パタンナーになるには?仕事内容や給与事情を知ろう

パタンナーはファッション業界に欠かすことのできない職業です。デザイナーが描いた画から型紙を作成する技術以外にも、モノづくりで必要なコミュニケーション能力や納期に間に合わせるためのタスク管理といったスキルが必要になってきます。今回はパタンナーの仕事内容や勤務実態等の説明をします。

パタンナーになるには?仕事内容や給与事情を知ろう

パタンナーの仕事内容や勤務形態が知りたい!

私たちが普段何気なく身に着けている洋服やアクセサリー、靴などが、どのように作られているか考えたことはありますか。季節ごとに商品が変わり1年ごとに流行が移り変わる、流行り廃れの流れが非常に早いファッション業界の中で、トレンドを常に生み出しているのがファッションデザイナーという職業です。しかしデザイナーも「パタンナー」が居なければ、この世に服を生み出せません。

パタンナーは数多くあるファッション業界での仕事の中で、トレンドを世に発信する役割として最も重要なポジションにいます。今回はそんなファッション業界におけるトレンドのプロフェッショナルであるパタンナーの仕事に焦点を当てていきます。

パタンナーの仕事内容とは

ファッション業界への就職を志した人なら耳にしたことはあるかもしれない「パタンナー」という職業。しかし実際はどのような仕事をしているのか想像がつきにくい職業でもあります。ここでは、あまり実態が知られていない「パタンナー」の仕事内容について解説していきます。

デザイン画をもとに型紙をつくる

パタンナーとは、ファッションデザイナーが作成したデザイン画をもとに「型紙」をつくる専門職です。洋服をはじめとする服飾製品は、全て始まりは1枚の布です。デザイン画を元にデザイナーの意図を汲んで人間がきちんと身にまとうことができるよう立体的な服飾製品にするための型を起こすのがパタンナーの仕事です。

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デザイン画から具体的な服のシルエットや着心地などをきちんと考えながら型紙を作成し、服のサンプルをつくっていきます。製品の最終的な良し悪しはパタンナー次第といわれるほど、服飾業界において重要な位置を占めています。

仮縫い→修正→本番用の型紙を作る

服飾製品ができるまでには4つの工程があります。

まずはデザイン画を見ながら型紙を作成し、最初に起こした型紙を「ファーストパターン」といいます。次に、ファーストパターンを元に安い生地を使って仮縫い、もしくはピン打ちして実際のデザインやシルエットの確認をします。この「トワルチェック」の時、トルソー等に着せてバランスを見ます。

3工程目は「修正チェック」です。デザイン画を描いたファッションデザイナーと一緒に、トワルを見ながら改善点等を見つける工程で、トワルチェックと併せて行われることもあります。最後に「サンプルパターン作成」を行います。修正チェックでの改善点やデザイナーからの要望を元に直した型紙で、実際に使う生地で縫うための型紙を作ります。このとき、縫製のことを考えて縫い代をつけたり、縫い方の説明書などを作ったりすることもあります。これらの工程を経て製品となる場合は、服飾製品のサイズごとに型紙をつくっていきます。

パタンナーとデザイナーの違い

洋服のデザイン画を描くデザイナー

服飾製品のデザイン画を描くのがファッションデザイナーの仕事ですが、パタンナーは描かれたデザイン画から完成品を想像し、実際に型紙・サンプルをつくり、量産化ができるようにするまでの責任を担います。

パタンナーは「服飾業界の縁の下の力持ち」といえます。デザイン画を描いただけでは洋服は完成しませんし、反対に型紙を作るためには参考(元)となるデザイン画が必要です。服飾製品を作るためにはファッションデザイナーとパタンナーが二人三脚の関係になり、両者がともに助け合う深い関係を築きながら働いています。より良い製品をつくるためには、デザイナーとパタンナーの両者とも高いスキルを持つ必要があるため、日々スキルアップが必要です。

パタンナーになるためにはどうしたらいいの?

いざ、パタンナーになろうと思ってもどのような方法を使えば就職できるのでしょうか。確実にパタンナーとして就職ができる王道の方法と、未経験からパタンナーを目指す2つの方法をご紹介します。

学校へ通ってパタンナーになる

型紙の図面

服飾製品のプロフェッショナルであるパタンナーになるためには、服飾系専門学校または服飾系学科のある大学で学んでからアパレルメーカーなどに就職するのが一番確実です。服作りやパターン作成に必要な技術の他にも、ファッション業界について体系的に学べるというポイントも、学校へ行く利点といえます。働きながら転職を目指す場合は、通信教育や定時制専門学校を利用すると良いでしょう。

未経験からパタンナーになる

服飾系の学校(学科)を卒業していない未経験からパタンナーを目指す場合は、資格の取得をおすすめします。未経験でも持っていると有利になる資格として「パターンメーキング技術検定」「CAD利用技術者試験」などがあります。

パターンメーキング技術検定は一般財団法人日本ファッション教育振興協会が主催しており、1級から3級まであります。一番下の級である3級はパタンナーを目指す学生だけでなく、ファッション業界の作り手を目指す人なら知っておきたい基礎知識を問うものになっています。級が上がるごとに専門性が高くなり、同様に難易度も上がります。100問の筆記試験と、完成度の高さを見られる実技試験があります。

CAD利用技術者試験は一般社団コンピュータ教育振興協会(ACSP)が主催する資格試験です。CADとは「コンピュータ支援設計」と訳される、コンピュータでの設計を支援するツールのことを指します。試験では二次元と三次元の分類と、級による分類で試験が細かく8種類に分かれています。それぞれ公式ガイドブックが販売されているので、勉強したい方はぜひチェックしてみてください。

パタンナーとして大企業への就職を目指すには?

大学の講義を受ける女性

パタンナーとして大企業への就職を目指すのであれば、人間工学などの身体寸法についての基礎を学ぶことや、美術系の大学に進学し、テキスタイルを学ぶと良いでしょう。

ファッション業界もIT化が進みデザイン画や企画案がデータで送られてくることが多くなっているため、実務経験やパタンナーとしての知識以外に最低限のITスキルを身につけることも必須になってきています。

パタンナーの勤務時間や休日はどうなっているの?

服飾製品をこの世に生み出すプロであるパタンナーですが、実際の勤務実態についてはどのようになっているのでしょうか。勤務時間や休日などから、パランナーという仕事についてさらに詳しく見ていきましょう。

パタンナーの勤務時間について

勤務先によって様々ですが、だいたい始業は朝9時頃で終業は夕方17時頃が多いです。正午付近にはお昼休みを設けられているので、イメージとしてはサラリーマンのような勤務時間で働いています。

しかし、上記はあくまでも求人募集要項上での話になるため、実際は長時間勤務や休日出勤をする場合もあります。特に納期前は多忙になるので、残業をする場合もあります。募集元(応募先)についてあらかじめ詳しく調べたり、既に働いている人から話を聞いたりするなどして情報収集すると良いでしょう。

パタンナーの休日について

多くの企業は、土日祝日を休日としています。夏季と冬季にはそれぞれ3~5日程度の休み(夏休み・冬休み)が設けられています。年間休日は120日前後で、しっかりと休みのある職業と言えるでしょう。しかし、ファッション業界の繁忙期と呼ばれる時期(セール時期や展示会時期)には休みが少なくなる場合もあります。また、ファッション業界はトレンドが日々変化していきます。そのため休日であっても、今のニーズなどを知るために市場調査としてトレンドの勉強の一環として外に出る人も多いです。

パタンナーの給与は経験・実力が重視される

生地で型のモデルを作るパタンナー

パタンナーは経験が非常に重要な職業ですので、年代が上がるごとに給与や年収が上昇していくのが一般的です。パタンナー全体の平均年収はおよそ600万円、平均月収は約34万円が目安となります。

40代以降の月収は30万円を超え、年収も450万円を超えてきます。またボーナスが年々順調に上がって行けば、30代後半では支給額は100万円台を超えることが予想されます。しっかりと経験を積むことで着実に給与は増えていく仕事のため、やりがいも大きい仕事です。

パタンナーも様々な業種・分野で活躍の場があります。パタンナーの多くはファッションショー業界やアパレルメーカーに就職する場合が多くなっています。特にアパレルメーカーなどは昇進昇格の制度もしっかりしており、新入社員の場合は年収300万円程度からスタートする場合が多いです。

パタンナーに求められるスキル

パタンナーという職業は、どちらかと言えばファッション業界の裏側を支える職人的ポジションと言えます。トレンドを生み出す一角を担うこの職業にはいったいどのような人が向いているのでしょうか。

デザイナーの意図を具体的に型紙にするスキル

デザイン図と作成中の型紙

パタンナーは実際にモノを作る仕事になるので、デザイナーが描いたデザイン画の意図を忠実に具現化するスキルを持っていることが重要です。微妙なカッティングやフィット感、着心地にまで気を配ります。デザイナーの意図を具現化できるかどうかは型紙の出来、ひいてはパタンナーの腕に左右されるといっても過言ではないくらい、服飾製品をつくる上では重要な役割です。

ファッション業界に限らず何かを生み出す現場は、会議や打ち合わせが多くあります。そのため、コミュニケーション能力や自分が考えていることを言語化・視覚化できる能力が必要になります。納期のある仕事ですので、タスク管理や進捗状況を把握するのもパタンナーとして重要な能力です。

また、パタンナーは市場調査も仕事のうちになります。自分の勤めるアパレルメーカーがターゲットにしている客層は今どんなものを求めているのか、今の流行は何かということを現場で調査することもあります。

ミスをしない精度の高い作業をこなすスキル

デザイナーの企画をいかに忠実に再現し、製品化できるかが最も重要であり、パタンナーの力量が計られるところでもあります。そのため、デザイナーの意図を確実に汲み取り、正確性の高い仕事をすることが大切です。わずかな誤差やミスが後々製品に大きな影響を与えてしまうので、ミスなく精度の高い作業をこなす能力が必要となります。また、モノづくりの仕事なので、コツコツとひたむきに頑張れる人や一から形を作ることが苦にならない人が向いています。

パタンナーはデザイナーと二人三脚で1つのものを製品化するために協力しあいますが、基本的には1人での作業です。そのため1人で黙々と作業をすることが好きな人にもパタンナーは向いています。

常に最新情報にアンテナを張るマインド

ファッション業界のトレンドは常に変化しています。そのため、言われたことだけをしているようではパタンナーとしてのキャリアアップは望めません。型紙だけでなく素材や縫製技術も日々進化しており、デザイナーの意図をより正しく理解するためには幅広い知識が必要となります。常に最新情報にはアンテナを張り、自分自身の技術と知識のアップデートができる向上心の高さを持つことも重要です。

パタンナーとしての「やりがい」とは

パタンナーは表舞台に立つ役割ではなく、裏側でコツコツとモノづくりを支える「縁の下の力持ち」のような役割を担っています。そんな中、自分で型紙をつくり、サンプル制作まで携わった服飾製品が実際に商品として店頭に並び、多くのお客様の目に触れ、世の中に広まっているのを見た時には非常に大きな達成感を味わうことができます。

また、自分の名前が表に出ることはなくても、ファッション業界のプロとしての「こだわり」や「努力」が1つの商品として形となったのを見ることは、パタンナーとしての仕事を続けていく上で大きなやりがいに繋がります。

パタンナーはトレンドを生み出す仕掛け人の一人

パタンナーはデザイナーの意図やイメージを正確に把握し、常に様々な情報をインプットしながら日々色々なモノをつくり出しています。

裏側の仕事ではありますが、自分が携わった商品が多くの人の手に渡っているかと思うと、非常に大きなやりがいや達成感を覚えられます。また、経験や実力次第でより多くのモノづくりに携われるようになるので、一つ一つの業務を丁寧にかつ正確に行っていくことで、あなたもトレンドの仕掛け人になれるでしょう。