就業規則とは働く上でのルールをまとめたもの

就業規則とは何か、あなたは正確に理解できていますか?法律関係の書類と聞くとそれだけで読みたくないのですが、その就業規則というものが労働者にとって最も関わりのある法律です。賃金や休暇、退職など非常に重要なことばかりが書かれたこの書類についてまとめました。

就業規則とは働く上でのルールをまとめたもの

就業規則は労働者を守る大切な取り決め

会社には必ず就業規則というものがあります。しかしその内容は細かすぎてしっかり読まれていないのが現状でしょう。会社側も余程の過失でなければ口に出しませんし、会社を辞めたいがために就業規則を洗い直していて初めて記載されていることに気づく方もいます。何はともあれ専門家でもない限りあまり興味を引かないものであることは確かです。

この就業規則の中には私たちが健全に働くために必要な内容が豊富に書かれています。必ず目を通しておきたいものですが、全てを読み通すとなると大変です。しかもその会社によって微妙な違いがあります。

今回は就業規則とは何なのか、重要な部分を中心に解説していきます。この機会に就業規則に興味を持っていただければ幸いです。

そもそも就業規則とは何?

就業規則は労働者と雇用主との間の約束

就業規則とは労働時間や給料・休憩時間・休暇、罰則の条件などを記載した労働者と雇用主との間の約束が書かれたルールブックのようなものです。厚生労働省が発行しているモデル就業規則には、労働者が安心して働ける明るい職場を作るために、労働基準や待遇の基準を明確に定めておくことに就業規則の意義があると書かれています。

このルールブックは非常に細かく書かれているのが常であり、目を凝らして見なければつい見落としてしまうような字で書かれています。また、文量もかなり多く全てを読み切ることは難しいため、労働時間や休暇、給与の箇所など、重要と思われる部分だけでも目を通しておくとよいでしょう。

就業規則は労働者と雇用主との契約条件が書かれており法的な効力を持つものです。また、しっかりと記載されていたとしてもそれが法的に認められるかは別問題ですので、記載されている内容を鵜呑みにせず、疑問が出てきたら誰かに聞ける体制を整えておくことをおすすめします。

会社が就業規則を作らなければならない理由

法人と認められる組織においては、その組織の全てにおいて就業規則を作る義務があります。「あんな細かいものを作る気にもならないし、そもそも作り方が分からない」と思われる方が多いかと思いますが、これは権利ではなく義務となっているのです。こちらの詳細については労働基準法第89条に記載されています。

この就業規則というのは、従業員を不当な労務条件から守るとともに雇用主を悪徳な手法から守るためにあります。この就業規則をしっかりと作っておかなければ、従業員はもとより雇用主も破綻に追いやられてしまいます。

つまり、就業規則は会社の業務上のトラブル防止として必要であり、その業務が公正に行われているかを判断する基準なのです。また、この就業規則は従業員をはじめとする関係者がいつでも閲覧および確認できるようにしておかなければなりません。

就業規則に必ず記載してある項目

就業規則に必ず記載してある項目

就業規則の中には必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項というものがあります。

(1) 労働時間関係
(2) 賃金関係
(3) 退職関係

労働時間は始業と終業の時刻、その間の休憩時間、適切な休暇を記載しなければなりません。つまり、この会社では基準として「これぐらい働いてもらいますよ」という告知が書いてあります。また、一日中働くのではなく、交替があるのであればその時刻も明確に書いておかなくてはなりません。

次に重要なのが賃金の決定やその計算、支払方法、昇給に関する事項です。この事項では賃金がどのように決められているのかが記載されています。

最後に退職に関する事項です。不当に退職をさせたりしないようこの事項も必ず書かなければならない項目となっています。

これらが就業規則の中に必ず記載しなければならない項目です。あくまでもこれは項目ですので記載内容はもっと細かく書かれています。そのため経営者一人で作成するのには無理があるので、社会保険労務士の方に依頼されるのがよろしいでしょう。

就業規則ができるまでの主な流れ

就業規則は法的な効力を持つため、賞罰といった制裁が可能となる大事な書類です。紛失しても再度作成することができればよいのですが、勝手に法的効力を持たせることはできません。所定の手続きが必要となります。その手続きは大きく分けて4段階あります。

就業規則ができるまでの主な流れ

1 就業規則の作成

就業規則は主に社会保険労務士などの専門家とともに経営者が作成します。この時点でもチェックが入ります。何のチェックかというと、条文と実態との整合性を見るのです。経営者1人で作るよくあるケースとして、他社の就業規則とほとんど同じ就業規則を作ることがあります。この場合では実情と合わない給与体系であったり、どう考えても起こり得ないような条件が書かれた条文が見つかったりします。そうした箇所がないかのチェックを専門家に行ってもらいます。

2 労働者代表の意見聴取

労働者への意見の聴き取りは合意を必要としません。どういうことかというと、聴取は労働側の代表者が書面にて記載するのですが、そこに「以上の記載のすべてに反対します」と書かれても就業規則には何ら影響を持たせることはなくそのまま発行することができます。就業規則の変更時には労働者の同意が必要となるため注意が必要です。

3 労働基準監督署に届け出る

就業規則としてはこの段階で効力が発動されます。しかし、就業規則は労働基準監督署に届けなくてはならず、違反者には30万円以下の罰金が科せられますので、早めに届け出ましょう。あくまで届け出であり、許可を求める行為ではありません。

4 労働者への周知

過去に、最高裁まで裁判が長引いた判例の中に、就業規則の周知の重要性を決めたものがあります。それだけに就業規則の周知は重要であり、また法的な効力を持たせるための手続きの一部としてあるのです。就業規則において効力が発生するのはその内容を知っている関係者に限られます。

もちろん、会社側が周知のために適正な行為をしていれば問題ありませんので、わざと見ないようにしても無駄です。

就業規則は労働者にとって法の味方

就業規則は労働者にとって法の味方

就業規則は労働者にとって非常に重要なものです。必ず書かれなければならない内容が3つありましたがそれはほんの一部に過ぎず、本体は膨大な内容に包まれています。その中の一部とはいえ、労働者側から見た場合、日常で気にするとても大きな部分になっています。

就業規則があいまいな場合では、思わぬ不都合が生まれる場合があります。例えば、有給休暇の申請方法に曖昧な箇所があれば、労働側は意図的に有給休暇を取得あるいは消化することが難しくなり、いずれは有給休暇の消化率は0%となるでしょう。
不必要な時に取得するよりも、自分で使いたいときに使える権利を確保しておかなければなりません。また、その権利の有効期間や会社側の義務を明示しておくことも重要です。

法はあくまでも労働者と雇用主の中立の立場ですが、その効果は絶対的なものです。有給休暇の場合のみならず、休暇日数、残業代、賞罰など労働者に直接関与してくる内容が多く記載されています。その内容をトップだけに任せず、しっかりと把握しておくことが重要です。

中には鍵付きのキャビネットの中に収納されてしまっている場合がありますが、就業規則は周知しなければ意味を持ちません。ぜひ見せてもらうよう掛け合ってみてください。

実は現状と合っていない就業規則も多くある

現在の就業規則は、厚生労働省が発行しているモデル就業規則に則り作成されているものが多いです。また、このモデル就業規則は大企業をもとにして作られているため中小企業の実情と合っていない部分が多くあります

この就業規則は作る費用はタダなのですが、そのひな形は労働基準監督署かインターネットで簡単に手に入ります。しかし、このひな形は穴埋め形式であり中小企業と実情に合わないことから作成されても無理が生じる結果となっています。

不備が生じた際には企業の責任になる

規則資料を持つ会社員

就業規則は労働基準監督署に許可をもらうのではなく、届け出るだけです。つまり、就業規則の不備や違反はすべてその会社の責任となります。作る側は非常に慎重に取り組まなくてはいけない書類です。
しかし、労働基準監督署は書類がそろっているかだけを確認し、そこで問題なければそのまま受理されてしまいます。ここから労働基準監督署は就業規則の内容に承認しているわけではないことが分かります。

さらに、就業規則は陳腐化してしまいます。自ら業務内容を変えたり、市場の変化であれば気が付くことができることでも、法律や条例の変更に対しても就業規則は実情と合わないものになるのです。そのため、長年就業規則を変更していない場合は注意が必要となります。この場合は専門家の意見を聞いて修正するのがベストです。

就業規則に書いてあることは労働者も知っておくことが大事

就業規則には馴染みがなくとも会社にいるときに感じる暗黙のルールのようなものがあります。とはいえ、暗黙だけでは困ります。明確に誰でも見られるようにしておくことが重要です。

明確にすることで、偽りなく公平な判断のもと賞罰を与えられます。そうすることで健全な会社となり、労働者も気持ちよく働ける環境を手に入れることができるのです。
就業規則を作る側だけでなく、行使される側も一緒になって就業規則を見つめ直すことが大切です。