国家公務員になるには?採用までの主な流れと試験内容

抜群の安定力を持つ公務員、中でも国家公務員はエリートである象徴としての役割も担っています。今回はその国家公務員になるにはどのような過程があるか、また、国家公務員にはどういった種類があるのかについて詳しくまとめました。

国家公務員になるには?採用までの主な流れと試験内容

国家公務員になるにはどうすればよいのか

抜群の安定性を持つ公務員の中でも、国家公務員という職種は羨望の眼差しを向けられることが多いものです。しかし、そう言ったエリートの方々はどのような道を経て今の職業に就いているのでしょうか。

今回はこの国家公務員になるにはどのような過程が必要なのかをお伝えします。これから国家公務員になろうとしている方が採用されるまでの道筋を簡潔にまとめましたので、ぜひ役立ててみてください。

そもそも国家公務員とは?

国家公務員は国の業務に携わる公務員のことです(注1)。国益を考え、暮らしやすい社会を作る使命を持っています。対象は日本全国となるため転勤の可能性が高いです。

国家公務員になるには国家公務員試験を受けることが必要となります。現在では、総合職・一般職・専門職・経験者採用の4つの体系のもとで試験が大別されています。

国家公務員と地方公務員の違い

日本全国が対象となる国家公務員は、転勤の可能性が高いもののそれだけの経験を積むことができます。その経験をもとにその道のエキスパートになることができます。

国土交通省の庁舎

一方、特定の地域での職務がメインとなる地方公務員は、地域に密着した取り組みを多くこなすことになります。そのため、転勤の可能性は低く、長期間にわたり地域住民との接点が多くなります。

国家公務員と地方公務員とでは受験する試験とプロセスが異なります。国家公務員になりたいのであれば国家公務員試験、または地方公務員になりたいのであれば地方公務員試験といった風に区別されています。

地方公務員の場合は採用試験に合格後、採用候補者名簿に登録され、自治体の各部署や行政委員会によって選ばれることで正式採用となりますが、国家公務員になるには、採用試験に合格したあとに採用候補者名簿に登録までは同じですが、官公庁訪問での採用面接をクリアしなければなりません。

国家公務員になるまでの主な流れ

では、国家公務員になるには具体的にどのような手順を辿ればよいのでしょうか。国家公務員として採用されるまでには基本的な3つのステップがあります。

1 採用試験を受ける

試験会場

まずは採用試験に合格しなければなりません。国家公務員試験は総合職・一般職・専門職・経験者採用の4つの体系に分かれ、基本的には1次試験、2次試験とつながります。

試験によりスケジュールは異なりますが、例えば総合職試験の場合だと、採用試験の申込は4月の上旬~中旬にかけて行われます。一次試験は5月に行われ、筆記・政策課題討議の二次試験は7月から8月にかけて行われます(注2)。かなり長期にわたる試験となるため、しっかりとしたスケジュール管理をしていかなくてはいけません。

この試験に合格すると採用候補者名簿に登録され、直接の採用先である官庁を訪問し、面接を受ける権利をもらえます。

2 官庁訪問をする

残念ながら試験に合格してもすぐに採用になるわけではありません。最終合格発表を確認後、官庁訪問が開始されます。

書類をもつスーツ姿の男性

希望する府省への訪問を連絡し、そこで府省に対する知識を深める目的もありますが、ここでは採用に向けた大切な自己PRの機会になります。官庁訪問での面接は複数回行うのが通例であり、面接に合格するごとに電話による連絡が来ます。

面接をするにあたり、民間企業でいうエントリーシートと同様の面接カードを記入します。このカードは最初の面接時に提出することになり、原本とコピー一部を提出します。この面接カードに沿って各段階の面接がとり行われます。そのため、この面接カードのコピーは2部刷っておき、一枚は自分用の控えとして取っておくとよいでしょう。

この官庁訪問も合格を左右する大切なステップになります。この面接が何段階あるのかや、面接の内容というのは各省庁によって異なります。事前の情報収集や準備をしっかりと行う必要があるでしょう。

3 最終面接を受ける

晴れて官庁訪問による最終面接で合格をもらえたら、その省庁管轄の部署の内定がもらえます。
正式な採用は4月1日ですので、それまでに不用意な行動は慎みましょう。また、公務員の内定は法的に有効なものではありませんので、採用されるまでは気を抜かずに情報収集に努めましょう。

国家公務員試験の種類とその内容は?

国家公務員として働くためには、総合職試験、一般職試験、専門職試験、経験者採用試験のいずれかをクリアする必要があります。

自分がどのような業務に就きたいのかや、専門としたい分野、あるいは自分の経歴から受ける試験内容は異なります。それらを把握するためにも各試験の概要を掴むことは重要です。

総合職試験

総合職試験の受験資格

総合職試験の受験資格者は21歳以上30歳未満の大学あるいは大学院卒業者です。もちろん、卒業見込みの方でも受験することは可能となります。この試験によって国家レベルの政策や企画の立案を行う総合職の採用の基準にします。

試験は一次試験、二次試験と続き、大学卒業者と大学院卒業者とで試験内容が異なります。
(司法試験合格者を対象とした法務区分、教養区分での受験の場合は今回ご紹介する試験内容と異なります)

大学卒業者の場合
一次試験では基礎能力と専門分野(1科目)の試験が行われます。この2つの試験はともに選択式で行われます。さまざまな科目があり、大学で専攻した内容と過去問を比べて対策をしていくとよいでしょう。
二次試験では専門試験(記述式、1科目)、政策論文試験、人物試験、英語試験が課されます。

大学院卒業者の場合
一次試験では、大学卒業者と同様に基礎能力と専門分野(1科目)の試験が課されます。ただし、専門科目は異なるため、より深い内容が問われると考えておいてください。試験方式は多肢選択式です。
二次試験においては専門試験(記述式、1科目)、政策課題討議試験、人物試験、英語試験と、大卒者の場合と同様です。

一般職試験

事務職員が会話

法律や政令の執行などに関わる事務処理等へ携わる係員の採用基準となるのが一般職試験です(注3)。この試験の資格者は高校・大学卒業者や40歳未満の社会人が対象となります。

試験は大学卒業者と高校卒業者および社会人とで区分されており、どちらの区分においても一次試験、二次試験と続きます。

大学卒業者の場合
大学卒業者に対しては行政区分とそれ以外の区分があります。行政区分での一次試験では多肢選択式の基礎能力と専門分野の試験および一般論文試験があります。この試験に合格すると二次試験、人物試験を課されます。

行政区分以外ですと一次試験が多肢選択式の基礎能力および専門分野の試験、さらに記述式の専門試験が課されます。その後の二次試験については行政区分と同様の人物試験が課されます。

高校卒業者・社会人の場合
高校卒業者および社会人(係員級)に対しては事務区分とそれ以外の区分があります。
事務区分での一次試験では多肢選択式の基礎能力および適正の試験と作文の試験が課されます。この試験に合格後、人物試験が課されます。事務区分以外では作文試験が課されず、他の試験は事務区分と同じ内容が課されます。

専門職試験

白衣の研究員

専門職試験では、特定の行政分野についての専門知識を持っているかを重視されます(注4)。この試験では希望する業務によって内容が異なり、大卒程度と高卒程度の二種類に分類されて行われます。

大学卒業程度の場合
一次試験には多肢選択式の基礎能力と専門分野の試験、記述式の専門分野、論文の試験、外国語試験があります。それに続き、二次試験では人物、身体検査、身体測定、体力検査、外国語試験を受ける形となります。これらの試験を全て行うわけではなく、希望する職務によっていくつかの試験を実施します。

高校卒業程度の場合
一次試験で多肢選択式の基礎能力および学科試験、記述式の学科、作文の試験、実技の試験があります。続く二次試験は大学卒業者の試験内容とほぼ同じですが、外国語試験がないという違いがあります。高校卒業者も同様に、全ての試験を課されるのではなく、いくつかの試験を課されることになります。

経験者採用試験

経験者採用試験は、高度な知識や技術を持ち、かつ民間企業等での実務経験を募集する官職へ活かしてもらうために実施する試験です(注5)。この試験の採用官職は年毎に変わり、受験資格および試験種目もその官職によって異なります。

この試験では調査研究や企画立案などの事務を担当する係長級(事務)と、それ以外の職務を行うものとで区分されています。前者の場合は最終学歴から2年が経過している方、後者の場合は大学卒業から5年あるいは高校卒業から9年が経過している方が対象となります。

係長級の場合
係長級では一次試験に多肢選択式の基礎能力試験と経験論文試験があります。その後、二次試験で人物試験、政策課題討議試験が課されます。

係長級以外の場合
係長級以外では、一次試験の基礎能力試験と二次試験の人物試験をベースに対象官職を踏まえた試験が課されることになります。

国家公務員になるには様々な試験をクリアする必要がある

国家公務員はその道を極めることができ、その採用の幅も広くなっています。しかしながらその門は非常に狭く難しいものです。

国家公務員になるにはどうすればよいのかお悩みの方には、今回お伝えした4つの試験体系と採用までの3つのステップを参照していただき、合格までのビジョンの手掛かりにして頂ければ幸いです。試験に合格=採用ではないので、くれぐれも間違えず正式な採用である4月までは気を抜かないようにしましょう。

参考文献