退職金の平均~中小・上場・公務員で最も有利な勤め先は?

退職金の平均支給額は事業規模や民間、公務員によって違います。退職金は退職後の生活を保障するもので、就職時の企業選びの基準にもなる大切な要素です。退職金の平均支給額、就業形態、勤続年数、男女差などについて紹介します。

退職金の平均~中小・上場・公務員で最も有利な勤め先は?

就職前に知っておきたい退職金の平均金額

普段の給与とは別で計算され、「見えない給与」とも言われる退職金。普段は数字として意識することが少ないだけに、自分の退職金や周囲の退職金についてはあまり知識がない人も少なくありません。企業規模や、民間企業か公務員かといった違いで退職金の額面も大きく変わってきます。退職金の平均について統計情報から目安を紹介します。

退職金についての基礎知識

退職金の平均金額について触れる前に、退職金について少し説明します。退職金というのは、企業を退職する際に企業から支給される金銭を言います。目的は退職後の生計の安定にありますが、賃金の一部を積み立てて後払いするという形を取っています。

多くの場合、給与額や勤続年数、退職理由などを考慮して算定します。傾向としては、給与額が高いほど、勤続年数が高いほど退職金の支給額は高くなります。退職理由については定年の場合を満額と考え、会社都合による退職、自己都合による退職となるにつれて、企業の規定する割合で支給額が減額されていきます。

退職金の支給は一時金としてまとまった金額が支給されるケースや、年金払いによって支給されるケースがあります。企業で決定している場合や選択できる場合があります。近年は退職金の廃止や選択制を取る企業も多くなっており、支給金額も減少傾向にあります。

中小企業の退職金の目安は1000万円。バラつきが大きく平均値は予想しにくい

階段を上っていくサラリーマンと舞う紙幣

中小企業の退職金については、誰もが耳にしたことがあるような大手の上場企業や公務員と比較すると少ないと言われています。これは実際の支給額が必ずしも少ないとは限りませんが、法律上は企業側に退職金制度を定める義務が無いことから、退職金制度のない企業も多くなっているためです。

平成28年版の東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」によれば、中小企業のモデル退職金(就学後、すぐに入社し定年まで平均的な水準の能力と成績で務めた場合の退職金)は次の通りです(注1)。

  • 高校卒:1082万9000円
  • 高専・短大卒:1030万5000円
  • 大学卒:1138万9000円

この数字からは、中小企業の退職金の目安は定年まで勤め上げた場合で1000万円と考えられます。ただし、上記の数字は平均賃金が最も高い東京都の企業のデータであり、退職金の基準額の算出に使われることの多い賃金の平均水準が低い地方では、より厳しい数字となります。また、中小企業は経営環境の変化によって倒産する可能性も比較的高いために、モデルケース通りに支払われない可能性もあります。

中小企業においては、上記数字は参考にはできますが、企業ごとの制度や経営環境によるバラつきが多いため、退職金の平均値を完全に予想するのは難しい状況です。

上場企業の退職金の平均は2000万円以上

鞄に詰め込まれた札束

上場企業における退職金の平均値は、事業規模が大きく経営状況も安定していることから、中小企業より高くなっていることがほとんどです。上場企業だけを対象にした退職金に関する統計情報はありませんが、類似するものとして経団連の「2016年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」の数字を紹介します(注2)。日本を代表する大手企業や団体が所属している経団連所属企業の退職金は、総合職のモデルケースで以下の通りとなっています。

  • 高校卒:2047万7000円
  • 大学卒:2374万2000円

この数字を考えると、上場企業の場合はモデルケースの目安は2000万円程度と考えられます。

上場企業においては、退職金制度を備えている企業が中小企業に比べて多く、就業規則の中にしっかりと退職金に関する規定があります。経営状況によるリスクも少なく、退職金を受け取りやすいと言えます。退職金だけでなく、企業年金を備えていて定年後の生活の安定に配慮している企業もあります。

公務員の退職金は割高も、支給対象は減少傾向

都庁ビル

公務員は退職金などの条件が良いと言われますが、平成27年度の内閣府による「退職手当の支給状況」を見てみると、その条件の良さがわかります。大卒の総合職にあたる常勤職員に相当する国家公務員の場合、35年~40年の勤続年数でもらえる平均退職手当は2405万1000円となっていて、これは上記の大手企業の大学卒の数字よりも高くなっています(注3)。

地方公務員はこの水準よりは少し下がりますが、一般的に公務員の給与水準は中小企業以上、上場企業以下と言われています。給与水準から考慮すると、公務員は上場企業よりも退職金の割合いは高めだと考えられます。何より、経営状況によって支給額が減ったりゼロになるリスクがないことは安心です。

公務員の退職金の平均は、モデルケースで上場企業並みの2000万円程度と考えられます。上場企業と同水準か、リスクが少ない分、好条件と言えます。ただし、一口に公務員と言っても職種は実に多様で、職種によって数字は大きく変わりますので、一つの参考程度にしてください。

公務員も人数・給与共に削減の方向になっており、正職員は減少傾向で、非常勤職員や臨時職員での雇用形態が増えています。そのため、退職金を受給できる就業形態や退職金の支給額は少なくなりつつあることに留意する必要があります。

退職金の男女差の有無は制度上は「無い」が実際には「有る」

男女社員が対話

退職金の平均支給額には、制度上は男女差は見られません。ただし、退職金の支給額を算定する方法は企業によって様々となっています。たとえば、基本の給与を基準に、「勤続年数」や特定の「評価による係数」を掛けて計算する企業が多くなっています。この算定式の上では男女差はありません。

しかし、勤続年数の査定の際に産休・育休がカウントされないケースや、評価による係数の算定の際に産休・育休が不利になることがあります。また、男性と比較すると女性は職務に集中することが難しい状況があるため、出世で不利になることがありますが、役職が退職金の査定に関わる場合は不利が重なることもあり、男性と比較すると差がつく可能性があります。

総じて、現状は同じように働くとするなら、退職金の男女差は「有る」と言えます。

勤続年数は退職金に大きく影響する

上記の数字を見て、高卒と大卒の退職金の金額にはそれほど差がありません。これは、高卒者は大卒者よりも4年は勤続年数が長くなるからです。退職金の算定基準は一律ではありませんが、基本的に勤続年数が考慮されています。退職金の積み立て額の上昇率は勤続年数が上がるほど高くなる傾向が見られ、また退職金の支給条件として一定の勤続年数を課している企業も多いです(3年以上が最も多い)。

こうした算出基準は、勤続年数が長いほど企業への貢献度が大きいという考えと、勤続年数が長いほど生計を支える家族が多くなるため、退職後の生活を支える必要性が高くなるという考え方によって作られています。そのため、転職の回数が多くなるほど、基準になる給与額に違いが無いなら、定年時の退職金の合計額は一つの企業で勤め上げた人と比較して少なくなります。

知っておきたい退職金の税金の話

退職金にかかる税金の計算

退職金は退職後の生計を支える目的で支給されるものであるため、税金面で優遇されています。たとえば、1000万円の退職金があった場合、通常の所得税として計算するなら33%の税金がかかり、330万円の税金を支払う必要があります。一時所得として計算するとしても、その半額が他の所得と合計されるため、100万円~250万円の税金を支払う必要が生じます。

しかし、退職金の計算では退職所得控除という制度があり、勤続年数によって所得税の控除が受けられるようになっています。退職所得控除は、以下のように計算されます(注4)。多くのケースでこれはマイナスになり、税金を支払う必要はほとんどありません。支払う場合も少額になるケースがほとんどです。

勤続年数20年以下:40万円×勤続年数
勤続年数20年以上:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

退職金の平均は中小企業<上場企業<公務員

統計から退職金の平均値を比較すると、中小企業<上場企業<公務員となり、目安は以下のように考えられます。

  • 中小企業:1000万円
  • 上場企業:2000万円
  • 公務員:2000万円

上場企業と公務員の間には目安の差はありませんが、リスクが少ない点で公務員の方が好条件と言えます。ただし、企業によって給与も退職金制度も様々になりますので、必ずしもこの通りではないことに注意が必要です。

退職金制度を導入している企業の割合は現在減少傾向にあり、また退職金の支給額も少しずつ減り始めています。退職後の生活の保障は年金制度などもありますが、退職後の生計を計画することは徐々に個人の責任となりつつあります。そのため、退職金についても考慮して就労先を選んでおくと安心です。

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