職場で無視をしない、されないためにできること

職場における無視は、上司と部下の間、同僚の間など立場に関係なく起こりうるものです。実際に職場でありがちな無視の例や、その背後に隠れている心理状態などを理解しておきましょう。防止策や改善の参考になる情報をご紹介します。

職場で無視をしない、されないためにできること

職場でわざと無視する人がいるのは事実

無視する男性と振り返る女性

どんな職場であっても人間社会ですから、人間関係の軋轢が生じることはあります。しかし、企業の利益という共通の目的を掲げて働く以上、その軋轢を仕事に持ち込むのは当然社会人としてのマナーに欠ける行為と言えます。

企業のインターンに参加した酒井君は、その職場で同僚が聞いた「無視」の話に衝撃を受けます。メンターである経営コンサルタントのK・エーイ氏に、職場における無視の実情について尋ねてみました。

職場で誰かを無視をすることは何も生み出さない

酒井君

―エーイさん、おはようございます。そういえば、先日のインターンで「会社って怖いな」って思ったことがあったんです。

K・エーイ氏

なになに、どういうことでしょうか?気になりますね。

酒井君

―はい、一緒にインターンに参加した子が別の部署で働いていたんですけど、その子が言うには部署内で明らかに無視されている人がいたそうなんです。

K・エーイ氏

え?職場で無視ですか。それは大人気ないですね。

酒井君

―挨拶をしてもみんな素通りしたり、仲間外れにして盛り上がっていたりしたそうです。社会人ってそんな子供みたいなことしないと思っていました。

K・エーイ氏

まあ、大人だろうと職場だろうと人が集まればそういうことはあるのは仕方ないのかもしれません。ただ、個人の好き嫌いや人間関係の軋轢を職場に持ち込むのは良くないですね。

酒井君

―職場で無視しても、仕事しにくくなるだけじゃないんですか?

K・エーイ氏

はい、その通りです。職場において、同僚を無視したところで生み出すものは何もありません。むしろ、無視するための労力や一人をいないことにすることで生じるロスがムダになってしまいます。仕方ないことはあるかもしれませんが、早急に直さないと問題になりますね。

上司が部下を無視するパターン

無視する男性上司と無視される男性部下

酒井君

―その同僚が言うには、まず上司が率先してある人を無視しているそうなんですよ。

K・エーイ氏

そりゃ厄介ですね。一番こういう問題を何とかしないといけない立場なのに。

酒井君

―挨拶をしても知らん顔みたいで、会議の時も上の上司がいなければ、他の人に意見は聞いてもその人には意見を聞いたりしないそうです。

K・エーイ氏

なるほど。上司の場合は、こういった無視はパワハラにあたるでしょうね。少なくとも、会議の進行上、意見を出したり能力を発揮する機会を奪っていることになりますから。

酒井君

―そうなんですね。じゃあ、訴えればいいんじゃないですか?

K・エーイ氏

しかし、上司の無視っていうのはタチが悪いもので、悪口や圧力のように証拠が残らないんですよ。無視ですので、そもそもやり取りがありません。

酒井君

―ええっ、そうなんですか?

K・エーイ氏

はい。ですから、この場合は客観的に証言してくれる味方の有無が大きいですね。ただ、上司が中心になって部下を無視している場合、同調圧力も強いから注意しなくてはなりませんね。特に上司がどのくらいまで上の役職かで状況は大きく違ってくるでしょう。

酒井君

―ひどい話です。でも、何でそんなことになるんですか?

K・エーイ氏

仕事面で何か大きなミスをして迷惑をかけたり、個人的に感情を害されたとか、そういったことがあったと考えるべきじゃないでしょうか。まあ、そうだとしても個人的なことは全部飲みこんで仕事の上では互いに最善を尽くすのが社会人のあり方だと思うのですが。

酒井君

―解決策は無いんですか?

K・エーイ氏

難しいかもしれませんが、直接上司本人と腹を割って話してみるか、より上の上司に相談してみるか、もしくはもう仕事を辞めてしまうかくらいでしょうね。ただ、上司っていうのは年功序列の強い会社でない限りはそれだけ会社に評価されている人ですから、ちょっと不利かもしれません。

上司のパワハラから身を守るためにやるべき対処法

部下が上司を無視することもある

無視する女性部下と無視される男性上司

酒井君

―エーイさん、ちょっと思ったんですけど、部下が上司を無視することってありますか?

K・エーイ氏

はい、ありますよ。昔私がいた職場で見たことがありますね。

酒井君

―でも、それって仕事にならないんじゃ。

K・エーイ氏

まあ、仕事は仕事ですから、最低限のやり取りはしていましたね。でも、その他のコミュニケーションは全くありませんでした。エレベーターで二人に挟まれると居心地悪かったですね。

酒井君

―何で上司を無視したんでしょうね?

K・エーイ氏

同僚が言うには、上司が飲み会のときにプライベートなことを根堀り葉掘り聞いてきて、それで嫌になったそうなんですね。それから「口も聞きたくない」って感じで気嫌いするようになったようです。上司も上司で「そういう態度のヤツは放っておけばいい」という対応だったそうで、その結果冷え切った空気ができてしまったそうです。

酒井君

―聞けば聞くほど、大人も子供も変わらないって思いますね。

K・エーイ氏

部下が上司を無視しても、それで仕事や評価に影響が出ないなら上司はよくやっていると思います。ただ、影響が出るようなら上司はちょっと良くないですね。

酒井君

―その部下の人は仕事しにくくないんですか?

K・エーイ氏

当然しにくいでしょうし、ストレスもあるでしょう。また、本来なら上司を通して受けられるはずの仕事についての様々な指導も受けられないなら損は多いんじゃないでしょうか。私の昔の職場のケースでは、1年後には退職していましたね。

実は多い職場の同僚が同僚にする無視

お互いに無視する同僚の女性

K・エーイ氏

上司と部下の関係だけでなく、やはり同僚同士での無視はよく見られます。経験上は女性主導で生じることが多いように感じられます。

酒井君

―そんなこと言うと男女差別だって言われますよ。

K・エーイ氏

いやいや、「経験上」って言ってるじゃないですか。私の経験をもう少し信じてください。女性って、無視の使い方が上手っていうか、強烈なんですよ。だから目立っているのかもしれません。

酒井君

―軽い冗談のつもりでしたが失礼しました。同僚の無視について詳しく教えてください。

K・エーイ氏

女性って、職場では頑張って愛想よくしている方が割と多いんですね。それが男性社員にはモチベーションや癒しになったりするので助かるんですけどね。

酒井君

―ポイント取り返そうとしてませんか(笑)?

K・エーイ氏

してません(笑)!で、そんな女性が急に無視するようになると、その落差が際立つんです。明確に「アナタが嫌い」ってメッセージを発しているんですよね。口にはしませんけど。

酒井君

―なるほど、落差があるから強烈なんですね。

K・エーイ氏

それだけでなく、必要に応じて接する時も素っ気ないですし、周囲からは男性よりは女性の方を応援する声が多くなったりします。「お前、○○さんに何かしたのか?」みたいに犯人扱いされて立場が悪いです。

酒井君

―女性社員とはうまくやっていこう、うん。

K・エーイ氏

女性同士の場合もやはり無視があって、この場合は感情のもつれや誤解が多いようです。男性同士の場合はメンツを潰されたとか、仕事の大きなミスで愛想をつかされた場合などがありますね。

酒井君

―同僚の間でも色々あるんですね。それにしてもやっぱり無視するって言うのは大人気ないような気がします。

K・エーイ氏

最初にも言いましたが、やはり社会人で企業に雇われている立場ですから、企業の利益のために私心はすべて飲みこんで、必要な働きをするべきだと思います。もしも仕事に支障が出ていなくても、職場に微妙な雰囲気をもたらしていることをちゃんと理解しなくてはならないですね。

職場で気に食わない人に無視をする心理とは

耳をふさぐ男性

酒井君

―大人の社会でも無視するってことはたくさんあるんですね。何だか不思議な感じです。

K・エーイ氏

本当に嫌な相手なら、会わないのが一番なんですが、職場だとどうしても避けられませんよね。無視する人の立場になってみると、いろんな理由が考えられるんです。

酒井君

―たとえば?

K・エーイ氏

ぜひ酒井君も考えてみてください。嫌な上司がいて、顔も見たくないならどうしますか?

酒井君

―できるだけ避けます。接点も必要最小限にします。

K・エーイ氏

ですよね。その状態が「無視」って言われたりするんです。

酒井君

―え?無視しているつもりは無いんですけど。

K・エーイ氏

世代によっては、部下は上司の動きや様子にいつも注意を払うべきと考えていたりするんですよ。

酒井君

―「何それ」って思いました。上司は取り入るものってことですか?

K・エーイ氏

王様のようにとまでは言いませんが、会社組織の中で、上司は立てるものだったからでしょうね。上司を気分よく仕事させてあげる人が良い部下のように見られることも昔はありました。

酒井君

―僕、そういうのは無理かも。他にどんな心理で無視するんですか?

K・エーイ氏

たとえば、上司や先輩の立場だったら「何か気づいてほしい」という期待から無視する人もいます。ワンマンプレーが目立つ部下に、協力することや指示・判断を仰ぐことを覚えさせたいということで行うこともありますね。

酒井君

―なるほど。そういう場合もあるんですね。

K・エーイ氏

残念ながらあまり良い方法ではないですけどね。ただ、同僚でも上司でも部下でも、単純に「気に入らないから接したくない」場合が最も多いでしょうね。気に入らない理由は様々にあると思いますが、どちらが悪いかというのはケースバイケースです。第三者がちゃんと事情を聞かないと解決には結びつかないでしょうね。

酒井君

―本人どうしが直接話し合ったりしちゃダメなんですか?ビジネスマンガだと、気に入らない相手がいたら何かと勝負をふっかけて来て、負けた方が職場を去ったりしますけど。

K・エーイ氏

それはマンガの読みすぎです(笑)。まあ、本人同士が直接話し合うくらいなら可能かもしれませんが、無視って多分一番ローリスクな攻撃方法なんですよ。何か言われても「何もしてません」って言えますから。直接話して関係や立場を悪くするよりずっと楽なんですよね。

酒井君

―でも、気分は悪いままでしょう?

K・エーイ氏

そうなんです。そこが問題ですね。自分がもっと嫌な気持ちになるのを抑えられる代わりに、スッキリとすることはありません。継続するにもストレスがかかりますので、よほど精神的にタフな人でないと長続きしないでしょうね。

酒井君

―やっぱりそういう所から心の病が出てしまったりもするんですか?

K・エーイ氏

はい。無視した人でも、無視された人でも心の病は出ているようです。基本的にどちらもストレスがかかりますし、無視っていうのは相手を「見なかったことにする」行為ですが、実際すごい意識しているんですよね。過度な意識をするようになればストレスは少なくありません。無視を止めるのも自分が悪いことを認めるみたいで葛藤があるようです。

職場の無視を解決するためにはどうすればいい?

こめかみに手を添えながらそっと後ろを伺う女性と背後から話しかけてくる同僚たち

酒井君

―職場の無視って難しいですね。小さい子供のように、ちょっとポコポコ叩きあって解決したらいいんですけどね。

K・エーイ氏

ダメダメ。暴力はダメです。もう子供の世界でも、そんな単純じゃなくなってますよ。ましてや大人は殴り合えば大怪我になりますし、周囲の物品の破損などもシャレにならなくなりますから不可能です。ケガでもしたら翌日以降の仕事に間違いなく影響が出ますので社会人失格ですしね。

酒井君

―本当に困った。どう考えてもスッキリしませんね。

K・エーイ氏

職場の無視の問題を解決することは、病気を手術するようなことなのかもしれませんね。ちょっと痛みがあるとしても、思い切って話してみるなど問題解決に動くことが必要だと思います。長引いても良いことはありませんし、もし他の人にも無視が伝染ってしまえば、より抜け出すのが難しくなってしまいます。周囲にも少なくない迷惑をかけるでしょうし。

酒井君

―職場で無視が起こらないようにするのが一番ですね。

K・エーイ氏

はい、そうですね。病気はかからないようにするのが一番であるように、職場で無視の問題が起こらないようにするのが一番です。

酒井君

―職場の無視を防ぐにはどうしたらいいとエーイさんは思いますか?

K・エーイ氏

私見になりますが、一番大事なのはそれぞれが社会人としての自覚を持つことだと思います。自分の感情を優先させるのではなく、組織の一員として役割を果たすことを第一に考えるべきです。好き嫌いや何か気に入らないことがあっても、与えられた役割を忠実に果たそうという気構えが必要ですね。

酒井君

―気構えがあれば、人間関係で何かあっても無視はしなくなるっていうことですね。

K・エーイ氏

はい。それから、当然、職場で無視されるような状況を作るのはよくありません。人は千差万別ですから、何によって気分を害してしまうかわかりません。そういう中で円滑な人間関係を作るためのビジネスマナーですから、形だけでなく根本的な考え方に至るまで、しっかり身に着けて実践するべきです。

酒井君

―ビジネスマナーって、いかにもビジネスライクっていうか、距離を感じるんですけどそれでいいんですか?

K・エーイ氏

それでいいんです。適度な距離がある方が仕事はしやすいですから。逆にもっと距離を縮めたければ、プライベートで付き合えばいいでしょう。チームワークや家族的な雰囲気を大事にするという理念があったとしても、それは決して公私混同ではありません。職場における無視が社内の会議で決まることはありませんから、すべてプライベートを仕事に持ち込む行為でしかないんです。

酒井君

―ビジネスマナーってそういう効果もあるんですね。

K・エーイ氏

職場における無視は、互いを尊重するというビジネスマナーの基本が失われている状態です。ぜひ、社会人らしい振る舞いを期待したいですね。

酒井君

―職場における無視って、確かに一種の公私混同ですよね。それがいけないと思っていてもやってしまう所もありますから、社会人としての自覚をもって解決しなくちゃいけないですね。貴重なお話、ありがとうございました。

職場で無視が起こるのは公私の区別ができていないから

職場における無視は、上司から部下、部下から上司、同僚同士と、立場に関係なく起こっています。いずれの場合も理由は様々にあれど、根本的には相手が気に入らないと感じているものです。人間誰しも好き嫌いはありますが、それが仕事に影響するなら社会人失格。公私をしっかり区別し、社会人として互いに尊重しあい、能力を発揮できる環境作りを目指しましょう。