですから、ビジネスメールの冒頭では「ご無沙汰しております。○○社のAでございます。昨年のお取引以来、ご連絡が滞っており大変申し訳ございません。」というような形の、やり取りが無かったことについての謝罪が入るのが自然です。

「大変ご無沙汰しており大変申し訳ありませんが、先日の件はどうなっておりますでしょうか?」というような文面だと、ご無沙汰であることに謝意を感じません。むしろ敬語であるがために冷徹に感じられ、敬っているようには到底思えないものです。特に目上の方には失礼にあたりますので注意して使うようにしましょう。

堅苦しい話に思えるでしょうが、印象ひとつで契約が動き、数十万円、数百万円、数千万円が動く場合もあることを考えれば、正しい言葉遣いを身に着けることは社会人なら当然のことです。

「ご無沙汰」は英語だとどのように表現する?

外資系の会社で久しぶりの英語の挨拶を交わす

外資系の企業に勤める場合や、貿易会社など海外の人とやり取りをする必要がある場合には、「ご無沙汰」の英語表現も覚えておくと良いでしょう。

英語の場合は、日本語のような敬語表現はありませんが、ニュアンスは言葉によって多少違いますので、状況に応じてうまく使い分ける必要があります。

  • "Long time no see."(しばらくぶりに会うね)
  • "Sorry for not being touch with you."(やりとりが無くなって長くなり申し訳ない)
  • "It’s been a long time. "(長い時間だった→お久しぶり)

英語での「ご無沙汰」表現には上記のような表現があります。カッコは直訳ですが、ニュアンスの違いがあることがわかります。

  • "Nice to see you again."(また会えてうれしいよ)

こちらはさすがにカジュアルすぎるので、よほど関係が近い場合でなければビジネスでは不適切です。

英語の場合はこのような形を覚えておくと良いですが、韓国語など敬語表現がしっかりある言語の場合には表現に注意する必要があることを覚えておいてください。

大事なのは相手との距離感と敬う感覚

相手の目を見て会話するビジネスマン

これまで「ご無沙汰」という表現を見てきましたが、社会人なら敬語は当然正しく使えるべきですが、正しく使われていない場面も実は多いものです。

しかし、より大事なのは「正しい使い方」よりも「相手のとの距離感」や「敬う感覚」です。敬語を何のために用いるのかといえば、相手との良好な関係を築くためであり、相手を敬い、立てるためです。決して、形式を守っているか相手をテストするためではありません。

敬語が下手だとしてもコミュニケーションが上手な人はたくさんいます。そういう人は、敬語の使い方は多少間違っていても、相手に対して失礼は少ないものです。逆に「慇懃無礼(丁寧過ぎて失礼に感じる)」ような人も多いのです。中小企業では、家族的な親密さを社員と築きたいと考え、過度な敬語を嫌う場合もあります。

それを適切に見分けて、正しく表現を選ぶことこそがマナーであることを忘れてはいけません。

「ご無沙汰」は敬う気持ちを持って使おう

「ご無沙汰」という表現は敬語であり、音信が無かったことに関しての謝意を含む表現です。「自分が連絡するべき」という立場を作ることで、自分を下げる謙譲語に当たります。頻繁に使う言葉ですから、正しい表現、使い方を身に着ける必要があります。

しかし、この言葉を使うべき状況なのか、相手なのかは、年配の方でも間違う可能性があり見極めが難しいところです。言葉遣いが難しいのではなく、相手との距離感や状況を測ることが難しいために使い方を誤ることがあるのです。

マナーで大事なのは「相手を敬う感覚」であり、求めている対応をすることです。とにかく丁寧に「ご無沙汰しております」としても、相手が敬われている感覚を持てなければ意味がありません。
就職活動などで様々な年代の人と触れている人が評価されるのは、この感覚がしっかりしている人が比較的多いためです。敬語の形も大切ですが、相手を敬う感覚を磨くことをぜひ普段から意識してください。

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