地方公務員になるには?職務内容と募集の特徴

地方公務員になるには、情報収集が重要です。地元で働きたい、地方自治体の役に立ちたいという方から人気の地方公務員にはどのような職種があるのか、公務員試験の受験資格や試験方法、給与体系、将来の展望など、地方公務員を目指す方が知っておきたい情報を具体的に解説します。

地方公務員になるには?職務内容と募集の特徴

地方公務員になるには何をすべきか

地方公務員とは、都道府県庁ならびに市町村役場といった地方の公的機関で働く公務員のことを指します。また、警察官や消防官といった公安系の職種、学校や図書館、病院で働く職種も含まれています。「生まれ育った地元のために地方公務員として働きたい」と考える人も多く、新卒・転職問わず目指す人が多い職業です。

地方公務員になるためには、正確な情報収集と試験対策が必須です。地方公務員を職業として視野に入れ始めた人に向けて、地方公務員の募集の特徴や試験方法、具体的な職務内容について詳しく解説します。

地方公務員になるには地方公務員試験に合格する必要がある

教室内で地方公務員試験を受けている人達

地方公務員になるには、各地方自治体が実施している採用試験を受験して合格する必要があります。採用試験の受験資格は各地方自治体によって異なりますが、おおよそ一般的に上級(大卒程度)、中級(短大卒程度)、初級(高卒程度)に分類されます。ここで重要なのは「上級(Ⅰ類)」「中級(Ⅱ類)」「初級(Ⅲ類)」という分類は、あくまで試験の難易度を示しており、受験資格を区切っているわけではないということです。例えば短大卒の人が上級(Ⅰ類)の採用試験を受けることも可能です。

いずれにしても、各地方自治体や年度によって試験概要や受験資格は変更があるため、最新の情報を自分で得る必要があります。

1 地方公務員上級(Ⅰ類)採用試験

受験資格は、受験年度の4月1日時点で21歳以上30歳未満の人です。採用試験は1次試験と2次試験の2部から構成されており、1次では筆記試験、2次では個別面接・グループディスカッション等が行われ、どちらにも合格する必要があります。試験の難易度は大卒程度です。各地方自治体によりますが、行政系、心理系、福祉系、技術系などに分かれています。

2 地方公務員中級(Ⅱ類)採用試験

受験資格は各地方自治体によって異なりますが、年齢制限があります。試験の難易度は短大卒程度で、筆記中心の1次試験と、個人面接・グループディスカッションの2次試験の両方に合格する必要があります。

3 地方公務員初級(Ⅰ類)採用試験

受験資格は各地方自治体によって異なりますが年齢制限があり、試験の難易度は高卒程度です。筆記中心の1次試験と、面接の2次試験の両方に合格する必要があります。最も年齢制限が厳しいため、短大卒や大卒といった他の学歴の人が受験しにくい採用試験でもあります。

4 その他

警察官や消防士といった公安職、福祉系や心理系などの専門職、司書、栄養士、保育士、臨床検査技師、診療放射線技師、保健師などの資格免許職は各資格試験を受けて合格する必要があります。

地方公務員試験に合格するにはちゃんとした対策をする

上級(Ⅰ類)、中級(Ⅱ類)、初級(Ⅲ類)のいずれも1次試験である筆記試験で足切りに合わないよう、それぞれの試験レベルに合わせた対策が必須です。2次試験である面接については、上級は明確な志望動機だけではなくグループディスカッションでどのような役割を果たしているか、チームの中でどのような立ち回りが出来る人であるかまで確認されています。学校や予備校などで、模擬面接・グループディスカッションを念入りに行っておく必要があるでしょう。

グループディスカッションをしている就活生達

一方、高卒の受験者が多い初級(Ⅲ類)の面接では、社会経験の少なさが考慮に入れられているため、上級(Ⅰ類)、中級(Ⅱ類)ほどのレベルは求められていません。面接での受け答えの技術よりは、若さと将来性を自分の言葉で効果的にアピールする方法を考えておくことを心がけるとよいでしょう。

地方公務員に向いている人とは「人の役に立ちたい」という気持ちがある人

地方公務員は、国家公務員と比べて地域密着型の仕事といえます。職務上、県庁や市役所などの役場の窓口での応対をはじめ、地域住民との交流が多くなります。老若男女問わず、人との関わり合いの中で仕事をすることにやりがいを感じる人やコミュニケーションをとるのが得意な人が向いているといえるでしょう。一人で出来る仕事ではないため、チームで仕事を行える人も地方公務員の適性があります。

また、市民から信頼を得られるような人間性も重要です。利益を追求するのではなく、誰かの役に立ちたいという気持ちをもった人こそ、地方公務員になるべき人です。

地方公務員は特別職と一般職に分かれている

地方公務員は、特別職と一般職に分かれています。知事や副知事が特別職それ以外が一般職と呼ばれています。地方公共団体全般の運営を行っていますが、職務内容は職種によって大きく異なり、多岐に渡ります。いずれの職種においても、各地方自治体の管轄のもと、自治体のために働く立場です。

地方創生が叫ばれるようになった近年、都会の民間企業で働いてきた人が「自身の故郷である地方のために働きたい」「地元を活性化させたい」という思いのもと、中途採用試験を受ける例も増えてきています。

地方公務員の種類

公務員全体の約8割が地方公務員で、さまざまな職種があります。地方公務員は3年から5年おきに異動があるため、さまざまな職種を経験できます。

1 事務職

オフィスで働いている事務職の女性

各都道府県庁や市町村町役場、税事務所・土木事務所といった都道府県庁などの出先機関、警察署や消防署のバックオフィスなど、働くフィールドはさまざまですが事務全般を行います。

2 技術職

土木・建築・機械・電気・化学・農業・林業などの専門的な技術を要する職種で、大学で学んだ知識を直接的に生かせる職種です。大部分の自治体で安定して採用があるのは、土木・建築・機械・電気の4部門です。

3 公安職

各地域の治安維持や安全を司る、警察官や消防士を指します。消防士は火災以外にも、山の土砂災害や水難事故などにも駆けつけて人命救助を行います。

4 教育職

子供の世話をする笑顔の保育士

公立の小学校、中学校、高等学校の教師、また保育士も含まれます。保育士であっても保育園から他の保育園へ、保育園から児童福祉施設へなど転勤を命ぜられる場合があります。

5 一般行政職

地方選挙で選ばれた政治家が決定した地方行政の諸事項を、具体的に実現していくのが一般行政職の職務です。

地方公務員の職員数

平成28年4月1日時点で、全地方公共団体において273万人以上が地方公務員として働いています。平成6年をピークとして平成7年から22年連続して減少しています。部門別職員数は、一般行政が91万人以上で全体の33%を、福祉(一般行政に含まれる)・教育・警察・消防部門が183万人以上で67.0%を占めています。また、職員数に関する部門別の特色は次の通りです。

表. 全地方公共団体部門別職員数(平成28年4月1日時点)

一般行政 福祉関係以外 546,305人
(20.0%)
福祉関係※ 364,575人
(13.3%)
教育部門※ 1,021,527人
(37.3%)
警察部門※ 286,971人
(10.5%)
消防部門※ 160,327人
(5.8%)
公営企業等会計部門 357,558人
(13.1%)

引用元:総務省「地方公務員数の状況」
(※は国が定員に関する基準を幅広く定めている部門)

1 福祉関係を除く一般行政

議会、総務・企画、税務、労働、農林水産、商工、土木が含まれます。国の法令等による職員の配置基準が少なく、地方公共団体が主体的に職員配置を決める余地が比較的大きいといえる部門です。一般行政部門の職員数は、子育て支援、防災、地方創生等への対応のため福祉関係も含めて増加しています。

2 福祉関係の一般行政

民生、衛生が含まれます。国の法令等による職員の配置基準が定められている場合が多く、また、職員配置が直接住民サービスに影響を及ぼす部門です。

3 教育・警察・消防部門

街に駐車している消防車とパトカー

国の法令等に基づく配置基準等により、地方公共団体が主体的に職員配置の見直しを行うことが困難な部門です。教育部門の職員数は児童・生徒数の減少などに伴い減少しています。警察部門および消防部門については、組織基盤の充実・強化のため職員数が増加しています。

4 公営企業等会計部門

病院、水道、交通、下水道、その他が含まれます。独立採算を基調として、企業経営の観点から定員管理が行われている部門です。組織の見直しや民間委託により職員数は減少しています。

地方公務員になるには身を粉にして働く心構えが大事

いうまでもなく、公務員は自分の利益ではなく、市井の人々の生活を守るために身を粉にして働くことが求められます。その覚悟なくして地方公務員を目指すことは許されないといっても、決して過言ではありません。

近年、公安職以外は職員数の削減が常に求められています。税金から給与が支払われることの重みを自覚し、毎日効率よく業務を遂行すべく、適切なスキルを身に着けておきましょう。

職務上、市民から持ち込まれる相談などの個人情報を扱うことが多くなりますので、秘密を厳守できるかという適性も重要です。これらのことをよく考え、地方公務員になるべき人間であるかを十分に検討したうえで試験に臨みましょう。